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桜涙【27】 言葉

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『いつかは信じてもらえるように』



「……いーねぇ、姉妹愛」

 藍里の言葉が嬉しくて、そのまま藍里の髪を撫でていると、いつの間にかドアが開かれていた。にこにこと笑う奎吾と、その後ろには竜城の姿もある。

「仲直り、出来たか?」
「うーん……仲直り?」

 藍里がひょこっと朱里の顔を覗き込みながら不安げに訊ねてくる。その表情に苦笑しながらも、朱里は答えた。

「仲直り、かな?」
「そか。良かったな、藍里」
「うん!」

 竜城と奎吾が、揃って朱里の元までやってくる。先に言葉を発したのは、奎吾の方だった。

「気分はどう? 朱里ちゃん。胸は苦しくない?」
「……はい」
「じゃ、とりあえず診察だけしようか。ほら竜城、お前は外」
「は? 何で」
「女の子の裸を見る気か?」
「見るかっ」

 奎吾にからかわれて、竜城は顔を真っ赤にしながら病室の外に出て行く。すると、隣にいた藍里も、ぴょんっとベッドから飛び降りた。

「藍里?」
「お父さんとお母さんに、電話してくるっ」
「待って!」

 自分でも、鋭い制止の声だったと思う。どうしたのかと藍里が振り返るけれど、次の言葉は口に出しにくくて。

「朱里ちゃん?」

 言い淀む朱里に、藍里がまた近付いてきて、顔を覗き込む。

「……呼ばないで……」

 両親に会うのが、怖い。死に損ないと軽蔑の瞳で見られるなら、このまま逢わずにいた方がいい。
 藍里と竜城が、朱里を受け入れてくれた事がとても嬉しくて、だからこそ、これ以上の幸せを与えられるはずがないと思う。
 両親が、自分を受け入れるなんて、有り得ない─────。

「朱里ちゃん」

 朱里のすぐ側にしゃがみ込んで、藍里が朱里を見上げてくる。ぎゅっ、と強く握りしめた拳を解すように、藍里の手が優しく撫でてくる。

「どうして? お父さんもお母さんも、朱里ちゃんの事心配してたんだよ」
「……気休めなら、要らない……」

 両親が朱里を心配しているなんて、そんな嘘は、例え気休めだとしても欲しくない。

「嘘じゃないよ。私、ずっと見てたもん」

 朱里が倒れた日、両親は藍里に連れられて、この病室までやって来たのだという。そして朱里の手を取り、頬に触れ、たくさんの謝罪の言葉を投げかけていた。……らしい。
 だが、意識を無くしていた朱里はそれを知らない。朱里が知っているのは、自分を拒絶する両親の姿だけだ。

「大丈夫、だよ」

 藍里の声が、優しく、耳に響く。

「お父さんとお母さんが朱里ちゃんを拒む事はないよ。何度もお見舞いにだって来てたし、それに……」

 もごもごと呟く藍里の言葉は聞こえなかった。

「……もし。もし、お父さんとお母さんが朱里ちゃんを拒んだら……私と一緒に、一海お兄ちゃんの所で暮らそう?」
「……なに、言ってるの、藍里……」
「だって、私だって今は同じなんだよ? 朱里ちゃんと」

 人ならざる能力を持つ娘。こんな事態にしてしまったのは朱里だ。ここに、還ってきてしまったから─────。

「もー……。さっき言ったばっかりでしょう?」

 藍里の瞳に、朱里の姿が映る。それは傍目にも解るくらい悲壮な表情だったから、きっと藍里にも、朱里が何を考えているか解ったのだろう。

「私は、私の命と同じくらい、朱里ちゃんの事も大切なのっ。だから、そんな顔しないで?」

〈目を覚ましてくれて、本当に嬉しいんだから〉

 藍里の言葉が、頭の中に入り込む。力強い瞳が、朱里を見上げる。

「……信じて?」

 ジッと見つめてくる藍里の瞳。言葉の中に、瞳の中に嘘がない事を証明するかのように。

「……うん、解った」

 信じるよ。藍里の言葉には、裏がないから。
 そう頷くと、藍里はまた後でねっ、と病室を出て行った。



 藍里が病室を出ると、竜城がドアの傍の壁により掛かって立っていた。

「……やっぱ、すぐには信じられないよなぁ」

 苦笑する竜城に、藍里も苦笑で返す。藍里の言葉を、朱里がすぐに信じられないのも当然なのだ。今までずっと守られてきて、何も知らずにいた藍里が、今は朱里を守ろうとしているのだから。
 その急激な変化に、目覚めたばかりの朱里が付いて来られるはずがない。

「いいの。いつかは信じてもらえるように頑張るから!」

 朱里が今まで背負った来たもの全てを、過去の全てを、藍里が背負う事はもう出来ない。
 今、藍里が出来る事は、朱里を光の中に連れ出す事。
 朱里に信じて貰えるように、嘘偽りない自分でいる事。
 その過程で、朱里を傷付けてしまう事もあるだろう。だが、その度に「ごめんなさい」と謝れる、強い心を持っていたい。
 例え謝れなかったとしても、その傷を癒せるだけの優しさを持っていたい。
 そう、思う。

「まだまだ、時間はいっぱいあるんだもん。ケンカだって出来るぐらい強くなるの!」
「……朱里と藍里がケンカって……想像付かないんだけど。ってか」
「ん?」
「藍里が喚いてるだけで、朱里は平然と受け流してそうな気がするのは、俺だけか?」

 ……言われれば、そんな気がしなくもない。想像してみたけれど、どう考えても朱里と藍里が口喧嘩するよりも、朱里が「はいはい」と聞き流す可能性の方が大きい。多分。おそらく。きっと。
 二人して同じ想像をしたのだろう、顔を見合わせて笑ってしまった。
 一頻り笑うと、竜城が藍里の背中をポンと押した。

「東堂先生にも連絡しなきゃな」
「うんっ」

 一海への連絡を竜城に任せ、待合室についた藍里は、父と母に連絡しようと携帯電話を取り出した。
 きっと、2人ともすぐに飛んで来るであろう。容易に想像がついて、藍里は笑った。


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