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LOVE SO LIFE 怪我の功名?【3】 (最終話)

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いつもより長い帰り道。(最終話)


 普段は自転車で通る道を、いつもよりもゆっくりと歩く。

(な、何か、落ち着かない……)

 茜と葵がいるならまだしも、こうやって二人で、肩を並べて歩く事は滅多にない。ひょこ、ひょこ、と体を揺らして歩く詩春は、自分より高い位置にある政二に視線を向けた。

「あ、あの……ごめんなさい、お手数かけて……」
「ん? 迷惑なんかじゃないから大丈夫」
「だけど、お疲れなのに……」

 今日もまた、帰ってきたら玄関先で倒れた政二だ。普段の詩春なら、政二の体を引っ張る事も出来たのに、今日は足を怪我している為に、政二は自力でリビングまで戻ってきた。

「前にも言ったけど。中村さんに何かあったら俺が困るんだから、気にしなくていいよ」

 それは、茜と葵の相手が出来るベビーシッターがいなくなるから困る、と言う意味か。それとも……。

(わたし、が、いないと困る、の、かな……?)

 そこまで考えて、自分の思考を慌てて打ち消す。

「? 中村さん?」
「あっ、いえあのっ、……ありがとうございます」

 送って下さって、と続けると、暗闇の中で政二が笑ったのが解った。

「俺の方こそ、ありがとう。足を怪我してるのに、あいつらの相手しに来てくれて。だけど、本当に酷い時は、ちゃんと言ってね。中村さん、そういうところ無茶しそうだから」

 見抜かれている、とちょっとだけ悔しくて、そして、嬉しくなった。
 確かに、怪我をしても詩春の事だから、おそらく松永家に来ていただろう。そんな詩春の性格が解るほど、政二と詩春の距離は、出会った時よりも、近い。

「何事も体が資本、って、以前上司に言われたんだ。ほら、俺が風邪引いた時」
「ああ、あの時です、か……」

 元々風邪気味だった政二が、池に落ちた事で悪化し、詩春は心配で彼の帰りを待っていた日の事だ。あの翌日、彼は大方の言動も行動も覚えていないと知って、少しだけぎこちなくなったのを覚えている。……今でも時々、政二との間にぎこちなさが走る時はあるけれど。

「あの時は、俺までお世話になっちゃったね」
「いいえっ。私が、勝手に、松永さんが心配で残ってただけですから! あいたっ」
「中村さん!?」
「あはは、大丈夫、です……。怪我してるの、忘れてました……」

 足を止めた瞬間に、左足にうっかり体重をかけてしまった。まだズキズキと痛むけれど、我慢出来ない痛みではない。

「……おんぶしようか?」
「いえ、さすがにそれは……」

 この歳になっておんぶは恥ずかしい。それが父親ならまだしも、相手は詩春より少し年上なだけの、男の人なのだ。

「そうか、じゃあ」
「え……?」

 不意に左腕を取られて、辿り着いた先は、政二の腕だった。

「掴まってて。少しは楽なはず」
「へ、平気ですよっ?」
「いいから。ただでさえ右足に負担かけてるんだ、今度はそっちを痛めるよ?」

 確かに、左足を庇っている分、右足への負担は大きい。未だに腕は取られたままで、きっと詩春が政二の腕に掴まらなければ、彼はこの手を離さない。
 そっと指先を開いて、政二の腕……には何となく掴まれなくて、服の袖をきゅっと握った。

「体重かけても良いから、歩きやすいようにしてて」
「は、はい……」

 詩春の足を気遣っているらしい政二は、ゆっくり歩いてくれる。

(恋人、みたい……)

 怪我をしているせいだと自分に言い聞かせてみるけれど、端から見れば寄り添って歩いているようにしか見えないだろう。客観的に想像したら、それはまるで恋人同士のようで。
 詩春の顔がほんのり朱色に染まるけれど、闇がそれを覆い隠してくれている。

(夜で良かった……)

 それからは大した会話もなく、けれどその静寂さえも心地よく。
 昨日までは自転車で通り過ぎていただけの道が、とても長く、そしてその時間がとても愛しく思えた。


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