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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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LOVE SO LIFE 君だから

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クリスマスのあの日、もし詩春が松永家に来られなかったら……?



 詩春が来ないと知った後の双子は、相も変わらず大音声で泣き続け、政二も辟易していた。

(子供ってすごいよなぁ……)

 自らの体力が尽きるまで泣き続ける。その素直さは、大人になってしまった政二にはもう遠いものだ。
 だが、いつまでもこのままにしてはおけない。近所迷惑にもなるし、第一、すでに10時を過ぎている。こんな時間に、例えば詩春の友達の熱が下がっていたとしても、彼女が来ることはないだろう。茜と葵を泣きやませる事が出来るのは、今は自分だけなのだ。

(中村さんだったら、どうするかな)

 どうすれば双子を泣きやませることが出来るか、皆目見当も付かないけれど、詩春だったらと考えながら、今だ泣きじゃくる双子に近づいてしゃがみ込み、両手を上げて、ぽんぽんと頭を軽く叩いた。

「せーたん」
「あんまり泣いてると、目がウサギになるぞ?」
「うしゃぎさん……」

 いつも詩春がやるように、ゆっくりと、噛み砕くように言葉を発する。

「明日の朝、中村さんが来て、目ぇ真っ赤になったお前らを見たら、中村さん落ち込むよ」
「おちこむ……なぁに?」

 子供に対する言葉は難しいと、いつも思う。自分が普段使っている言葉が、その意味が、伝わらないのだから。

「元気がなくなるよ、ってこと。お前らだって、中村さんには笑っていて欲しいだろ?」
「あおくんなくと、しはるたん、げんきない?」
「うん」
「でもしはるたん、くるゆった!」

 守られなかった約束。政二にしてみれば、仕方ないで済むことも、子供にとってはとても大切な約束で。約束を反故にされた事実は、消えない。
 政二にも、幼い頃の記憶の一欠片は残っているから。

「中村さんだって、来たがってたよ」

 パーティーをやろうといった時の、詩春の嬉しそうな表情を思い出す。ホームパーティー自体、政二にだってずいぶん久し振りのことだった。
 少なからず楽しみにもしていたし、詩春が来られないかもしれないと聞いて、少しがっかりもした。

「茜も、葵も、もし中村さんが風邪引いたら、心配するだろ?」
「うん!!」

 間髪入れずに返ってきた、双子の答え。大げさなほどに、力一杯首を縦に振る双子に、政二は笑いかけた。

「中村さんも同じ。大事な友達が風邪引いたら、やっぱりほっとけないと思う」

 だから、と政二は双子を、あぐらをかいた膝の上にそれぞれ乗せた。

「明日、中村さんが来たら、いつもみたいにお帰りって言ってあげな?」
「おかいり??」
「そう。お帰りって言ってあげれば、中村さんきっと笑ってくれるから」
「あい!」
「うん!」

 元気よく片手を上げて返事をする茜と、政二のシャツを小さな手に握り込んで頷いた葵。
 二人が泣きやんだのを見て、「よしっ」と双子の頭を撫でた。

「風呂入るかー」
「「あーいっ!!」」

 テーブルの上を片づけるのは入浴後にしようと、政二は双子の後を追った。



 そして翌日。昨夜から降り続いた雪は見事に積もり、朝早く茜と葵に起こされた政二は、一緒になって庭にいた。

「せーたん、みてー」
「あかねもーっ!」

 目の前の地面に立っている、小さく歪な、けれど一生懸命作ったと解る雪だるま。

「おー、よく出来たなぁ」

 茜と葵を見ていると、小さい頃の自分を思い出す。昔、こうやって雪が降り積もった朝、兄と一緒になって、どっちが大きな雪だるまを作れるかと勝負したこともあった。
 天気は快晴。昨夜の鼠色をした雲は白に代わり、透き通った空色が視界いっぱいに広がる。

「……お、おはようございます……」

 その時、遠慮がちな声がすぐ近くから聞こえた。いつもなら、もっと元気で明るい声が、昨夜のことを気にしているのだと窺わせる。俯きがちなその姿に、「お帰り」と言おうとしたその瞬間、雪だるまを大量生産し始めていた双子が詩春に向かって走りだした。

「あっ、しはるたん!」
「おはよーっ!!」
「ってこら、ゆっくり歩けって!」

 雪に足を取られるからゆっくり歩けと言ったのに、それよりも詩春に会えたことの方が嬉しいらしく、突進していく。が。

「ふぎゅっ」
「ぎゃっ」

 小さな足は見事に雪に取られ、そして双子は見事に顔から雪にダイブした。

「あー、だから言ったのに……」
「だ、大丈夫!? 茜ちゃん、葵くんっ」

 政二が葵を、詩春が茜をそれぞれ起こそうと近寄る前に、双子はむくっと起きあがり、詩春に向かって満面の笑みで告げた。

「おかいり~っ!!」
「……っ!」

 詩春が息を呑むのが解る。その瞳が揺れて、茜と葵を交互に見た後に、ようやく政二に辿り着いた。

「おかえり、中村さん」
「す、すみません昨日っ、約束、守れなかっ……」
「うん、友達の熱は下がった?」

 無理してここに来たのでなければいい。そう思いながら尋ねると、詩春は恐縮したように、「はい」と小さく呟いた。

「なら良かった」
「で、でも私、……茜ちゃん達に、嘘、ついちゃって……」

 それでも、詩春は言い訳をしない。友達の熱がなかなか下がらなくて、とか、離してくれなくて、とか。詩春が気にしているのはただ一つ。自分の判断で、双子との約束を反故にしてしまった事実だけ。

「松永さんにも、ご迷惑おかけしました、よね……」
「しはるたん、みてみてー」
「ゆきなるまー」

 政二と詩春の会話などお構いなしに、双子は詩春の手を引いて自分達が作った雪だるまを見せようと連れて行く。
 引っ張られてしゃがむ詩春の隣に、政二もしゃがみ込んだ。

「でも、大事な友達が熱出して苦しんでるのに、それでもここに来ちゃうような人だったら、俺は多分、この二人を任せてなんかないから」
「……え?」

 他人のことに一生懸命になれる人など、なかなかいない。家族であっても見捨てる人は多々いるというのに、詩春は多分、それが出来ない。
 最初は、この元気な双子の面倒を見てくれる人なら誰でも良かった。だけど、詩春が来て、詩春と過ごす時間が多くなって……。

「中村さんで良かったって、俺は思ってる。だから、昨日のことは気にしなくて良いよ」
「だ、だめですっ」
「ん?」
「約束、破っちゃったことには変わりないんです。だから、その事だけは……ちゃんと、謝らせて下さい」

 ああ、やっぱり───。
 
(こういうところが中村さん、だよなぁ)

 そんな詩春だから、政二も大事にしたいと思うのだ。お金では買えない、いろんな物をくれる彼女を。

「うん、解った。……それで中村さんは、風邪移ったりしてない? 大丈夫?」
「あっ……。ご、ごめんなさい熱計って来なかったんですっ。ど、どうしよう茜ちゃん達に移したら大変なのに」

 慌てて茜と繋いでいた手を離そうとする詩春。こんな時でも心配するのは茜や葵のことで。詩春のあまりの慌てぶりに、政二は小さく吹き出した。

「ま、松永さんっ?」
「違う違う、俺が聞いてるのは、中村さんの体は大丈夫かって事。看病してたなら疲れてるんじゃないかって思っただけ」

 茜と葵に風邪が移るのを心配してないわけではないけれど、罪悪感に苛まれて、今日詩春がここへ来ないかも知れないことを考えていたから、来てくれただけで、姿を見せてくれただけで十分だった。

「ちゃんと休んだ? 大丈夫?」
「……はい! ありがとうございます!」

 それまで俯いていた顔が、一気にぱっと明るくなった。まるでひだまりのように。
 思わずその笑顔に手を伸ばしそうになる。けれどその前に、詩春の視線は茜と葵に移り、華奢な腕で二人を抱きしめた。

「しはるたん?」
「茜ちゃん、葵くん。ただいま!」
「「おかいりー!」」

 いつまでも外にいては風邪を引く、と思ったけれど、もう少しだけその光景を見ていたくて、政二は縁側に座り込んだのだった。


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