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4/02 キンセンカ 「嘆き」

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拍手SSの再掲です。

4/02 キンセンカ 「嘆き」
明るき陽の光を 明人+泪花+陸巳



 すべてが、夢だったなら良かったのに。

「……ね、透子……」

 香住家、と彫られた墓の前で、泪花はそっと彼女の名を呼んだ。
 透子が命を失ってから、8ヶ月。数ヶ月前まで、泪花は嘆き暮らしていた。妹のように思っていた少女を理不尽に殺されて、未だ犯人さえ見つからなくて。何も出来ない自分が悔しかった。悲しみの中に沈んで、何度も夢であれと願った。
 けれど、明人が訪ねてきても、その隣に透子はいない。携帯電話は呼び出し音を鳴らすばかりで繋がらず、その存在はもう、この世のどこにもなくなってしまった。

「……やっぱりここだったか」
「明人くん……」
「また泣いて……目が溶けるぞ」

 そう言って涙を拭ってくれるのは、泪花を励まし続けてくれた人・陸巳だ。

「透子ー、お前の大好きな泪ちゃんが、陸巳に取られそうだぞ~」

 手にした花束を二つに分けながら、墓に眠る透子に語りかける明人の言葉に、泪花は慌てた。

「わ、私達そんなんじゃ……っ」

 ね!? と陸巳の方を振り向くと、彼はにこやかに笑って告げた。

「俺はそうなってもいいと思ってるけど?」
「……っ!」
「あ、顔真っ赤」

 ふわり、と大きな手が頬に触れて、泪花はますます頬に血が上るのを自覚した。

「おい陸巳、こんなとこで泪花口説くなー?」
「はいはい」

 呆気ないほど簡単に、手の温もりが離れた。水を捨てて来る、と陸巳が歩き出すと、安堵すると同時に淋しさを感じる。

「ま、泪花も鈍過ぎだけどな」
「え、明人くん!?」
「言っとくけど、俺があいつに泪花の様子を見てくれって頼んだのは片手で足りるくらいだぞ」
「え……」

 嘆き暮らした半年以上の間、陸巳は何度も泪花を訪ねてきてくれた。暗い部屋のカーテンを開け、家から連れ出して……それこそ、両手両足の指の数では足りないくらいに。
 明人が頼んだのではないのなら、……彼の意志で、泪花に会いに来てくれていたのだろうか。

「さっきはああ言ったけどな。透子もあいつだったら、安心だと思うよ」
「安心って、何が……」
「泣き虫泪花のお守り」

 そこまで泣き虫じゃない、と口にしたかったけれど、事実だから仕方がない。

「……明人くんも、安心する……?」
「あいつなら折り紙付き。……俺ももう、お役御免かな」

 明人の苦笑混じりの呟きは、風に揺られた葉擦れの音に掻き消された。

「話は終わったか?」

 どこかでタイミングを窺っていたのか、戻って来た陸巳と一緒になって三人で手を合わせ、透子への祈りを捧げた。

明るき陽の光を 目次

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