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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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図書館戦争 秋祭り

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Twitterで仲良くしてくださってる方の誕生日に捧げるSSです(一ヶ月遅れですが……!)。
久々の図書館戦争、時間軸は多分、手柴結婚前です。
リンクやら日付やらは、後から挿入・修正する可能性がありますので、ご了承くださいませ。

それでは、追記からどうぞ。
秋祭りでの堂郁、小毬、手柴です。

「ごめんね篤さん、お待たせ」
「おー、やっと来た、……か?」
 呼び掛けに答えて振り向いた堂上は、いつもと違う自分の妻の姿に言葉を失った。
「……お前、それ」
「浴衣の貸し出しコーナーがあったから、つい」
 白地に大きめの花が描かれている浴衣と、前髪に取り付けられた少し長めの髪飾りは、いつもより大人しめな印象を受ける。とはいえ、行動はまるきりいつもの郁だが。
「笠原、あんた浴衣なんだから大股で歩かない!」
 からん、ころん、と軽やかな下駄の音が二つ。
「お待たせしました、小牧さん」
「毬江ちゃん。……似合ってるよ」
 すっ、と毬江の耳元に唇を寄せて小牧が告げれば、毬江の頬はみるみるうちに赤くなった。紺地に色鮮やかな花が描かれた浴衣を着た毬江は、波打つ髪を側頭部で一纏めにして、しゃらしゃら揺れる髪飾りをつけている。
「笠原は大人しめで、毬江ちゃんは大人っぽくコーディネートしてみたの。二人とも似合ってるでしょ?」
「で、お前のコンセプトは?」
「当ててみたら?」
 悪戯を企む少女のように、手塚を見上げる柴崎は、淡い紫に、それより少し濃い色で桔梗が描かれている。長いストレートの髪は、片方の耳の下で緩く編まれていて、シュシュでまとめられている。
「……清楚系?」
「ふふ、当たり」
 今日は図書館主催の秋祭り。訓練場や中庭に露店が並び、職員達も自由に楽しめるのをいいことに、柴崎と郁は毬江を連れて、浴衣を借りに行ったのだ。
「じゃ、行くか」
「あ、あたし焼きそば食べたいっ」
「お前は色気より食い気だよな……」
 先に歩き出した郁の後を追うように、堂上が苦笑しながら歩き出す。
「こ、小牧さん、手……」
「人が多いから、はぐれないように、ね。それに、浴衣じゃ歩きにくいでしょ」
 毬江の恥ずかしさなどものともせずに、小牧は笑って正論を告げた。
「ん」
「……ん」
 手塚が差し出した手に、そっと柴崎の華奢な指先が乗り。絡めるように握りしめた細い指が。きゅ、と握り返すその強さが、愛しい。
 そして彼らは、三者三様に露店へと繰り出した。

~堂上×郁の場合~

「篤さん、射的があるよ!」
「……何か欲しいのでもあったか?」
 射的とはいえ、景品は子供向けのものばかりだ。
「……笑わない?」
 ということは、子供っぽいものを欲しがった自覚はあるらしい。笑わないから言ってみろ、と告げると、郁が指差したのは、少し高い場所に設置された、箱の中の――――。
「ももいるか?」
「ぬいぐるみ、かわいーなぁ、って……」
 だから、取って? と、郁が篤に願おうとした瞬間。
「じゃ、頑張れ」
「えっ」
 ぽん、と帯を叩かれて、郁は驚いた。頑張れ、とは、もしかして。
「む、無理無理無理! あたしが射撃下手なの知ってるでしょ!?」
「昔よりはマシになっただろ。というか、俺がやったら確実に取れてつまらんだろうが」
「だからってあたしがやったら、取れるまでにいくらかかるか……!」
 家計に響くからダメ! とあくまでも辞退する郁に、堂上は苦笑するばかりだ。
「お前、一体いくらつぎ込むつもりだ?」
「だから、確実な篤さんに取ってって言ってるのに……」
 むぅ、とうなだれた郁に、さすがにからかいすぎたかと、堂上は彼女の頭をぽん、と撫でた。
「……あれだけでいいのか?」
「うん!」
 ぱっ、と途端に明るくなった郁の笑顔に、つられて笑顔になる。
 財布から小銭を出して、まだ若い店主に手渡すと同時に、コルクを弾にした銃を引き換えに受け取る。狙いを定めるのは簡単だ。ただ、図書館の抗争で扱っていた銃とは当然だが違うから、一発くらいは外すかもしれない。
 ぱんっ。軽い音が聞こえ、狙いを定めていたももいるかのぬいぐるみの箱は、堂上の視界から消えていた。
「篤さんすごい! 一発で当てた!」
「……本当ならお前もこれぐらい出来たはずだがな?」
 ほら、と店主に渡されたそれを、郁の胸に押し付ける。と、郁はぬいぐるみを両手で抱き締めて。
「篤さんの意地悪……」
 はにかむように笑いながら、告げた。
「……でも、ありがとう」
「礼は今夜、お前でいいぞ」
「えっ」
 不意打ちの甘い誘いに、郁は言葉を失った。

~小牧×毬江の場合~

「大丈夫? 毬江ちゃん。歩きにくくない?」
「うん、大丈夫……。声、おかしくない?」
「これだけ人がいるからね、毬江ちゃんの声量ぐらい大丈夫だよ」
 良かった、とホッと胸を撫で下ろす毬江と繋いだ手を、強く握る。安心させるように、離さないように。
 こんなに可愛い彼女を一人になど出来はしない。
 ふと、毬江が足を止めた。
「わぁ、きれい……」
 電球の明かりでキラキラ煌めくのは、硝子細工の品物の数々。天使をモチーフにしたペンダントヘッド、桜色の指輪、青を基調としたとんぼ玉。
「欲しい?」
 小牧がそっと訊ねると、毬江はゆっくりと首を横に振り、歩き出す。
「毬江ちゃん?」
「……もう、外したくないのがあるから、いい」
 空いている右手で、胸元をおさえるように触れる。浴衣の下には、小牧がくれた「お守り」があるのだ。緊急用のホイッスルが。
 だから、ペンダントヘッドはいらない。それに。
「指輪も、……外したくないし」
 数年前、大学入学時に願った、小牧とお揃いのペアリング。それは今日も繋いだ毬江の指に光っている。
 既に『特別』があるから、要らない。
「それはちょっと困るかな」
「え?」
「婚約指輪も結婚指輪もあるんだけど?」
 耳元で告げられた言葉。同時に、そっと耳朶を食まれて。
「っ、こ、小牧さ……っ」
「これは、あくまでも『予約』だから」
 いつかは外してね、と、繋いだ左手の薬指を撫でる、小牧の指の感覚が、くすぐったい。
「……待ってて、いいの?」
「待ってるのは、俺の方だよ」
 毬江が学生と言う身分から抜け出すその時を。きっと、誰よりも心待ちにしているのは小牧だ。
「……ありがとう」
 待っててくれて。今の毬江の世界を大切にしてくれて。
 未来も隣にいられる約束をくれて、ありがとう。
 感謝の言葉だけでは足りなくて、毬江は小牧に身を寄せた。

~手塚×柴崎の場合~

「あっ、柴崎さん! これどうぞ、こないだお世話になったお礼ですっ」
 たまたま行き合った後輩の男子に、そう言われて渡されたのは、赤いリンゴ飴だった。
「え? あ、ありがとう……きゃ」
「いや、ちゃんと金払うよ」
 柴崎が男に奢ってもらう理由はない、と、手塚が内心で思っていることを知ってか知らずか、後輩男子はからからと笑った。
「大丈夫です、俺、彼女いるんで! これは純粋にお礼ですから!」
 じゃ、と元気な後輩男子はあっという間に去って行き、柴崎は手にしたリンゴ飴を見てから、隣に立つ手塚を見上げた。けれど、柴崎が何かを言葉にする前に、手塚が問いかけてきた。
「何の世話したんだ?」
「ただちょっと助けてあげただけ。お客さんに色々言われちゃって、たじたじになってたから」
 色々、と口にはしたけれど、実際には言いがかりに近かった。相手は若い女性で、申し訳ありません、と何度も頭を下げていた彼は、……かつて、酔っ払いに土下座させられたと言う手塚を思い出させた。
(なんて、言わないけどね)
 手の中のリンゴ飴を揺らしていると、手塚が「食べないのか?」と訊いてきた。
「うーん……食べるの大変なのよね、リンゴ飴って」
 もちろん、綺麗に食べることは出来る。けれどそれでは、とても時間がかかるのだ。この露店を一通り見て回っても、きっと食べ終える事は出来ないだろう。
「俺、食べた事ないから解らないけど、そーいうもんなのか」
「食べてみる? ……というか、最初にがぶっと食べてくれると後が楽なんだけど」
 そうして柴崎が差し出したリンゴ飴に、手塚は何も言わずにかぶりついた。大口を開けて食べるその様は、どこかあどけない子供のようで、柴崎の表情が僅かに綻ぶ。
「不思議な味だな」
「そう? ……ん、食べやすくなったわ」
 柴崎の小さな口が、ゆっくりと飴をかじり、溶かしていく。時折しゃく、と音が聞こえるのは、リンゴを食べた音だろう。
「……お前、今までの彼氏にもそーやって食べさせてたのか?」
「まさか。食べられたら、そのままあげてたわ」
「え」
 じゃあ、今のは何だ、と、問いかけようとした手塚に、柴崎の声が被る。
「……何でかしらね。光だと、嫌じゃないのよ」
 素直に告げるその声音と、微かな微笑みと。
「はい、手伝ってくれる?」
 再び差し出された食べかけのリンゴ飴に、手塚は。
 反則だ、と、思いながら、いつもとは違うその素直さを知るのが、自分だけであればいいと願った。

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