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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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SS 「三日月と君の声」

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#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
お題 「三日月/ひとり」です。

昨日のワンライ「花言葉に願いを」の続きです。
1700字程度。


「ん~……!」
 量が多かった提出課題をようやっと終わらせて、和奏はぐっと背筋と腕を伸ばした。提出期限まではまだ間があるのだけれど、いつの間にかすべて終わらせてしまっていたのだ。
 同室の少女は、未だバイトから帰ってきていないから、部屋には和奏一人だ。もうとうに、月は高く上っているのに。
 窓から見える、細い月。二日月か、三日月か……爪のように細くはないから、恐らくは三日月だろうと、どうでもいいことを考える。
 広大な夜の空にたった1つ、星達に囲まれながら輝く月。
 たくさんの「幸せ」に囲まれながら、どこか遠い「孤独」を感じさせるその三日月は、和奏の心に淋しさを引き寄せる。
『お空の星の中できっと、わかのお父さんもお母さんも、わかを見てるよ』
 だから、ひとりじゃないよ。
 ずっと昔、その言葉をくれた少年は、昨日、突然和奏の唇を奪い、不敵に宣戦布告をした上に、あっという間に携帯の番号を交換していった。
(今日が休みで良かった……)
 学校の創立記念日で休みでなかったら、和奏はきっと、彼とどう話していいか解らなかっただろう。昨日は昨日で、あの後すぐに悠莉が戻ってきて、上の空の状態で、いつの間にか帰宅していたから、何もかもがうやむやで曖昧なままだ。
(夢、だった……?)
 昨夜は一睡も出来なかった。夢ではない、と、現実だと、携帯に登録された電話番号が教えてくれたけれど、あのキスは、もしかしたら――――。
 そんな事を考えていたら、突然、机の上に置いておいた携帯電話が震えた。
「……え……」
 表示されているのは、今、和奏が思いを馳せていた少年で。
「ま、まさ……」
 早く出ろ、とばかりに、鳴りやまぬそれを、和奏はそっと手にとって、恐る恐る耳に当てた。
「――――はい」
『わか? 寝てた?』
 わか、と呼ぶ声は、紛れもなく雅紀のものだ。
「……ううん。まだ、起きてる……。何か、用?」
 必要以上に冷たい声音になってしまったかもしれない。けれど、電話を掛けてきたのが雅紀なら、用があるのも雅紀だろうと、思ったから。
『用と言うほどの用はないんだけどさ。……窓から外、見える?』
「……うん」
『三日月見てたら、わかの事思い出したから』
 覚えてる? 懐かしむように、窺うように、雅紀の声が和奏の耳をくすぐる。
『一人だって泣いてたわかを、思い出したから。……今も、泣いてる?』
「……もう、子供じゃないから、泣かないわ」
 心の奥で、一人だと感じること自体は、なくならないけれど。感情を表に出して泣くなんて、そんなことはもう、出来ない。
『残念。泣いてたわか、可愛かったのに』
「……趣味悪いわね」
『好きな子の泣き顔は三割増しって知らねぇの?』
「知らないわよ、そんなの」
 誰が言ったのよ、と、訊ねれば。施設に来てくれてたボランティアのお兄さん、と、とても曖昧な答えが返ってくる。
『ってか、わか、わざとスルーしてる?』
「? 何を?」
『好きな子、って言ったの解ってないだろ』
「……っ!?」
 囁くように紡がれた言葉に、和奏は思わず言葉を詰まらせた。
『ははっ、やっと気付いた』
「か、からかうのはやめて」
『からかうだけの目的で、5年も片想いしてないよ』
「ば、ばか……っ」
 確かに昔から、ストレートな物言いをする少年だったけれど、大きくなってもこれほど真っ正直に言葉を発するとは、思ってなかった。
『嘘じゃないよ。俺は、わかが好き』
 だから、泣いてないか心配だった。
 紡がれる言葉は、優しくて。暖かくて。……心の奥に封じ込めた淋しさを、掘り出して。
「まさ……の、ばか……」
『あ、やっと、まさって呼んだ』
「ばか……泣いたって、仕方ないのに……っ」
 瞳が熱い。頬を零れ落ちていく滴に気付いて、手の甲で拭っても、追い付かない。
『……切らないからさ。傍にはいられないけど、繋がってるから、泣いていいよ』
 ぽた、ぽた、座り込んで広がったスカートに、涙の円が出来ていく。いくつも、いくつも。
『大丈夫。ひとりじゃないよ』
 あの頃よりも、少しだけ低くなった声が、和奏の心にゆっくりと染み渡った。

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