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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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SS 「花言葉に願いを」

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#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
お題 「一歩進んで/野苺/引き出し」です。

現代物で、1700字程度。
恋愛未満……かな、多分。

→続編 【三日月と君の声】

「ちょ、待て、それおかしいだろ!」
「絶対これで答え合ってるって!」
「そもそも式違うぞ途中から!」
 教室の中心で騒ぐ、男子のグループ。それを気にしない振りをしながら、和奏わかなは目の前で必死に提出課題を写している友人の手元を眺めていた。
「放課後なのに、元気だねぇ、あいつらは。特に静原しずはら
 素早くペンを動かしながらも、しっかり彼らの声は聞こえていたらしい悠莉ゆうりが苦笑する。
「……幸せなのよ、きっと」
「あはっ、頭の中お花畑ってこと? 和奏ってば珍しい毒舌」
 けれどそれを否定する間もなく、悠莉はまたノートにかじりつき始めた。提出期限まで、もうあまり時間がない。
(……幸せだから、笑えるのよ)
 彼は、自分にないものを持っているから。
 和奏がどれだけ望んでも得られない、「幸福な家庭」。
 彼――――静原雅紀まさき橘木きつき和奏はかつて、同じ児童養護施設で暮らしていた。同い年ということもあって、それなりに仲は良かったけれど、小学生の時、彼は本当の両親の元へと帰っていった。
 どんな事情で施設に預けられていたのかは知らない。けれど両親の姿を見た時の彼はとても嬉しそうだったし、高校で再会した時も、楽しそうに笑っていた。――――和奏の存在にも気づかぬまま。
 きっと、彼の中では施設で暮らしていたことはなかったことなのだ。
(――――なんて、うそ)
 解ってる。彼は気づいてる。和奏がかつて仲の良かった少女だという事も、今、同じクラスにいる事も。
 関わりを拒んでいるのは、和奏の方だ。
 幸せな彼を見て、楽しそうな彼と話して。嫉妬に狂う自分を見たくないだけだ。
 だから、彼を自分の中で悪者にしている己に、嫌気がさす。
 だから、関わらない。彼がいる世界は、自分とは違う、から。
 なのに、どうして。こんなにも、惹かれてしまうんだろう。
「よしっ、出来た! ありがと和奏、提出してくるね!」
 すべて写し終えて大きく伸びをする悠莉の声に、和奏の思考が現実に戻る。
「あ、私も行く」
「いーよいーよ、写させてくれたお礼に、一緒に置いてくるよ! 帰り支度して待ってて~!」
 嵐のように、言いたいことだけを告げて去っていった悠莉と共に、同じように提出課題を出しに行く、彼の友人達。
 悠莉を見送ると同時に、彼の姿も、視界に入り。
「……っ!」
 息をのんだ。雅紀が、和奏を見ていた。優しい色の瞳から、和奏が視線を外せずにいるうちに、唇が微かに動いて。
「わか」
 和奏を、呼んだ。かつての呼び名で、彼女を呼んだ。
 かたん、と、雅紀が席を立つ。ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
 視線を外した時には、もう、遅かった。
「……まだ、持っててくれてるとは、思ってなかった」
「……え……」
 身を屈めた彼が、床から拾った細長いものを、和奏の前にかざした。
「あ……っ」
「俺が昔あげたヤツ、だろ?」
 さっき、ノートから落ちるのが見えた、と、雅紀は嬉しそうに笑う。
 彼が手にしているそれは、手作りの栞。幼い頃、喧嘩をしたあとの仲直りの印にと、互いに一番好きな花で押し花を作り、それを施設の先生がラミネートしてくれたものだ。
 雅紀の好きな花は、野苺。今持っているのも、野苺の花が貼られている。
 もうずっと――――ずっと、何年も、和奏の机の引き出しの奥に眠っていたものだ。
 それを、今更になって持ち出してきたのは、もしかしたら。
 こうして、雅紀に気づいて欲しかったから……?
「……わか、俺の事、嫌い?」
「……嫌い」
 幸せそうに笑うから。和奏はあんな風に笑えないから。
「じゃあ、好きにさせる」
「……は?」
 何を言い出すのだと、顔を上げた瞬間。唇に触れた、温かくて柔らかな――――。
「俺、あの頃からずっと、わかが好きなんだよ」
 話すきっかけをずっと、探してた。そう笑う雅紀は、栞を和奏の目の前でひらつかせた。
「野苺の花言葉、恋愛成就。……って、知ってた?」
「し、知ってるわけないでしょ、ばかっ」
「じゃ、覚えといて。……もう、遠慮しないから」
 さっきみたいに、と和奏の唇に触れる指先。
 二人の関係は、一歩だけ、進んだ――――のかも、知れない。


→ 続編 【三日月と君の声】

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