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拍手SS 暁のヨナ 「爪跡」

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拍手SSの再掲です。

2014年 7月 携帯用SS
暁のヨナ ハク×ヨナ


 スウォンがいた。自分の目の前に。ヨナの近くに。
 殺す。こいつだけは、絶対にこの手で。
 そう思って腕を伸ばす。容易に捉えられる首元に指を絡める。
 スウォンは動かない。静かに瞳を閉じて、終焉を待っている。
 この手に力を込めて、この首を絞めて。そうすれば、すべてが片付く。ヨナもハクも、緋龍城に戻ることが出来る。
 それなのに────。

(何故だ……っ!)

 指に力が入らない。まるで殺すのを躊躇うかのように。……迷うかのように。

(違う!)

 躊躇ってなどいない。迷ってなどいない。スウォンは既に過去だ、ヨナとハクが歩む未来に彼は不要な存在(いらない)。
 そう思ったのは嘘ではない、許さないと今でも思っている。

「……殺さないのですか」

 スウォンが言葉を発した。物静かに、何もかもを覚悟した、穏やかな声で。

「何故だ、スウォン!」

 何故陛下を殺した。何故ヨナを幸せから遠ざけた。スウォンを慕うヨナの心を壊し、ハクとの友情さえも切り捨てて、

「お前は、何を得ようとしている……っ!」

 答えを得るまで殺しはしない。彼に猶予を与える振りをして、今、彼を殺せずにいる自分に気づきたくなくて、ごまかすように語気を強める。
 スウォンは何も、答えない────……。
 不意に、スウォンの首にかけている手に、小さな温もりが触れる。
 この手を知っている。以前は白魚のように細かった手。……今は、剣を握った為に少し固くなってしまった手。

「ハク……」

 呼び声が聞こえる。それはハクの中にある怒りを、僅かながらも鎮めて。そして、スウォンの首を締め付けている手から力が抜けるには充分だった。

「ヨナ、姫……」

 守るべき少女の名を口にした時、ハクの意識は夢から現へと舞い戻った。

*****

「ハク、大丈夫!? すごい汗よ」

 目を開けたハクが真っ先に見たのは、心配げに自分を見る、ヨナの顔だった。彼女は胸元から取り出した布で、ハクの額に浮かぶ汗を拭っていく。

「嫌な夢でも、見たの?」
「……俺……、何か言ってましたか?」
「ううん。うなされていたから、声をかけたの」
「そう、ですか」

 組んでいた腕の先、固く握っていた拳をゆるゆると開けば、手のひらには爪の跡が残っていた。
 時間が経てば消えるだろうその跡に、ヨナの指先が、躊躇いがちにそっと触れ。
 ハクはその指ごと、爪跡を隠すように、ヨナの手を握り締めた。

暁のヨナ 目次

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