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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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SS 「ふしぎな図書館」

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#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
お題 「洋館/古書/出会い」です。

ファンタジーで、2000字程度。
ちょっと暗め、最後はハッピーエンドです。



 ギイィ……。重い音を立てながら、見るからに古い洋館の扉が開いていく。外は眩しいほど光が溢れているのに、その光さえ吸い込む程の漆黒の闇が、扉の向こうに広がっている。
 一歩、二歩、恐る恐る中に足を踏み入れると、また重い音を立てて扉がしまっていく。言い伝えの通りなら、目的を果たすまで、ここからはもう、出られない。
「ようこそ――――」
 コツン、と、何か固いものが床に当たる音。そして、嗄れた老人の声。
「おやおや、こんな若いお嬢さんが、何をお求めかな……?」
 闇の中でもはっきりと見える、白く蓄えられた髭をいじりながら、老人はゆっくりと口元に笑みを浮かべた。
「あ、あの……ここには、古い本が置かれていると、聞いて……」
「そうでしょうとも、目的がなければ、この洋館を見つけることさえ出来ませんからな。故に、お嬢さんは何をお求めか、と訊ねたのですよ」
 そして老人は、滔々と語り出す。ここには、遥か昔からの本がある。今や幻となった古書も、最新の出版物も。この国で一度でも『販売』――――つまり金銭のやり取りをされた『本』であれば、この図書館にすべて所蔵されている。
「例えばそう、偉大な魔女が自ら編纂した呪文集。弟子に渡し、その後誰かに売り渡されたものでさえ、ここにあるのです。さぁ、お嬢さん。あなたの求める本は何ですか?」
 老人の言葉に、少女は両手をグッと握った。
 躊躇うな。ここで躊躇えば、『彼』は死ぬ――――。
「……命を二つに分かつ、魔法があると――――聞いて、来ました。その方法が書いてある本が、こちらにあると」
「命を分かつ! おお、ありますとも。ざっと百冊程ですかな」
「百……!?」
「ご安心なされい、最もお嬢さんの望みにふさわしき方法ならば……ほれ、そこに」
 少女の右側、手の届く位置に、ポッと浮かび上がった一冊の本。それに手を伸ばし、受け取ろうとした瞬間に、その本はフッと漆黒に消えた。
「え……!?」
「おや。……どうやらお嬢さん、選択肢はまだ残されているようですよ」
「選択肢……? そんなものはもう、どこにもないわ」
 彼と、出会ったことが。否、少女が生まれたこと自体が、罪だと言われた。魔女になりきれなかった子供。この世界では、魔力を持たぬ事こそが罪となる。何故なら……魔力を持たぬ子供は、傍にいる人間の魔力を根こそぎ奪っていくからだ。奪われた魔力はいずれ回復するが、それが翌日になるか、一年後になるか、それこそ十年後になるか、誰にも解らない。
 だからこそ、少女は殺された。殺されて、森に捨てられたはずだった。
 けれど、それは仮死状態でしかなく。目を開けた少女の傍には、にこやかに笑う少年がいた。
『あ。目が覚めた?』
『……だぁれ……?』
 問いかけた少女に、少年は手を差しのべて、名を名乗った。魔力を持つ者の、真名を。
「幼かった彼は知らなかったの。真名を告げることは、命を預けることと同じだって」
 もちろん、魔力とは無縁に生きた少女が、知るはずもなく。命の源と言える少年の魔力を、少女自身がゆっくりと、確実に奪い取って、少年を、瀕死に追いやっている。
「彼が、私に知らずに預けてしまった命を戻すには、私の命を二つにするか」
 唐突に、少女は気付いた。どうして、自分も生きる方法を探しているのだろう。
 命を二つに分かつよりももっと簡単に、彼に命を返す方法があるではないか。
「あは……あはは、そうよ、そうだわ。私が死ねばそれで済む話じゃない」
 ね、そうでしょう? 残された選択肢とは、そういうことなのでしょう?
 すがるように、諦めたように。真の答えに辿り着いたことを認めて欲しくて、少女は老人に向かって恍惚とした表情で笑う。
「……いいえ、違いますよ」
 老人の声が、急に、はっきりと聞き取れた。嗄れた声ではない、はっきりとした、どこか優しい声音が、暗闇の中にそっと響く。
 しかし少女は、それを否定した。
「違う? 違わないわ、何も! 私が、私が、死ねば――――」
「……誰が許すかよ、そんなこと」
「え……」
 聞き覚えのある声と共に、華奢な体が何か、温かいものに包まれた。
「お前が死んで俺が生きるなんて、させない」
「レオ……?」
 何故? どうして今、瀕死の状態の彼が、ここにいるのだろう。
「これ……夢……?」
「違うよ。……管理人が、俺を喚んでくれた」
「は、早く肉体(からだ)に戻って……!」
 魂と肉体が完全に切り離されたら、もう、命は還れない。慌てる少女とは裏腹に、少年は少女を抱き締める腕に力を込めた。
「エルシー、良く聞け。お前が魔力を持たないのは、真名が封じられてるからだ」
「魔力がないんだもの、真名がないのは当たり前でしょう?」
「違う、逆なんだよ。……この状態になって、やっと解った」
 魂だけの状態だから、少年は、少女の魂に封じられている真名を、見つけられた。
「エルシー、お前の真名は――――」

 気がつくと、少女は何もない野原に一人、佇んでいた。
 けれど、解る。今、ここで起こったことは、夢ではない。
 体中に、今までとは違う感覚が満ちているから。
「レオ……!」
 帰ろう。彼が待っているはずだ。
 そして告げよう。「ただいま」と。

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