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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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SS 「この力、救いの為に」

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#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
お題より 「止まれ/ソーダ水」をお借りしました。

竜と人間との戦い、その竜は実は――――。
1600字程度です。


 ぱちぱち、しゅわしゅわ。ソーダ水のように弾ける笑顔が似合った彼。
 今でも瞳を閉じれば、彼女の瞼の裏に残るその姿は、もう……。

 ガアアァァァッ!
 耳に届くは、竜の咆哮。口から炎こそ吐かないものの、その咆哮は討伐へ向かったすべての者の心を打ち砕く。
「レイラ、防御結界!」
「はい!」
 手に持つ杖を水平に構え、呪文を紡ぐ。けれど、レイラの心は葛藤していた。
 目の前にいる竜は――――元は人間で。かつては一緒に魔法を学ぶ仲間で。古代の呪物に触れた瞬間から、言葉を失い、破壊衝動のままに人を、建物を襲う魔物となり果てた。
(アルフレード……)
 次々放たれていく攻撃魔法。防御魔法を施した鎧を着た騎士が、竜の脚を切りつけていく。
 体躯から考えても、僅かにしか傷ついていない彼の咆哮は、歩みを止めさせる人間達への怒りに満ちているように聞こえるけれど。レイラの耳には、かつての同胞と戦わなければならない我が身を嘆いているように聞こえた。
「くっそ……! ここで食い止めなきゃ、王都に被害が出る!」
「風魔法を施した剣でさえ、鱗を少し剥がすだけだ」
 今のままでは、人間である騎士と、魔法師達が消耗するだけ。それは、戦う前から解っていたこと。
 そもそも、竜というのは山奥深くで、静かに暮らすもの。人間や街に被害を与えることなどなかったから、竜との戦い方など、誰もが初心者同然なのだ。
 ただ一つ、手があるとすれば、それは――――。
「サミュエル様」
 レイラは結界を維持したまま、隣で攻撃魔法を駆使する師匠の名を、決意を込めた声で、呼んだ。
「どうした、レイラ」
「私が止めます」
 彼を。最高で最強の炎の呪文をもって。
「……っ! レイラ!」
「今、あの呪文を使えるほどの魔力を持つのは私だけです」
「だが、あの魔法を使ったとて、あいつを倒せる保証は」
「ありません。けれど、少しでも力を削げる可能性があるのなら……!」
 ぐっ、と拳を握りしめる。
「それに、倒せたとしても……もう、アルは戻ってきません」
 互いに競い合い、力を高め。ライバルであると同時に、多分、もう少し共に在れたなら……かけがえのない大切な存在になっていたであろう彼。
 例え、竜を倒せたとしても……あの竜が彼自身である以上、人間であるアルフレードにはもう、会えないだろう。
「だから、……やらせてください」
「レイラ……。死ぬ気では、ないんだな?」
「はい。この上私まで死んだら、……アルはきっと、悲しむから」
 決して、死ぬ為に申し出たわけではない。生きる為に……彼を救う為に。
 最高の魔力を持つ者の証である、紫水晶色の瞳が、師の瞳を射抜く。
 多分、見つめ合っていたのは数秒。だが、答えを得るまでの時間は、とても長く。
「――――解った。援護は任せろ!」
「はい。結界の維持、お願いします」
 そうしてレイラは、自ら結界の外に歩き出した。瞬間、竜の咆哮が、華奢な彼女の体を打ちのめす。咄嗟の判断で守護結界を張り巡らせ、風の魔法に言葉を乗せて。
「アル……アルフレード。私の声、聞こえる?」
 竜の蒼い瞳を見つめて、穏やかに語りかける。と、竜の動きが、一瞬だけ、止まった。
「聞こえてる? ……私が、あなたを止めてあげる」
 す、っと息を吸い込み、一呼吸おいて。レイラはいっそ優しい程に、笑った。
「大好きだよ、アル。だから――――止まって」
 どうかその激情を静めて。これ以上、誰も傷つけないで。
「我が魔力、この身に宿りし万物の力」
 荒れ狂う炎となりて、彼の者を浄化せよ。
 レイラの言葉が終わると共に。森ごと焼き尽くしかねない業火が、視界を赤く染めた。

「……ラ。レイラ」
 呼び掛けられて、瞳を開けて。目の前に見えたのは、かつていつも隣にあった、ソーダ水のように弾ける笑顔ではなく。
 泣くのを必死でこらえているような、歪な顔だった。
「……アル……?」
「ばか……。無茶すんじゃねぇよ……!」
 ああ、夢だ。だって、もう二度と会えないはずの彼が、抱き締めてくれるなんて有り得ない。
「私……あなたを救えた……?」
 レイラのその問いかけに、アルフレードは彼女を抱き締める力を強くして。
「ありがとな……」
 優しく、耳元で囁いたその声は、夢か現か。

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