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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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桜涙 【はんぶんこ】

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#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
お題 「過去/切なくて/ファーストフード」です。

当ブログのオリジナル【桜涙】より、幼馴染み3人組。1500字程度です。



 今もまだ、切なく痛む過去の傷。
(……うそ)
 過去になんか出来ていない。
 今の、この現実の方が夢で。夢から覚めたら誰も周りにいない、『孤独』という名の檻に閉じ込められているのではないだろうかと今でも思う。
 そんなことを口にしたら、きっと。愛らしい双子の妹も、幼馴染みも、口を揃えて言うだろう。夢なんかじゃない、と。
 優しくされるのが怖い。言葉にはしなくても、ずっとずっと胸の奥で燻る切ない痛みは、きっと一生消えないのだろう。
 人の心を読み、傷を癒す、人ならざる能力を持つ限り。
「どした、朱里」
 突然、ひょいっと顔を覗き込まれて、朱里はびくりと体を震わせた。
「……っ」
「どっか痛いのか? そんな顔してる」
「……ううん、大丈夫」
 首を横に振って、淡く微笑む。昔は絶対に、そんな表情に気付かれたりしなかったのに。
 それは朱里の気が緩んだからなのか、それとも竜城が傍にいるようになったからか。
「……そういえば、藍里は?」
 ここまで一緒に来たはずの、双子の妹がいない。きょろきょろ、周囲を見回す朱里を導くように、竜城がとある一点を指差した。
「いたぞ」
 ドーナツ屋の前で、大きく手を振っている、明るい笑顔。
「ね、おやつ食べて帰ろー!」
「……太るぞ」
 ぼそり、隣で呟かれた言葉に思わず笑いながら見上げると、藍里には言うなよ、と竜城も笑う。
 藍里が手招くままにドーナツ屋へ向かい。朱里ははた、と気づいた。
 生まれてこの方、こういったファーストフード店に入ったことがないから、勝手が解らない。
「竜城」
「ん?」
「……やり方、解らない。教えてくれる?」
 素直に、そう告げると。竜城が驚いた顔をした。
「い、今まで来たことなかったから……」
「え。あ、いや、違う。俺が驚いたのはそっちじゃなくて」
 朱里がこういった店に馴染みがないことは解っていた。もちろん、竜城は最初からフォローするつもりだったけれど。
 竜城が驚いたのは、朱里が素直に教えを請うたことに対してだ。藍里ではなく、自分に。
 少しだけ。ほんの少しだけ頼られている気がして、嬉しかっただけだ。
 朱里自身には、そんな意識、きっと欠片もないだろうけれど。
「とりあえず、ほい。トングとトレイ持って」
 そして竜城は、朱里を先に列に並ばせた。
「そんで、好きそーなの取ってけばいいだけ」
 そうして竜城は、手近な場所にあった、丸いドーナツの半分にチョコがかかったものを取る。
「って言っても、どれが好きか解んないか?」
 こくん、と言葉もなく頷けば、「じゃ、今日は俺のオススメな」と、竜城に指示されるままにドーナツを1つ、2つ、取っていく。
 レジに並んで、一緒に飲み物を注文するのも、竜城が横から助けてくれて。ようやく藍里の待つテーブルに辿り着いて、朱里は知らずにホッと息をついた。
「後は、食べ終わったら向こうの返却口に持ってくだけ」
 簡単だろ? と笑う竜城を見て、ようやく、朱里は少しの緊張をほどいた。
 紙ナプキンを広げて、チョコレートを生地に練り込んだドーナツを取って。はむ、と一口かじると。
「……美味しい……」
 甘くて、ふんわりチョコレートの匂いがして。何だか嬉しくなって、無意識の内に笑顔が咲いて。
「あ、朱里ちゃん、そっちのと半分こしよー」
「うん、いいよ」
 球体がいくつも繋がったような形のドーナツが半分、朱里の皿に置かれて。朱里は中にカスタードが入っているドーナツを割って。
「ほら朱里、こっちも半分」
「え、じゃあ竜城にも半分……」
 半分このおかげで、朱里はたくさんの種類を食べる事が出来た。
 遠い過去の切なさの中にしかないはずだった、半分こ。
 リアルな夢が、このままずっと、覚めないでいてくれたら――――。
(ううん……。夢じゃ、ない)
 今、生きているこの現実に。戸惑わずにいられる日が来ることを、朱里は小さく願った。

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