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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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暁のヨナ 幸せの涙

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Twitterでの企画 「暁のヨナで七夕企画」 に参加しました。
こちらは原作沿いハクヨナです。
現パロハクヨナはpixiv投稿しています。 こちらからどうぞ → 『短冊よりも確実に

『何、泣いてんですか』
『幸せだから……』



 今日は七夕。天の川を越えて、年に一度、織姫と彦星が出会える日。
 ゆっくりと波の狭間で揺蕩いながら、きらきらと光る天の川を見下ろせる場所で、ヨナは一人、佇んでいた。

『七夕の夜には願い事をするといいんだよ』

 会えた織姫と彦星が、その嬉しさをみんなにも分けようって、きっと叶えてくれるから、と。
 恰幅のいい豪快なおばさんが、ヨナに笑ってそう告げた。

(願い事、か……)

 今、そう言われて。ヨナは何を願うだろう。自分でも解らない。
 この国の未来を願う? 自分や仲間達の健康や幸運を願う? それとも……決してあり得ぬ望みを願う?

(叶わない願いほど、空しいものはないけれど)

 でも――――せめて。ほんの少しでも叶うのならば。
 ヨナは両手を祈るように組み合わせて、そっと瞳を閉じて。心の中で、強く、願う。
 どうか……どうか――――。
 ひとつ、ふたつ、みっつ。呼吸をした直後に聞こえた、草を踏む音。
 ヨナは組み合わせていた手のひらをほどいて、振り向いた。

「……いつからいたの?」
「何か真剣に願ってたみたいなんで」

 邪魔するのも悪いかと、そう笑うハクの表情はいつも通りに飄々としていて。その姿に、いつだってヨナは守られていた。ヨナがハクを守りたいと思うよりも、もっとずっと、強く……温かく。

「何を願ってたんですか?」

 さりげなく隣に立ったハクが、見事な星空を見上げながら訊ねた。ヨナはくすっと自嘲するように息を吐いて、ハクの顔を見ずに告げた。

「……叶わない願い事、よ」
「叶わないって解ってて、願うんですか」
「もしも、叶ったなら――――奇跡でしょう?」

 叶う確率など、無きに等しいから。自らの手で叶えられることではないから。ならばこんな時くらい、願ってもいいだろうと、思って。

「しっかし、空の二人も大変ですね」
「え?」

 どこか静かな雰囲気を壊すように、ハクは喉の奥で笑いながら続ける。

「年に一度の逢瀬だっつーのに、たくさんの願い事が纏わりついてそうで」
「夢がないこと言うのね、ハク」
「俺が姫さんみたいに夢のあることなんか言ったら、頭どーかしたかと思うでしょうが」
「……それもそうだけど」

 こんなに晴れた星祭りの夜くらい、夢を見たっていいではないか。
 決して叶わないと諦めかけている、その夢が。叶うかもしれぬ奇跡を。

「でも、もしも姫さんの願いが叶ったなら……本当に奇跡、だな」
「そう思うなら、……叶えて」

 え、と呟く瞳が、ヨナを見下ろす。真剣な顔でハクを見上げる彼女の、その紫紺の瞳に囚われて、身動きが取れなくなった。

「私の願いには……お前が幸せであることが、大前提だから」

 ヨナの願い。それは、自分よりも深く傷ついているハクの傷が癒える事。そして、いつか……もう一度、『彼』と共に笑いあえる未来。
 叶うはずがない。だからこそ――――願った。
 あの日、リリを助け出した時の2人を見て、思った。まだ、絆は消えていない、と。
 けれど、ハクの悲しみが決して癒えることがないことをヨナは知っている。スウォンの真意が未だ見えない今、何も言う事など出来ないけれど。
 動かぬハクにそっと寄り添って、細い腕で、ヨナは彼の体を抱き締めた。

「姫さ」
「もう、大丈夫だから」

 私は、大丈夫だから。だから、ハク。

「お前は、お前のことを考えても、いいのよ」

 ヨナの事を考えてくれるのは嬉しい。けれど、それでハクが自分を殺すのは辛い。

「……前に、言ってくれたわね。私が幸せなら、お前も幸せだって」
「それは」
「それも本音なのは解ってる。だけど、私は……私も……」

 ハク自身の幸せを望んで欲しい。誰かが幸せだから自分も幸せなのではなくて。自分自身で幸せだと感じるものを見つけて欲しい。
 ぎゅっと広い背中に回しきれない腕に力を込めて、切なる願いを心の中で呟く。

(せめて、ほんの少しでも……叶うなら)

 ゼノが、言っていた。人の温もりは、誰かを癒すことが出来ると。安心させることも、元気を与えることも、勇気を与えることだって出来る。ただその身1つでも……1人じゃないと伝えることは出来るから、と。

「……一体、どんな願い事をしたんですか?」
「それは教えてあげない」
「悪戯しますよ?」

 ヨナの体に回された、力強い腕の感覚。肩を撫でる手のひらの温もりと、伸びた髪に埋もれる指先。仰向かされた視線の先には、ほんの少しだけ口元を綻ばせた、小さな笑顔。
 ハクが笑っている。ただそれだけで……こんなにも胸が、苦しくて、温かい。

「何、泣いてんですか」
「幸せだから……」

 こんな些細なことでも。幸せを感じることが出来るから。

(……好きよ、ハク)

 言えない想いを隠すように、彼の胸にことん、と額を預け。
 その距離の近さに、突然、ハッとヨナが我に返った。

「は、ハク……!」
「はい?」
「は、離して……」
「嫌ですよ。抱きついてきたのは姫さんの方ですし」

 俺が幸せなのが大前提、なんでしょう?
 悪戯を楽しむような声音が耳元で聞こえて、ヨナの頬が朱に染まる。

「……離すかよ」
「え?」

 小さく囁かれた声は、聞き取れなくて。ただ、ハクの腕に力が加えられたことしか、解らなくて。
 星祭りの夜の闇に包まれたまま、二人の姿はなかなか離れなかった。

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