Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

3/26 カタクリ 「寂しさに耐える」

拍手SS Index
月別一覧(3月)へ 作品別一覧(3月)

拍手SSの再掲です。

3/26 カタクリ 寂しさに耐える
LOVE SO LIFE 耕一→美咲


「あ、あの……」

 双子が「しはるたん」と呼ぶその少女は、ある日、夕食を作る前に耕一に話しかけてきた。

「……どうか、しました?」

 このくらいの年の少女と話すことがないから、何だか身構えてしまう。それが伝わったのか、彼女の方もおずおずとしていて、何だか申し訳ない気分になってしまった。

「何、かな?」

 若干声を和らげると、少女は少しだけホッとした顔で、耕一の瞳をまっすぐに見据えて、言葉を紡いだ。

「……あの、お嫌ではありませんか……?」
「……嫌? って、何が……?」
「私が、キッチンに入ることです……。あの、今更、なんですけど……っ」

 そうして少女は、自分の中でも上手くまとまっていないのか、考えながら話し始めた。
 曰く、松永家の台所には、かつては双子の母親である美咲がいたはずで、そこにまったくの部外者である詩春が入ることに、不快感を感じていないかが心配になったのだという。

「とはいえ、今追い出されてしまっても困るんですが……」

 それはそうだ。今、双子の食事を作っているのは彼女なのだから。
 けれど、彼女が今言っているのは、耕一の気持ちを慮った言葉だ。

「……そう、だね……」

 複雑ではないと言えば、嘘になる。
 どうして、そこにいるのが愛した美咲ではなく彼女なのか。その度に、現実を突きつけられる。
 美咲はもう、どこにもいない。美咲を覚えている者達の、心の中にしか存在しない。
 それがこんなにも切なくて、……寂しい。

(でも、この寂しさに耐えるしかない……)

 受け入れなければならない現実。美咲がいない現実でしか、耕一は生きられない。
 双子を政二に預け、あちこちを回った2年の間にし続けた後悔も、辛かったけれど。

「……美咲は多分、喜んでると思うよ」
「え……」
「調理器具とか、調味料とか、美咲が使ってたままだよね」

 2年ぶりに足を踏み入れた、我が家の台所。それは、何も変わっていなかった。増えていた物はあるけれど、調理器具や調味料の置かれていた場所に、変化はなかった。
 ……違うのは、その場に美咲がいなかった、だけ。

「それに、こんな可愛い子が政二の恋人だって知ったら、美咲はきっと喜んで、一緒に台所にいたと思う」
「えっ! ち、違います、私と松永さんはそんな……っ」

 瞬間的に頬を真っ赤に染める少女の反応に、耕一はそっと笑った。
 ああ、俺はまだ笑える。だから。

(大丈夫だよ、美咲)

 君がいない寂しさに、耐えてみせるから。

LOVE SO LIFE 目次

拍手SS Index
月別一覧(3月)へ 作品別一覧(3月)
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。