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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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SS 「Star Night」

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#深夜の真剣文字書き60分一本勝負 6/12開催分より
お題
 ・「意外だね」で文章を始める
 ・届きそうで届かない
を、お借りしました♪

オリジナル・現代物で1600字程度です。


「意外だね」
「え……?」
 隣に立つ彼が、楽しげに、囁いた。
「天野さんが、来ると思ってなかったから」
「だ、だって……!」
 誘ってくれたのは、伊原くんの方でしょう? と、言う前に、彼は――――伊原直哉は、ふわり、と甘く笑う。
「うん、だから、来てくれて嬉しい」
「あ……」
 言葉を、紡ごうとした瞬間。彼を呼ぶクラスメイトの声が聞こえて、直哉はあっという間に去っていく。
 今、見上げている、この星空のように。
 届きそうで、届かない。それが、彼と彼女の距離――――。
「……いつまで見とれてんのよ、五十鈴いすず
「きゃっ!? り、莉紅りくちゃん!?」
「まーったく、いつまで片想いし続けてるつもりなんだか」
「こ、声大きいってばっ!」
「誰も聞いちゃいないわよ」
 ほら、と顎で示された先には、クラスの女子に囲まれている直哉がいる。男子も一緒に望遠鏡を覗き込んで、星座早見表を片手に、何を探しているのだろう。
「すごいよねぇ……」
「私にはあいつの何がいーんだかさっぱり」
 だけど、好きなんでしょ? そう問いかけられれば、五十鈴は素直にコクン、と頷く。多分、莉紅も知らない直哉の顔を、五十鈴は知っているから。
 それは、ちょうど1年前。弟と妹が、プラネタリウムを見たいといったので、暇だった五十鈴は、駅の近くにあるプラネタリウムに連れて行った。そこで、一人で来ていた直哉とたまたま会って。
 彼は、泣いていた。星を見ながら、泣いていたのだ。
『伊原、くん……。はい』
 持っていたバッグから、ハンカチを取り出して、渡すと。
『……ありがとう』
 と、少しだけ、笑ってくれた。その時の笑顔を思い出すだけで、五十鈴の心に「好き」が降り積もる。
 泣いていた理由も、知っている。直哉本人が、恥ずかしげに話してくれたから。
「せっかくの合宿だし、二人きりになれるように、協力してあげようか?」
「え? ええっ、い、いいよっ!」
 見てるだけでいい。彼が笑っているのを見るのが好き。二人きりになったとて、何を話せばいいのか解らなくなるだけだ。
 そう、直哉は、届かない存在でいい。クラスの中心にいる彼と、端っこにいる五十鈴では、立場が違いすぎる。
「五十鈴がいーなら、それでいいけどね」
 さ、天体観測に行こうか、と肩を叩かれて、五十鈴は立ち上がった。

「わぁ……」
 きれい、と呟く五十鈴の声は、風にさらわれた。
 午前二時。もう、クラスメイト達は教室に戻って眠ってしまっている。普段なら、この時間でも起きている生徒もたくさんいるだろうが、慣れない天体観測で疲れたのか、それとも星空で癒されたのか、静かになるのはあっという間だった。
 そんな中、五十鈴は一人、起き出して。望遠鏡の片付けられた屋上で、また、空を見上げていた。
 1つ、1つ、瞬く星。時折雲に隠れ、風に吹かれ、また瞬いて。
 そんな夜空が、五十鈴の表情を和らげる。
「……天野さん?」
「伊原くん……?」
 開けたままの屋上の扉。驚いたように五十鈴の名を呼ぶのは、直哉。
「ね、眠れないの?」
「少し、寝たんだけどね。何となく、目が覚めた」
 寝直す事も出来なくて、屋上へと来たらしい。
「天野さんは? 枕が変わると眠れない、とか?」
「え、ち、違……っ」
「ははっ」
 突然話題をふられて、五十鈴は慌てて答えて。明るい直哉の笑い声が、五十鈴の耳に心地良く響く。
 けれど、それから先は、二人は無言だった。五十鈴は、元から何を話して良いか解らなかったし、いつの間にか五十鈴の隣に並んだ直哉も、空を見上げるだけで、何も言わない。
 ただ、瞬く星が、夜の煌めきとなって光るだけ。
 どれ程の時間が経ったのか。先に口を開いたのは、直哉の方だった。
「……プラネタリウム、覚えてる?」
「え……。うん、……覚えてる、よ」
 忘れた事などない。彼が星を見て泣いた理由も、覚えている。
「ずっと、言えなかったけど」
 見つめられて、息が、止まる。
「天野さんだけ、なんだ。泣いた理由、話したの」
「え……」
「うん、天野さん、だけだよ」
「それ、って……?」
 特別だったと、思っていいの? 自惚れそうになる五十鈴の耳元で、直哉が爆弾を落とす。
「意味、……解る?」

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