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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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SS 「信頼の証」

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#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
お題 「もう少し」です。

巫女と護衛のお話。1300字程度。


 もう少し。もう少し、自分がしっかりしていれば。あんな怪我を、させることもなかったはずなのに。
 あの日から、あの時の光景がずっと、頭から離れない。
 神殿の中庭、咲き誇る花を前にしながら、ロイはギリ、と唇を噛んだ。
 包帯を巻いたあの姿を見たくなくて。だから、傍に寄りたくないのに。彼女は今日も、彼の名を呼ぶ。
「あ、ロイ! やっと見つけた」
「ベル……」
「どうしたの?」
 きょとん、と首を傾げる少女から、ロイはふいっと視線を逸らした。
「……お前なんで、俺のところに来るんだよ」
「あらだって、ロイは私の護衛でしょ?」
「っ、護衛だったら! 護衛だったらお前に、そんな怪我……!」
 ベルの片目に巻かれた、白い包帯。それはロイが、ベルを守りきれなかった証だ。
「……まだ、気にしていたの?」
 この怪我は、ロイのせいじゃないのに。そう呟いたベルが、ロイの手を取り、頬に当てた。
「……離せ」
 ぐっ、と力を込めて振り解けば、呆気なく手は離れ。その代わり、切なげな、淋しげな表情が、ロイを見上げる。
「ロイ……」
「見回り、行ってくる」
 彼女は、特別な力を持った巫女。彼女を手に入れることは、この国を手に入れるも同然だと言われるほどに。故に、ベルを狙う輩はいつだって絶えない。だからこそ、護衛として抜擢されたのに。
 彼女を護衛する自分自身が、彼女を傷つけた。
(くそ……っ)
 だんっ、と傍の壁に拳を打ち付ける。後悔は、何度も何度も繰り返し襲ってくる。
(……せめて俺にも、魔法力が少しでもあれば!)
 あんな簡単な魔法にかかり、操られ、……ベルを襲うことなど、なかったはずなのに。
 そう、あの左目の包帯の下。その傷は、ロイが短剣でつけた。
 この国を揺るがしかねない、最高の巫女という存在。それを殺す為に、一番身近な人間――――ロイを魔法で操った人間は、既に捕らえられたけれど。再びがないとは、限らない。
 だから、出来るだけ距離を置く。こうして距離をとっているロイが、ベルの寝室を訪ねることは、不自然だと思わせるために。
(っつーか、あいつの無防備さも原因だよな)
 少しは疑えよ、と、思わず笑みを浮かべてしまう。
 護衛として傍にいるようになってから、もう、3年。隣にいるのが当たり前になったのは、いつからだろう。
 ……隣にいないと、不安に思うようになったのは、いつからだろう。
「ロイ」
「……だから……っ! 何で、お前はっ」
 言いかけた言葉は、背中を覆う温もりに、途切れた。
「ベル……?」
「ごめん、ね」
 きゅ、と、服を掴む感覚。その手は、少し、震えている。
「ごめんなさい。でも……ロイがいないと、不安で」
 いつも傍にいたから。いてくれたから。突然、離れてしまうと、胸の中を不安が渦巻く。
「ロイの気持ちは解ってる、私の為に離れてくれてることも解ってる。だから」
 今だけ――――もう少しだけ。
「このままで、いさせて」
 ロイの温もりが、ベルの心の不安を溶かしていく。お願い、と囁いた次の瞬間、ロイの体が反転して、ベルの体を包み込んだ。
「……ロイ?」
「何でお前、俺を解任しなかったんだよ」
「さっきから『何で』ばっかりね」
 くすっと笑ったベルは、ロイの胸にそっと頬を押し付けて。決まってるじゃない、と優しく告げた。
「私が誰よりも信頼している護衛だもの」
 その言葉を、聞いて。ロイは彼女を包む腕に、力を込めた。

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