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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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虹霞~僕らの命の音~ たった一言で

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相互リンクさせて頂いている朱音さまの創作小説「虹霞~僕らの命の音~」の二次創作です。


(よし、買い物はこれでおしまい、と)

 二つの手提げ袋を右手に、赤い果物が顔を覗かせている大きな紙袋を両手で持ち上げながら、ちょっと重いかな? と考えたけれど、多分大丈夫だと思い直す。
 さすがに買い過ぎたような気がしないでもないけれど、仕方がない。大の大人が6人いれば、食材の調達は半端じゃない重量になる。
 すたすた、とはいかないまでも歩き出した六耀に、前方から声がかけられた。

六耀りくよう! おっまえまた無茶しやがって!」

 荷物が邪魔で顔は見えないけれど、声で解る。雷晶の半分を持つ時雨ときさめだ。

「……何度も言うけどね、時雨。僕は全然無茶なんか」

 確かにこれだけの量を買うことは滅多にないが、それでもちゃんと持てるだけの分量にしたつもりなのだ、と言おうとすれば、今度は明るい幼なじみの声。

「してるでしょ! リク、何でお買い物行くなら声かけないのーっ?」
「……ハルも時雨も、気持ち良さそうにお昼寝してたし」
「んで起きたらお前がいないほうが驚くっての! ほら、そっちの荷物寄越せ」
「あたしもこっち持つね!」

 あっという間に大きな紙袋と小さな手提げ袋の重みが消えて、六耀が持つのは軽めの野菜が入った袋一つだけだった。

「ったく……おまえは人に頼るってことを覚えた方がいいぞ?」
「そーだよリク。リクはいつも自分一人でやろうとするんだから……。やっぱり、あたしのせい?」
「違うよ、ハル」

 ……確かに、春雷を、親友という存在を一度は失ったから、もう誰の力も借りずに生きて行こうと思ったこともあった。けれど、一人でなんて生きられなかった。妖華がいてくれたから、六耀は一人じゃなかった。

「ま、おまえの性格なんだろーけどさ」
「間違っても時雨には頼らないから、安心して」
「……冥音唱えた時に、誰が助けてやったか、忘れたとは言わせねーぞ」
「そんなのとっくに忘れたよ?」
「六耀、おまえなぁっ……!」

 時雨が持つ紙袋が一番重いから、彼は手を離すことも、まして六耀を殴る事も出来ずに、悔しそうな視線を投げて来るけれど、六耀はあっさりと受け流して、春雷の手を取った。

「リク?」
「重い荷物は時雨が持ってきてくれるみたいだから、ハル、先に帰って用意しよう?」
「うん! じゃあね~、トキ、頑張ってね~!」
「ちょっ、待て六耀! こらっ」

 慌てる時雨を置き去りにして、六耀は春雷の手を引いたまま走り出した。
 やがて妖華の家の近くに辿り着いた頃、ようやく二人は足を止める。背後を振り返っても時雨の姿は見えない。

「はは、置いてけぼりだ」
「……リク、明るくなったね。昔よりもずっと」
「……そう?」
「うん! 昔のリクも好きだけど、今のリクも大好き!」

 春雷のその言葉が嬉しくて、六耀は滅多にしない、花が咲くような笑顔を見せた。

「おや? お帰り、六耀、春雷」

 家のドアが開いて、妖華が顔を出す。その様子を見ると、まだ客人達は到着していないらしい。

「妖華、ただいま」
「ただいま~」
「ん? 時雨はどうしたのかな? 我の記憶では確か、春雷と一緒に飛び出していったような気がするんだけれど」

 不思議そうな妖華に、六耀と春雷は顔を見合わせて笑った後、きっぱりと告げた。

「トキは置いてけぼりです!」
「重い荷物を持たせたから、後十分ぐらいしないと帰ってこないんじゃないかな」
「……哀れな」
「自分で僕に無茶するなって言ったんだから、それぐらい平気でしょう?」

 妖華に向かって、にっこりと悪戯顔で笑う。別に、客人達が来るのはもう少し後のはずだし、時雨と一緒に帰ってきたって良かったのだ。ただ、何となく……そう、何となく、時雨をいじめたくなっただけで。

「はい、これ頼まれた物。さ、ハル、中に入ろう。もうすぐ桜達も……」

 妖華に買ってきた物を渡し、春雷の手を引いて家の中に入ろうとしたその時。

「りーくーよーうーっ!」
「うわ、何、もう追いついたの?」

 遠くから叫んでいるその声は間違えようもなく時雨の声。振り向けば、小さいながらも確実に彼の姿が捉えられる。六耀の予想した時間よりもかなり早い。

「何か魔法でも使ったのかな」
「六耀、どうしてそこで、彼の愛故に、と思わないのかな?」
「それ全然関係ないから」
「え、でも、トキはリクの事、大好きだよー? 見てて解るもん」
「知らないよ。さて、テーブルの用意と、それから食器も出さなくちゃ」

 遠く背後にいる時雨の声も、妖華の呆れたような視線も、春雷の不思議そうな視線もすべてシャットアウトして、六耀は客人二人を出迎える準備を始める。その口元には、僅かに笑みが広がっていた。
 もうすぐ、彼は目の前に立つだろう。「よくもおいていったな」と凄むだろうけれど、六耀にとってはそんなの痛くも痒くもない。
 だって、六耀は、たった一言を彼に告げれば良いだけなのだ。そうすれば彼の機嫌も治るし、返ってきた言葉で、六耀も嬉しくなるのを知っているから。

「おいっ、六耀! よくも俺を置いて先に……!」
「うん。お帰り、時雨」

 そう言って笑えば、凄んでいた彼の顔も、徐々に解けて、照れたような笑みになる。

「……おう。ただいま」

 ほらね。たったこれだけの言葉で、こんなに心が温かくなって、嬉しくなるんだ。




※あとがき 兼 朱音さんへの私信(笑)
 ちょこっと意地悪な六耀さんと、それに振り回される時雨さんが書きたかっただけのお話です。
 本編後、妖華さまのお家でみんなでパーティー、みたいな感じにしたかったんですけど、不知火さまと桜さんが出てくると引っかき回されて収拾がつかなくなりそうだったので、その手前であえて終わらせました。
 以前回させて頂いたバトンで、朱音さんのキャラを使って、というご回答があったので、「出来るかなぁ?」と思ってパタパタ打ってたらこんなのに(笑)
 キャラの口調や呼び方など、違ったりしたら+期待はずれでしたらごめんなさい! 私の中のイメージだとこんな感じなんです~。
 朱音さまのみ、お持ち帰り可です。お気に召しましたらどうぞ!
 
 本家本元の朱音さまのサイトはこちらです→『空想 i 』

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Comment

ありがとうございますーっ♪

琳架さん、こんばんは! 今日は長く語ってしまうので、コメント欄にて失礼します^^
虹霞の二次創作ですが……素敵なお話過ぎて顔のにやけが止まりませんっ/// もう、本っ当に嬉しいです!
実は虹霞の番外編で、六耀と時雨は妖華から買い出し係にされているんですよ。冒頭がいきなり六耀の買い物帰りの場面でしたので、琳架さんには心を読まれてしまったのかと思いました!(笑)
さり気なく一番重たい荷物を持ってあげる時雨がいいです、すごくいいです……/// そして時雨をさらっとあしらう六耀がそのままで、和みますーv
私が書く話では春雷はあんまり出番が無いので、琳架さんが動かして下さったのを読んだら「春雷って可愛いじゃないか!」と思いました(笑)
六耀に置いてけぼりを喰らわされた時雨はやっぱりへたれですね! もう、そんなことしちゃう六耀も、されちゃう時雨も可愛いですv(重度の親ばかですみません)
もしかして六耀は時雨に「おかえり」と言いたくて、あえてこんな意地悪をしたのかなーとか思ってしまいます^^
いやぁ、もう本当に素敵過ぎるお話をありがとうございますっ♪
このお話ですが、頂き物として私のサイトに飾らせて頂いてもよろしいでしょうか? ただ、ここに綴った以上の興奮した長文の感想を一緒に書いてしまいますが(笑) あ、でももしだめでしたら言って下さいませ!
まだ感想を言いたい気分ですが、この辺で自重しておきますね。それでは、この度は私の心も温かくなるお話を書いて下さってありがとうございましたっv
  • posted by 朱音
  • URL
  • 2010.10/06 18:45分
  • [Edit]

嬉しい感想ありがとうございます

朱音さんのサイトの掲示板の方に返信させて頂きましたので、よろしくです~。
  • posted by 琳架
  • URL
  • 2010.10/07 17:20分
  • [Edit]

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