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SS 「森の音色」

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#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
お題 「音色」です。

愛されし娘」の続編? というかシリーズ?
ファンタジーで、1800字程度です。


「ほら、聞こえるでしょう?」
 森の中には、たくさんの音が溢れている。
 小鳥のさえずりや、葉擦れの音。木々を通り抜ける風の音や、遠くを流れる水の音。
「人間が作った楽器の音も素敵だけれど。私は、日々変わっていく、こんな森が奏でる音色の方が、ずっと好きだわ」
 全てを感じ取るように瞳を閉じて、ゆっくりと呼吸をしながら、耳を澄ませ。
 穏やかに語りかけてきた少女は今、業火に包まれた森の中で、必死に精霊を召喚していた。
「フィリクス! 火の勢い、まだ弱められない!?」
「火種が多すぎるんだよ! 火矢まで放ちやがって!」
 ここは、惑いの森。精霊使いという存在が認知され始め、当然のことながら「精霊」という存在を知った者達は、時折帰らぬ者達が出るこの森も、精霊達のせいではないかと考えた。
『……焼き払おう』
 エルーカの故郷とも言える村からの帰り道。フィリクスと共に立ち寄った村の宿屋で、そんな物騒な言葉が聞こえた。
『森を焼き払えば、みな、帰ってくるやも知れぬ』
『だが、彼らまでが炎に焼かれたら……!』
『精霊達がいなくなれば、彼らは自然と現れる。……占い師がそう予言した』
 そんな言葉を聞いて、精霊と親しい間柄であるエルーカとフィリクスが黙っていられるはずもなく、自分達が森に入って、精霊達と交渉してみるから待ってくれと告げたのだが。
 現実には今、2人は炎の中にいる。
「ったく、性悪な村だな!」
「私達まで焼き殺して、口封じのつもりでしょうね」
 あくまでも森が焼けたのは、自分達のせいではなく、自然発火――――つまり山火事であったとしたいのだ。
 何故なら、自然に手を出すことはこの国では大罪――――精霊達を殺す事なのだから。
 背中合わせになりながら、フィリクスは炎の精霊に願う。どうか火の勢いを弱めてくれと。
 エルーカは風の精霊に願う。どうか炎を煽らないで欲しいと。
 けれど、村人の怒りと共に放たれた火矢に宿った炎の精霊達は、その本能のままに暴れ回る。森の精霊、水の精霊達を炎に包み、その体を灰や蒸気と化し。風の精霊と手を組んで、あちこちへと飛び移り、炎を拡大させていく。
「……森の音色が、消えていく……」
 切なく消えていく、エルーカの呟き。水の精霊と親しい彼女には、逃げ出していく彼らの悲鳴が聞こえているのだ。
「……フィリクス。私、『命令』しても良いかしら」
「それ、俺も今聞こうと思ってた」
 精霊達への『願い』であった召喚を、強引に従えさせる『命令』へと切り替える。精霊使いを育成する学院では禁じ手だが、この森を、精霊達を少しでも助ける為には、今はそれしか手がない。
 背中合わせだった互いの体の向きを変え、汗ばんだ手のひらを重ね合わせる。
 フィリクスの左手。エルーカの右手。祈るように、指先を絡ませて。
 炎に炙られる中で、瞑目し。呼吸を整え、心を穏やかにして――――。
 瞬間、フィリクスの体を、赤と緑の光が包み。エルーカの体を、青と白銀の光が包み込んだ。
 すっ、と息を吸い込んだ2人は、同時に口を開く。
「「精霊達よ、我が声を聞け。我は汝を支配する者」」
 言葉と共に開かれた2人の瞳には、それぞれ違う色が宿っている。それは彼らの体を包む光と同じ色。それこそが、精霊使いとしての証でもある。
「炎の精霊、荒ぶるな。心を鎮めよ」
「風の精霊、落ち着きなさい。ここはあなた達が遊んで良い場所じゃない」
「大地の精霊、どうか眠りから覚めてくれ。この地に緑を」
「水の精霊、乾いた森に潤いを。炎の精霊達はもう、悪さはしないわ」
 フィリクスの言葉に縛られた炎の精霊が、その行動をぴたりと止める。エルーカの命令に従う風の精霊は、炎の精霊をその腕に抱いて離さない。
 普段は眠りについて、ゆっくりと命を育む大地の精霊達は、フィリクスの言葉によって眠りから覚めて、緑を芽吹かせ。水の精霊達はエルーカの命令に抗えずに集まってくる。
 それはやがて雨となり、森の業火をみるみる内に鎮めていく。
 炎の精霊達は自らが焼こうとした木々に守られ、今はちろちろとその火を燻らせているだけ。
「……ずぶ濡れ、だな」
「……けど、何とか守れたわ」
「……さっきの村の奴らに仕返ししたくなってきたぞ、俺」
「奇遇ね、私もよ?」
 未だ精霊達を強制支配下に置いたままの年若い精霊使い達は、にこりと笑い。
「ちょっくら髪が焦げるくらい、良いよな?」
「ちょっと服が破れるくらい、良いわよね?」
 本気か冗談か解らない口調で、悪だくみをし始めた。

 その森に捕らわれていた人々が戻り、エルーカが好きだと言った森の音色が戻るのは、少し後の事。

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