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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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SS 「choose」

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#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
お題 「ワイン」です。

ファンタジーで暗めです。1600字程度。


「……乾杯」
 かちん、とワイングラスを合わせて、ミエルがゆっくりと口をつけるのを見守る。
 彼女にとって、この味は未知なるもの。大抵、初めて飲むと「美味しくない」と告げられるのだが。
 グラスを傾けたミエルは、恐る恐る、舐める程度に口に含んだ。
「……甘い……?」
 予想外の味だったのか、驚いたように瞳を丸くしたミエルに、ゼインは優しく笑った。
「美味しい?」
「これなら飲めるかも……」
 こくり、今度は大胆に一口、彼女の喉が鳴る。
「うん、……美味しいわ」
「……そうか」
 これを美味しいというのなら、ミエルは――――。
 勘違いであって欲しかった。彼と共に育ってきたこの少女が大人になるこの日を、ゼインはとても楽しみにしていたのに。
 今、この瞬間に。その願いは、無惨に崩れ去った。
「あのね、ミエル。そのワインにはね」
 赤い、赤い色。ワイングラスに映る、円卓の上に置いた蝋燭の炎が、ゆらり、と揺れる。
「神父様の血が、入ってるんだ」
「え……」
「そう……吸血鬼に唯一脅かされない、教会の粛正の血が」
 神に仕えし、神父の血。それを聞かされた瞬間、ミエルの体に衝撃が走った。
「あ、熱い……っ! 痛い……っ!」
 心臓が、身体中が熱い。まるで、自分の中の血が沸騰しているかのように。
「み、水……っ。お願いゼイン、水をちょうだっ……うぅっ」
「水なんかじゃ、癒せないよ」
 その体の熱さは、どれだけ冷たい水を飲んだとしても、癒せやしない。彼女は、この世界で忌むべき――――恐らくは一番若いであろう、吸血鬼。
 ゼインは、ミエルの目の前に膝をつき、その体を強く抱き締めた。
「血じゃなきゃ、癒せない」
 苦しげに呻くミエルの唇を、ゼインは自らの首筋へと導いた。
「……生きたいなら、飲んで。今の君なら、本能で解るだろう?」
 引き寄せる直前に見たミエルの瞳は、ワインと同じ色に染まっていた。人の生き血を求めし、吸血鬼の色に。
「ゼイン……」
 ミエルの唇から零れる熱い囁きが、ゼインの首筋を湿らせる。先程まで震えていた腕は、ゼインを逃がさぬようにか、きつく抱き締め返してくる。
 ぺろ、と、柔らかな舌の感触。ミエルの唇が触れる、その瞬間。
「君が僕の血を吸えば。僕は君と『同じ』になれる」
 ゼインが緩やかに告げた言葉に、ミエルの動きが止まった。
「……血、飲まないの?」
「……だ、って……っ!」
 ゼインの血を飲まなければ、ミエルはこのまま、灰となって崩れ落ちる。けれど、今まで共に育ってきたゼインを、今の自分と同じ存在にすることは、出来ない。
 今まで知らずに生きてきた、喉の渇き。神父の血によって覚醒させられたけれど、二十歳となったミエルならば、もういつ覚醒してもおかしくなかったのだ。
 吸血鬼は、二十歳までは人間と変わらずに成長するのだから――――。
「……だめ……。こんな苦しい思いを、ゼインにまでさせたくない……っ!」
「ミエル……」
「こんな思いを、させるぐらいなら……!」
 ミエルは灰になる方を選ぶ。
 教会の前で拾われてから、兄妹のように一緒に過ごしてきて。
 その愛情が、異性に対するものに変化したのはいつからだろう。
 ゼインまで、化け物と呼ばれる存在にしたくない。そしてミエルも……今まで『人間』として生きてきた自分を、失いたくない。
 きっと、ゼインの血を飲めば。『人間』としてのミエルは死んでしまうから。
「……駄目だよ、ミエル。飲んで」
 ぐっ、と後頭部を引き寄せられて、再びゼインの首筋に、ミエルの唇が触れる。どくんどくん、と頸動脈が震える音が、唇に伝わる。
 甘い誘惑に、ミエルは必死に抗った。抵抗するように頭を横に振って。
「僕は、……ミエルを死なせたくない」
 彼女が、人間であったなら。ゼインは彼女に求婚するつもりだった。人間として当たり前の生活をして、共に過ごせたら、と。
 けれど、ミエルは吸血鬼――――。これから先、同じ存在にならなければ、共に過ごす事は出来ない。

 選択は、ミエルの手に委ねられる。
 愛しい人の腕の中で、その身を灰に変えるか。
 それとも、ゼインと二人、『永遠』という名の地獄へ落ちるか。

 翌朝、教会を訪れた神父が見たものが、答えだった。

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