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3/22 イベリス 「心をひきつける」

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拍手SSの再掲です。

3/22 イベリス 心をひきつける
桜涙 竜城×朱里


 母の買い出しに付き合ったら、あまりに荷物が多くなってしまった為に、竜城が先に戻り、家の門を開けようとしたその時。

「竜城」

 ぽつり、と水面に弧を描くように、静かに自分の名前を呼ばれた。

「朱里?」

 こんな風に竜城の名を呼ぶのは、一人しかいない。振り向いて彼女の名前を呼べば、ふわりと蕾が花開くような笑顔に心が引きつけられるようになったのはいつからだろう。

「どうした? 珍しいな、お前がうちに来るの」
「藍里がお菓子作ったから、お裾分けに来たの。……それじゃ持てないよね、待って、門開ける」

 実は竜城の両手は買い物袋で塞がれていて、門を開けるにも一度荷物を地面に置こうかと迷っていたくらいだったから、朱里に会って助かったと思った。

「さんきゅ。上がってけよ、お茶ぐらい出すからさ」
「でも」
「俺一人でおやつの時間ってのは淋しいし」

 おどけたように告げれば、朱里は一瞬きょとんとした後に、小さく笑った。

「じゃ、お言葉に甘えて」
「ん。で、悪いんだけど上着のポケットに家の鍵入ってるから、出して開けてくれる?」

 一度荷物を地面に下ろしてしまったら、再度持ち上げるのが絶対に億劫になる。そう朱里に頼めば、彼女はこくんと頷いて、おずおずと竜城の上着のポケットの中に手を入れて鍵を探り当てる。そのまま玄関の鍵を開け、扉を開けたまま待っていてくれる朱里に礼を言って、上がり框にドサリと両手の荷物を置いた。

「凄い量ね?」
「重い物ばっか持たせられて帰って来たからな~。って、いいよ朱里、マジ重いから!」
「ううん、それくらい手伝わせて? ……私が台所に入って良いなら、だけど」
「そんなん気にするなって。正直助かる」

 そう告げれば、朱里はホッと安心した表情になった。多分、朱里が目覚めてから、竜城が一番多く見ている表情だろうなと思う。まだ彼女は、自分の行動が他人にとってどう映るのか、手探りのままなのだ。
 それを思うと切なくなるけれど……今は笑っている朱里がいればそれでいい。
 食材を運び終え、先にリビングで朱里を待たせ、コーヒーを入れて戻る。朱里の分のカップには、ミルクポーションとスティックシュガーを一つずつ。

「……覚えててくれたの?」
「まぁな」

 朱里が退院した直後、竜城が家を訪ねた時。朱里がそれらをコーヒーに入れていたのを覚えていたから、何気なく持ってきただけなのだが。

「ありがとう」

 嬉しそうにお礼を言われてしまって、また竜城の心は引きつけられた。

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