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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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SS 「愛されし娘」

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#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負
お題 「懐かしい」です。

ファンタジーで、2000字までは行ってないはず、です。


 郷愁。そんな言葉で片付けられるほどに優しい時間が、ここにあっただろうか。
 それでも、この地を懐かしいと思う心は、確かにある。ただ、足が……動かぬだけで。
「……エルーカ」
 隣に立つフィリクスが、エルーカの華奢な手を、元気付けるように握りしめる。
「……大丈夫だ。俺達に何かあれば、学校が黙ってない」
「……うん」
 そしてエルーカは、一歩、足を踏み出した。目の前に見える、かつて自分を虐げた村に。
 少しずつ、少しずつ、村の全貌が見えてくる。その入り口に近い場所で、のんびりと果実を干していた老婆が、エルーカの姿を見つけ。
 ガタン、と椅子から転げ落ちそうになりながら、彼女を指差し、呼んだ。
「……い、忌み子のルカ……!?」
「……お久しぶりです」
「な、何であんたがここに……っ!」
 ああ、やはり。いくら精霊使いと言う存在が認知され始めたとはいえ、この村の中で、エルーカは異端でしかない。
 何も言えなくなったエルーカを庇うように、フィリクスがスッと前に出た。
「俺達は、学院からの正式な任務で来た精霊使いです。村長にお取り次ぎをお願い出来ますか?」
「が、学院……しょ、少々お待ちを……!」
 わたわたと慌てながら、村の中に駆け込んでいく老婆はかつて、エルーカを虐待していた一人だ。
(……忌み子のルカ、か)
 閉鎖的な小さな村に生まれた、異端の力を持つ子供。それがルカと言う少女だった。生まれながらにして風と水の精霊に愛され、その助力を乞うことの出来る類いまれなる才能。
 だが、ルカが子供の頃、精霊と言う存在は単なる夢物語でしかなく。ルカが村の為に、と、嵐を逸らしたり、井戸に水を引く事を、「魔の力」と恐れ、「忌み子」と呼んだ。
 両親は忌み子を生んだが故に殺された。その時どうして一緒に殺してくれなかったのかと思ったこともあったけれど、今なら解る。風と水の精霊達が、ルカを守ってくれたからだ。
「エルーカ」
 この名前は、精霊使いとして認められた時に、新たに名を授けられた。それが今は、自分の名前だ。
「フィリクス……。お願いがあるの」
「何だ?」
「もしも、私が……感情を制御出来ずに、精霊達を暴走させたら、その時は」
「解ってる。……その時は俺が、お前を止める」
 だから俺達は、ペアなんだろう?
 そう笑うフィリクスが操る精霊は、炎と大地の精霊。エルーカと拮抗する程の力を持つ彼だからこそ、この地にペアとして派遣された。
 依頼は、この村にのみ発生している水不足と、鎌鼬を解消すること。水は先月起きた地震で井戸が枯れ、鋭い風は森をどんどん切り開き、閉鎖することで自衛してきたこの村の存在を、露にしてしまったと言う。
 これは精霊の仕業だと、村に住む占い師が告げたが故に、今や精霊使いの卵が学ぶ場所となった学院に依頼が来て。派遣の白羽の矢が立ったのは、エルーカとフィリクスだった。
「でも、大丈夫だと思うけどな?」
「どうして?」
「んー? 何となく、だけど」
 エルーカがいることで、風がとても喜んでいる、ように、フィリクスには感じられる。
「これさ、もしかしたら、案外簡単かもしれないぞ?」
「どういう事?」
「村に入る前に、召喚してみろよ」
「いいけど……」
 言われるがままに、エルーカはそっと瞳を閉じ、両手に水を掬うように、そっと胸の前に持ち上げる。
「我が親愛なる風の精霊、水の精霊。エルーカの名において、姿を現さんことを切に願う」
 優しい風が、エルーカの髪をふわりとなびかせる。もう1つ、ひやりとした空気が、エルーカの周囲に集まって。
「るか!」
「るか、おかえり!」
「よかった、るか、かえってきた!」
「またあえた!」
 広げた両手の上に、白銀の風の精霊と、青い水の精霊がちょこん、と座り。口々にエルーカの名を呼び、喋り始めた。
「あ~……やっぱり」
「え? やっぱりって?」
 フィリクスは、ははっ、と明るく笑って。エルーカの手のひらに顔を近づけて、指先でちょんちょん、と精霊達をつついた。
「こら、お前ら。エルーカを苛めた村に、仕返ししてたんだな?」
「えっ!?」
 驚いて、エルーカが手のひらの精霊達を見つめると、風の精霊と水の精霊は、急くように話し始めた。
「だって、るか、いなくなった」
「あのむら、るかのねがいでみんな、あつまった」
「だから、るかがいないなら、とどまるいみ、ない」
「でも、みんないなくなったら、にんげんこまるって、るか、いった」
「だから、いじわる、してた。いじわるしたら、るか、かえってくる」
「えっと……それって、結局は、私のせい……?」
 エルーカが村からいなくなってしまったから、精霊たちはこの村に悪戯を仕掛けたと言うのか。
「違うよ。お前のせいじゃなくてさ」
 お前が、精霊達に愛されてたって証拠だよ。
 フィリクスの大きな手が、ぽん、とエルーカの頭を撫でた。

 →【森の音色】

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