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3/17 レンギョウ 「希望」

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3/17 レンギョウ 「希望」
RDG 深行×泉水子


『俺が必要だって言えよ』

 その言葉に応えてしまったら、自分の望みを告げてしまったら。もう逃れられなくなる。泉水子が、ではない。深行が、だ。
 だけど、その言葉は────その存在は、泉水子にとっては『希望』そのもの。
 だからこそ、……あの時すぐには、どんな言葉であっても応えられなかった。
 でも、今は……。
 ふんわりと香るココアの甘い匂いと、柔らかな感覚が離れていっても、泉水子は目を見開いたままだった。

「……何か言えよ」

 こつん、と額が触れ合って、泉水子は慌てて口を開いた。

「み、深行くんが黙って、って……。!」

 その言葉と共に我が身に起きた出来事を思い出して、途端に頬に熱が集まる。

「……温かいな、鈴原」

 そっと引き寄せられて、抱きしめられる。背の高い深行の声は、どこか遠くから聞こえるようだったけれど、微かに感じる深行の鼓動が、彼の存在を確かなものにしている。

(……安心、する……)

 もっと鼓動を感じたくて、すり、と耳を寄せてみると、勢いよく引きはがされた。

「え……深行くん?」

 きょとん、としたまま深行を見上げれば、彼は横を向いて右手で口元を隠していた。

「寒い? 帰る?」
「いや、そうじゃない。そうじゃなくて予想外というか……でも鈴原だしな」
「? 何のこと?」

 口元が隠されているから、何を言っているのか良く聞き取れない。けれどどれだけ見上げても、悔しいけれどそっぽを向いた深行の表情を窺い知ることは出来なかった。
 首を傾げて見上げたまま、数秒。不意に深行の視線が泉水子を捉えた。

「深行く────」

 暗がりでも解るその視線を受け止めた瞬間、突然鼓動が跳ねた。
 怒っているわけでもない、呆れているわけでもない。泉水子が今まで知る深行とは全然違う、真剣な────なのにどこか優しい色を宿した瞳。

「……っ」
「何で下見るんだよ」

 気恥ずかしくなって俯けば、拗ねたような声音が聞こえてきた。

「だ、だって……いつもと違うんだもの、深行くん」

 鼓動が治まらない。小さな手のひらを胸に当てても、拳にしてみても。
 必死になっていると、深行が小さく喉の奥で笑った気配がした。

「……わ、笑わなくても……」
「鈴原を笑ったわけじゃない。……そろそろ帰るか」

 手を差し出されて、手を乗せて。

(……ああ、やっぱり……)

 深行の手は安心する、と思いながら、泉水子は引かれるままに歩き出した。


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