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3/15 ジンチョウゲ 「不滅」

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3/15 ジンチョウゲ 「不滅」
少年陰陽師 昌浩×藤花(彰子)


 伊周の従者である秀則が、昌浩の機転のおかげで主の元へと戻って少し。平静を取り戻した藤花は、隔たれた御簾の向こう側に座する昌浩に、そっと声をかけた。

「……あのね、昌浩」
「うん?」
「私……『藤花』になろうと思ったの」
「……うん」
「そうすれば、……ずっと、『藤花』でいられると思ったの」

 うん、と、微かな相槌が返って来る。

「でも、……難しいのね」

 己が新たな名に願いを込めても、藤花は……彰子は、父の道長にとっては「藤原の一の姫」なのだ。
 父が、己の幸せを願ってくれるのは嬉しい。でも藤花には、身を偽り、誰かの元に嫁ぐなど考えられない。
 もう一人の娘である章子は、帝の許で幸せなのだろう。二人の子供を養育して、名実共にたった一人の后だから。
 それを知っているからこそ、父は運命が変わってしまった娘にも、同じ幸せを、と願うのかも知れない。
 だから、秀則からは隠れ続けるしかないのだ。もしもこんな事が父に露見したら、……下手をすれば先は見えている。

「……藤花は、藤花だよ」

 ぽつり、囁かれた言葉は、すぐに静寂に溶けた。

「……『藤花』でも、いいんだよ」

 衣擦れの音がして、昌浩が体ごと振り向く。御簾ごしで、顔は良く見えないけれど。

「どっちだとしても。俺は、変わらないから」

 彼女を護ると決めた。それは己の中から決して失くならぬ約定。彼女との誓いであり、昌浩自身との誓いでもある。

「俺にとっては、同じだから」

 僅かに、御簾がたわんだ。覚えているよりも、大きくなった彼の手が、御簾に触れていた。

「……『彰子』……」

 低く、囁くように呼ばれたかつての名に、鼓動が跳ねた。
 何年ぶりだろう。昌浩に、そう呼んでもらうのは。低くなった彼の声音には、慣れたつもりだったけれど。響きが違うだけで別のものに感じてしまう。
 それでも、名を呼ぶその声の優しさだけは、変わらない。
 導かれるように指先を伸ばして、御簾ごしに手を重ねた。

「……ありがとう、昌浩……」
「……護るよ。ずっと、護る」
「うん────信じてる……」

 互いにどんな立場になろうとも。どんなに遠く離れても。触れ合える距離におらずとも。
 決して滅びぬ絆が支えとなってくれるから。

「人間の世界って、ややこしーのな」
「何で一緒は駄目なんだろーな」
「孫と藤花なら、一緒にいるのが一番なのにな」

 けれど誰よりも、傍にいられないことを一番知っているのは当人達に他ならない。
 雑鬼達の言葉を聞いて、風音は切なげに息を吐いた。

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