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3/06 ケマンソウ 「恋心」

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3/06 ケマンソウ 恋心
暁のヨナ ヨナ→ハク


 屈託のない、無邪気な笑顔を見ると嬉しくて。
 その身に受けた傷を隠されれば、胸が痛くて。
 傍にいたくて、傍に、いて欲しくて。
 離れると不安で、けれど、離れていても守られていると実感出来て。
 そんな気持ちに、どんな名前をつければいいの?

「……何やってんですか、姫さん」
「……皮剥き、だけど」

 ヨナの手元にある、ものすごく小さくなった白い芋と、剥いた皮を入れていた小さな器を交互に見比べて、薪を拾いに行っていたハクの顔が怪訝なものになる。

「皮……?」
「~~~っ、解ってるわよっ!」

 少しでもユンの手伝いをしようと思い立ったはいいものの、生まれてこのかた、旅に出るまでは小刀さえ持ったことがなかったヨナだ。旅に出てそれなりに経つが、まだまだ料理の腕は上達しない。

「ユンに任せた方が、材料を無駄にしなくて良いと思いますけど」

 確かに、皮よりも身を多く剥いてしまっては意味がない。昔とは違って、今は無限に食料があるわけではないのだから、節約するべきところは節約しなければならない。それは、解っているのだが。

「だって、いつもユンに作ってもらってばかりじゃ悪いじゃない……」
「匙加減も解ってない人が何を」
「それを言ったらハクの料理だって大雑把だったわよ」

 ハクと二人旅だった時の料理を引き合いに出せば、あの時にそんな材料も余裕もなかったと言い返されてしまう。するとおもむろにハクが、傍に薪を置いて、すっとヨナの背後に回り込んだ。

「え……ハク?」
「指先に力が入りすぎです」

 小刀を持つヨナの手に、ハクの無骨な手が触れる。剥きかけの皮の位置に小刀を当てて、右手の親指の位置を直される。

「小刀を動かすんじゃなくて、左手の芋を回す。で、右手の親指で皮を送る感じで、小刀はなるべく水平にする」

 言葉と一緒に、するすると綺麗に剥けていく芋の皮。

「わ……すごい」
「コツさえ覚えれば後は簡単ですよ」
「ありがと、ハク」

 そう、振り返れば。いつもの笑顔とは違う、けれど穏やかな優しい瞳がヨナを見ていて。
 とくん、と胸が音を立てた。

(あ、れ……?)

 鼓動は規則正しく刻まれているのに、胸に広がるどこか温かな感覚。

「どうしました?」
「……あ、ううん、何でもない……」

 そう答えて、教えられた通りに、ゆっくりと刃を滑らせていく。けれど、温かな感覚はまだ消えない。
 ハクが傍にいることで、時折強く主張する鼓動の意味に、ヨナが気付くのはまだ先の話。

暁のヨナ 目次

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