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3/02 アルメリア 「同情」

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3/02 アルメリア 「同情」
桜涙 竜城×朱里


「あ」
「どうかしたの?」

 学校帰り、たまには寄り道をしてみようと駅前に出た竜城と朱里。が、その途中で竜城が立ち止まった。

「……何で朱里といると邪魔が入るんだ……」

 胸ポケットから取り出した携帯電話に表示された名前にガクリとした彼は、朱里に断ってから通話ボタンを押した。
 そのままでは邪魔になるからと、場所を移動し始めた時。

「きゃ」

 不意に衝撃を受けて、朱里はとすん、と地面に尻餅をついた。

「朱里っ。大丈夫か?」

 通話中にも関わらず、竜城が慌てて朱里の名を呼んでくれたけれど、朱里の意識は別の人間に向けられていた。

「ごめんなさい、大丈夫?」

 どうやら朱里にぶつかったのは、この女性らしい。朱里や竜城よりは確実に年上であろう女性は、どこか儚げに微笑みながら、座り込んだままの朱里に手を差し出してきた。拒むのも悪
いと、朱里は心を読まぬようにと能力を強く意識して、その手を取った。瞬間────。
 鍵をかけたはずの能力を、遥かに越えた強い思いと、決意。それらが一気に流れ込んで来た。

「怪我はない?」

 言葉を発したら、泣いてしまいそうで。朱里は小さく縦に頷いた。

「そう、良かった。本当にごめんなさい」

 小さく会釈をした女性の後ろ姿が遠ざかり、そして……朱里は堪え切れずに涙を零した。

「え、おい朱里? やっぱどこか痛いのか?」

 通話を切ってまで朱里を心配してくれる竜城だけれど、朱里は、悲しくて泣いているわけではなかった。

「違うの……。今の、人……すごい……」
「すごい? 何が?」
「とても……とても大きな苦しみと、悲しみを背負ってる。なのに……笑ってた……」

 苦しみや悲しみの内容すべてを読み取れたわけではない。ただ、漠然と感じたその感情の大きさと、それをすべて受け入れて笑える強さを、彼女は持っていた。
 朱里は、あれ程の苦しみも、悲しみも知らない。けれど、彼女の気持ちを思うと。

「強い人……なんだな、って思ったら」
「何か泣けてきた、ってわけか?」

 こくん、と頷く。何故か涙が止まらなくて、手のひらで涙を拭おうとすると、竜城の温かな指が伸びて、頬に流れた涙の筋を消してくれた。

「竜城……?」
「嫌なら、やめる」

 宥めるように短くなった髪を撫でながら告げる竜城に、朱里は小さく首を横に振る。その感覚はとても心地好くて、朱里の涙はいつしか止まっていた。


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