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レベリオン 「託されたもの」

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拍手SSの再掲です。

レベリオン 「託されたもの」
恭介×香澄


「──── 香澄?」

 ベッドを抜け出した恭介がロビーで見かけたのは、大きな窓ガラスから降り注ぐ太陽の光を見つめるかのように空を見上げている、秋篠香澄だった。

「あ……恭介」

 問い掛けに反応した香澄は、恭介の包帯だらけの姿を見て痛々しげに眉を寄せた。

「無理をすれば治りは遅くなるわよ」
「寝てるのも飽きたんだよ。それに、見た目ほど酷い傷じゃない」

 疲れているのと、レベリオンとしての力を使ったことで相当に腹が空いてはいるけれど、傷自体はほぼ塞がっている。

「そう、ね」

 すべては終わった。三倍体として生まれ、孤独に生きたユルキナの企みは潰えた。

「ああ、ここにいたのね香澄ちゃん。……恭介あんた、勝手にベッドから抜け出してんじゃないわよ」
「こんな傷、明日には治って」
「あたしにもう一度同じ台詞を言わせる気? ……まぁいいわ、あたしが用があるのは香澄ちゃんだから」
「……あたしに、ですか?」

 杏子が白衣のポケットから取り出したのは、USBメモリ。差し出されたそれを、香澄は両手で受け止めた。

「これは……?」
「ハンマーヘッドのデータよ。秋篠真澄美……あなたのお姉さんから受け取ったサンプルのデータと、あたしが造ったデータ、両方が入っているわ」

 ユルキナを、ただの人間たらしめたハンマーヘッド・リボザイム。そのデータが入っているというUSBメモリを、香澄はそっと握り締めた。

「……真澄美は……姉は、どこにいたんですか?」
「在日米軍基地よ。あたしに会わなければ、彼女は不確定なままのハンマーヘッドを持って、ユルキナと対峙してたかもしれないわね……」
「……はい」
「……あえて、言うわね。あたし、彼女に聞いたの。あなたが命を賭けて守ろうとしているのは? ってね。……彼女、微笑って言ったわよ。『あなたと同じものよ』って」

 その言葉を聞いた瞬間、香澄の瞳が大きく見開かれ……次いで、雫が零れ落ちた。

「香澄……?」
「……っ!」

 言葉もなく、両手で顔を覆う香澄。微かに漏れる嗚咽を掻き消すかのように、杏子を誰かが呼んだ。

「緋村先生、601の患者さんが目を覚ましました!」
「すぐ行くわ。……恭介、後は頼んだわよ」
「頼んだ、って、姉貴……!?」

 ただただ、静かに泣いている香澄と、颯爽と身を翻す杏子を交互に見て、恭介は、今にもガラスにぶつかりそうな少女の肩をそっと撫でた。

「香澄……?」

 恭介が呼び掛けても、香澄の応えはない。肩を撫でていた手を背中に回して抱き寄せても、香澄は小刻みに体を震わせるだけだった。
 杏子が香澄に告げたのはたった一言。杏子が守りたいものと同じものを、真澄美は命をかけて守ろうとした。……その意味を、恭介は掴みきれていない。
 どれ程の時間が流れたのか……単純に時間だけを見れば、恐らく5分程度。それでも、ずいぶん長く彼女を抱きしめているような気がするのは、病院特有の静寂のせいか。

「────ありがとう、恭介……」

 未だ収まらぬ嗚咽の中、涙に濡れた声が恭介を呼んだ。

「落ち着いたか?」
「ええ……ごめんなさい。姉さんが、そんなことを杏子さんに言うとは思わなかったの」
「姉貴が守りたいものと同じもの、ってヤツか? 俺には意味さっぱりだけど」
「……姉不孝者ね。私も、人の事は言えないけれど」

 くす、と香澄が腕の中で笑う。抱きしめる腕から逃れることも、抱きしめる腕を解くことも出来るのに、何故か二人は寄り添いあったまま微笑う。

「杏子さんが命をかけて守ろうとするものなんて、一つしかないじゃない」

 何だよ、それ? と問い掛けようとした恭介の声に、香澄の声が被る。

「恭介────あなたの事よ」
「……俺? って、事は……」

 守られていると言うよりも虐げられているとか、遊ばれていると言った方がしっくり来るような気がするが、とりあえず香澄が泣いた理由を考えてみる。

「そうか……だから」

 自分の立場を香澄に置き換えればいいだけの事だった。そもそも、香澄を生き長らえさせる為だけに、真澄美はR2ウィルスを作り出した。香澄が船を破壊した時だって、真澄美は……。

「……愛されてたんだな」
「うん……」
「優しくて、意志が強い人だった」
「ん……っ」

 思い出す。子供の頃、病院のベッドで一人で眠るのが怖かった時の事。真澄美は、眠るまで傍にいてくれた────。

『あなたが眠るまで傍にいるから、だから安心しておやすみなさい……』

 本当は、香澄こそが真澄美を理解しなければならなかった。後悔はとめどなく香澄を襲うけれど、まだ、香澄には出来ることがある。
 何年かかるか、解らないけれど……恭介や香澄、悠や美古都達というプロ・レベリオンを普通の人間に戻す為の研究は、香澄が真澄美から託された宿題だ。
 言葉には出さず、密かに香澄が決意をした瞬間に────ぐぅぅ、と恭介のお腹が鳴って、二人は揃って吹き出した。

「クレープでも食いに行くか」
「病院の食堂にクレープはないでしょう」
「当たり前だろ。抜け出すんだよ」
「え、ちょっと恭介!」

 この日を最後に、香澄は恭介の前から姿を消し、会うことはなかった。
 もう少し先の未来で、香澄が約束を果たしに来るまでは。

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