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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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暁のヨナ 揺れる心

暁のヨナ 目次へ 二次創作Index

 5周年記念アンケートでのリクSS、とりあえず第一弾『暁のヨナ ハク×ヨナ』です。
 なかなか文章になってくれなくて、遅くなって申し訳ありません。
 こちらはフリー配布と致しますので、お気に召した方はどうぞお持ち帰り下さい。
 ですが、著作権は放棄しておりませんので、転載される場合にはこのブログのSSである事を明記して頂ければと思います。特に報告の必要はありません。
 それでは、追記からどうぞ。

『あんたの声が、聞きたい……』



 揺れる。心が、揺れる。
 ハク、と。いつもなら言葉に出来るのに。言葉にしたならきっと、いつもの声で、いつもの表情で、振り向いてくれるのに。
 今は、それが出来ない。
 ヨナの声は今、掠れたような微かな声しか出ないのだ。

 それはたまたま、ハクや四龍のいない時の出来事だった。
 数日前、ヨナは、とある男に喉元を強く圧迫された。その男は禁止されたはずのナダイをどこからか入手していた常習者で、力の加減などされるはずもなく、ヨナの喉は締め付けられた。首に手形が残るほど、強く。
 喉に力を込めても、声にならない微かな吐息が漏れるだけ。けれど、声が出ない事以外は健康そのもので、どこか塞ぎがちなヨナを、ハクが「散歩でもしましょう」と連れ出してくれたのだけれど。
 その途中で、ハクは一人の女性と出会った。

(あれは確か、風の部族の……)

 ハクが昔良く付けていた髪飾りと良く似た羽飾り。長く真っ直ぐな黒髪に編み込まれている白い羽が、黒髪の美しさをより一層際立たせて。

「相変わらずだな、お前は」

 その少女に笑いかけるハクは、いつもよりもずっと優しく、柔らかくて。ヨナの胸の中に波紋を広げた。

「あのねぇ、こっちはハク様が死んだって伝わって来てたんだからね。そりゃ、誰も信じてなかったけど」

 聞こえてきた少女の言葉に、ヨナはハッとした。

(そういえば一度も、風牙の都には行っていないわ……)

 彩火には行った。地心にも。水の部族の土地にも行ったけれど、ハクにとっての故郷である風牙の都には、あの日以来……城を出てすぐのあの時に行ったきりだ。

(ハクだけでも、帰すべきかも知れない……)

 ふと、そんな事を思った。
 今は、ハクとヨナの二人旅ではない。ユンもいる、四龍もいる。ヨナを守るために一緒にいると言うのなら、手は有り余っている程だ。
 少しぐらい、ハクが故郷に帰ったとて、きっと誰も責めない。
 ハクに笑いかける少女は、ハクにとっても気心の知れている相手なのだろう。ならばきっと楽しい道中になるだろう。ハクが風牙の都に帰れば……ムンドクやテヨンも安心する。
 それに、今は……そんな風に笑うハクを、見ていたくなかった。

(変ね、私……)

 笑ってくれると嬉しいと思っていたはずなのに、自分以外に笑うハクの姿を見ていたくない、だなんて。

(……胸が、痛い)

 拳で胸を押さえれば、すぐに消え去るその痛みに気づかなかった振りをして。
 ヨナはハクに駆け寄り、その袖をそっと引いた。

「ん? あ、姫さん」
「あ! リナさん久しぶり~♪」

 ということは、彼女はあの時のヨナを知っているのだろう。ヨナ自身は恐らく自分の事に精一杯だった為、彼女の事は申し訳ないが覚えていなかった。
 が、それさえも今は言葉にならないので、ペコリと頭を下げるだけに止める。

「あら……? どうかしたの?」

 口を利かぬことに違和感を覚えたらしい少女が、こて、と首を傾げる。

「ちょっと今、喉を痛めてて喋れねーんだ。どうか、しましたか?」

 そうしてヨナは、徐にハクの手を取り、手のひらに指先で文字を書き綴った。

『風牙に、帰ったら?』
「……は?」
『きっと、心配してる』

 死んだ事になっているのなら、尚更だ。

「いや、それは私が帰ってからちゃんと報告するから、心配しなくても大丈夫よ?」

 少女の言葉に、ヨナはふるふると首を横に振る 人伝に聞くよりも、直に姿を見せた方がきっと喜ぶ。
 そう、思ったのに。何故かハクの服の袖を掴んでいた指先が、ハクの手に捕らわれて、握りこまれてしまった。

「……悪い、コトハ。そろそろ俺行くわ」
「了解♪ まだまだ無事でいなさいよ、雷獣」
「ああ、またな。……来い」

 挨拶もそこそこに、ぐいっと力強く、引かれるままに歩き出す。ヨナが慌てて少女にペコリと頭を下げれば、少女はにこにこと笑いながら「頑張って」と言いたげに手を振っていた。

(ハク、どうしたの?)

 問いかけたくても、声は出ない。ずんずんと早足で歩くハクを引き留めたくて、ヨナは両足に力を込め――――と、同時に、突然ヨナの体は裏路地に引き込まれ、壁に背中を押し付けられた。

(ハク……!?)

 痛い。そんな言葉さえ発することが出来ずに、ヨナに覆い被さるようなハクの真剣な顔が間近に迫る。

「……どういうつもりで、言ったんですか」
(え……?)
「俺に、風牙へ帰れって……? 俺は、あんたの傍にいるって何度も……!」

 解ってる。ハクは何度もそう言ってくれたし、事実それを疑った事などない。
 それを伝えたくて、紫紺の瞳でハクを見つめるけれど、彼の瞳は固く閉ざされていた。

「そう、だよな……」

 ぽつり、と落とされた呟きに、ヨナは息を呑む。

「姫さんが、今、声を出せないのも……俺が、傍から離れたせいだ」

 それなのに、「傍にいる」だなどと言ったところで、信じられるはずもない。
 そう、自嘲するハクに、ヨナは強く頭を振る。
 違う。それは違う。これは単に、偶然が重なった結果に過ぎない。伝えたいのに、どうして……喉が、震えてくれない。

「だけど、俺は」

 ふ、とハクの表情が例えようもない程に切なく変わる。

「俺を、風牙の都に帰したいのなら……その声で『命令』してください」

 未だ出ぬ声を愛しむように、屈んできた唇が、ヨナの首筋に僅かに触れた。

「……っ!」
「あんたの声が、聞きたい……」

 耳元で囁かれて、ヨナの体はびくりと震える。

「ヨナ姫……」

 切ない声音は、静寂で満ちる裏路地に響く。
 ねぇ、そんな声を出さないで。そんな、悲しげな顔をしないで。
 ハクのせいじゃない。それに……ハクに帰れと言ったのは――――。

「……う、の……」

 必死に喉に力を込めて、唇を動かせば。数日前よりもほんの少しだけ、形になった言葉が零れた。

「ちがう、の……」

 声量としては以前よりもずっと小さいけれど、二人の距離が近い今は、それで充分だった。

「姫さ」
「風牙に、ずっと、帰っていないでしょう……?」

 ムンドクだってテウやヘンデだって、きっと口にはせずとも心配している。

「一度、帰っても……ハクは、戻って来てくれるって、信じてるから……」

 あの少女に向かって、笑いかけるハクを見ていたくなかったのは事実。だけど、きっと……戻って来てくれると、思ったのだ。ヨナのところへ。

「……何ですか、それは……」

 ヨナの一言に、ハクがはああ、と深い溜め息をついた。

「ハ、ク……?」

 きょとん、と首を傾げながらハクを見上げるヨナから身を離し、ふっ、と苦笑する。
 きっと彼女は、今、自分がどれだけハクを喜ばせる言葉を告げたのか、気付いていない。

(どこに行ったとしても、戻るって解ってるなら、……いいか)

 ハクの居場所は、風牙の都ではない。ヨナの隣だと。
 包帯が巻かれたままの首元に、ハクは指先を滑らせる。

「まだ少し、……掠れてますね」
「……うれしい?」
「え?」
「私の声、聞きたいって、ハク……」

 吐息を含ませて、どこか甘く紡がれた願い。それを確認したくて問いかけると、ハクは片頬を上げて笑った。

「……ええ。姫さんのうるさい声が聞こえないと、調子狂うんで」
「そんな理由なの……?」
「そんな理由ですよ?」
「……もうっ」

 まだ、力のある声は出す事が出来ないから、怒れない。
 脱力するヨナは、気付かなかった。
 少しでも元気になったヨナを、ハクがとても慈しみを込めた瞳で見ていたか、など。

暁のヨナ 目次
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Comment

こんにちは♪

ヨナ読みました〜!
ご馳走様です(⁎˃ᆺ˂)

ハクがいなくて寂しいと思うけれど、戻ってきてくれると信じているヨナちゃんがとっても可愛いかった…!
ヨナちゃんの声が聞けなくなったら、ハクいたたまれないだろうなぁ…
はやくその声で自分の名を呼んでほしくてたまらなそう…笑

そして風牙のみんなとははやく再会してほしい♪
ハクとヨナちゃんの無事を聞いて安心してほしいな(* ´ ェ `*)



  • posted by Miki
  • URL
  • 2015.11/07 12:02分
  • [Edit]

Re:

 Mikiちゃん、読んでくれて+コメントまでくれてありがとう!

 絶対姫様、無自覚で信じてそうだなぁと思って。ヨナの隣には絶対ハクがいる、みたいな……無条件の信頼、って言うのかな。そんな感じを書いてみたかったのだけれど、葛藤がうまく出せなかった……!
 そうだね、ヨナちゃんの声はハクに命令も出来る声で、多分、本当の意味でハクを動かせる声だと思うし。
 その声が聞こえなくなったら……。原作準拠だからこんなんなったけど、本当はもっと色気のあるものにしたかった(笑)

 本当に。風牙行こうよ風牙! たまにはみんなでわいわいして欲しいよ(笑)
 と、思いながら書いてました。
  • posted by 琳架
  • URL
  • 2015.11/07 22:31分
  • [Edit]

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