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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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暁のヨナ 猶予う月

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Twitterでのお月見企画、だったのですが、十六夜月ではお月見とは言えないかなぁと思って、こっそりこっちで更新。
1000字超えたぐらいなので短いです。

『もう……3人で満月は、作れないわね』


「綺麗……」

 空に浮かぶは十六夜月。満月よりも少しだけ、欠けた月。
 冴え冴えとした清冽な光を放つ、僅かに歪な月に向かって、ヨナはそっと手を伸ばした。
 決して届かぬ、触る事など出来ぬ月。もしも、届いたなら……その表面に触れる事が出来たなら、感じるままに冷たいのだろうか。それとも、意に反して温かな光なのだろうか。
 月は、太陽の光を反射して、光を放つものだから。
 そんな事を考えていたヨナの手に、ふっと重なった大きな手。

「……冷えますよ」

 きゅ、と指先を握り込まれて、ヨナは囁くように、その手の持ち主の名を呼んだ。

「ハク……」
「上着も着ずに露台に出て……風邪を引いたらどうするんです?」
「……すぐに戻るつもりだったわ」

 ただ、少しだけ……窓から入る光の眩しさに惹かれて、露台に出てしまっただけ。

「ハクの手、……温かいわ」
「そんだけ姫さんの指が冷えてるんですよ。ったく」

 つい先程まで、毛布にくるまって眠っていたその温もりを分けるかのように、ハクの無骨な指がヨナの華奢な指をそっとなぞる。その触れ方がとても優しくて、くすぐったくて。思わずふふっとヨナは笑った。

「何笑ってんですか」
「だって、こんな風に手を繋ぐのは、子供の頃みたいで」

 いつの間にか両手を取られ、繋がれていた手。ハクとヨナしか、繋げない手。
 かつてはここに、もう一人――――。

「もう……3人で満月は、作れないわね」

 繋いでいる手から、視線を夜の空へと向ける。あまりにも強い光故に、いつもは黒く写る雲も、その白さをぼんやりと映し出している、月だけが輝く空へ。
 3人で手を繋いで、目一杯に手を伸ばして、描けていたはずの丸い月。けれど、今はもう……ハクとヨナの二人だけでは描けない。
 まるで今日の、欠けてしまっている十六夜月のように。

「昨日が満月……。今日は、……躊躇い月、でしたっけ」

 隣で呟いたハクの瞳に宿るのはきっと、ヨナの紫紺の瞳に宿るのと同じ色だろう。
 もう二度と戻れぬ過去への、淋しさ――――……。

「そうよ……躊躇い月」

 十五夜よりも、遅い時間に昇るから。
 欠けてしまった月が、空へと昇るのを猶予いざようから……。

「……ハク」
「はい?」
「……欠けないでね」

 2人で円は描けない。だけど、1人になったら、円どころか何も描けない。
 それでは、十六夜どころか真っ暗闇の新月になってしまうから。

 呟きながら一歩、ハクへと近付いて。
 その胸に、そっと額を預ければ、微かに聞こえるハクの鼓動。
 願いを込めるように、瞳を閉じた。

 言葉では、応える事なく。
 ゆっくりと解かれた手が、寄り添うヨナの体を包み込み。
 強く、強く――――抱き締めた。

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