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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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暁のヨナ 星合の空

暁のヨナ 目次へ 二次創作Index

Twitterでの企画「暁のヨナで七夕企画」に参加させて頂きました。

相変わらずのどシリアス、原作準拠のハクヨナです。
こちらでは原作準拠のものしか載せていませんが、Pixivの方では現パロ設定での七夕SS「光舞う」を載せています。
いずれこちらにも掲載する予定ですが、その時は現パロの為にパス付きになると思いますので、煩わしさを感じる方はそちらで先にお読み下さいませ。

※最後にちょっとおまけ追加 7/8 11:00 駄文です。
 反転してご覧下さい。


 かたん、と微かな音が耳に届いて、ヨナはふと目を覚ました。
 瞼を擦りながら身を起こし、瞳を慣れさせるようにじっと暗闇を見つめ。ある程度見えるようになってから首を巡らせる。
 あまり広くはない部屋の中、一つの丸い卓子と椅子。3つの寝台があって、外に出られる露台側がヨナ、真ん中にユン、そして部屋の扉のすぐ傍に、ハクが眠っている、はずだった。

「……ハク……?」

 ユンの寝顔の向こうにある寝台は、乱れた毛布が一枚あるだけで、それにくるまっていたであろう人物の姿がない。怪訝に思いながら反対方向……露台へと視線を移すと、扉が微かに開いていて、ほんのり湿った風を部屋に忍ばせる。
 その向こうに、見慣れた背中が身を屈めて、欄干に寄りかかっていた。
 ユンを起こさぬように、ヨナはそっと寝台を抜け出して、忍び足で露台へと近付く。
 が、気配で解ってしまったのか、ヨナが声をかける前にハクが振り向いた。

「すみません、起こしてしまいましたか?」

 ユンを起こさぬよう、限りなく小さな言葉で紡がれたハクの言葉に、ヨナは大丈夫、と首を横に振った。

「……どうかしたの?」

 音をさせぬように扉を開けて、露台へと出ながら問いかける。
 ハクは穏やかな表情で笑いながら、何も、と答えた。

「何となく、目が覚めただけです。少し、外の空気が吸いたくなって」
「……雨、止んだのね」
「はい」

 次の町への移動中、「こりゃ一雨来るな」のハクの言葉に従って、ヨナ一行は早々に宿を取った。ハクの天気予報は大当たりで、二つ取った部屋の片方に落ち着き、みんなで温かなお茶を飲んでいたら、あっという間に大雨が地を叩き始めたのだ。

「風も強かったから、あっという間に雲を追い払ったみたいです。ほら」
「え?」

 ハクの指先が空を指し、導かれるままヨナが仰向くと、透明な夜色に煌めきを与える、幾千もの星の瞬きがそこにはあった。

「わ……ぁ」

 しばしの間、ヨナはその瞬きに目を奪われた。火が消えたかのように真っ暗な町から見上げるからなのか、まるで星空が宝石の海に見える。よくよく見ると、星の色も少しずつ違うのだ。

「っ」

 不意に、肌寒さを感じて、思わずヨナは自分の腕を抱いた。昼間はどれだけ暑くても、やはり夜は冷える。雨が降ったから、湿気で多少暑いかと思ったのが間違いだった。

「寒いですか?」

 ヨナのそんな仕草に気付いたのか、ハクの囁きが耳に届く。

「少しだけ。外套取って来……え?」

 答えて、踵を返しかけると同時に、ふわり、と背後から回された腕がヨナを包み込んだ。

「ハ、ハク……!?」
「こーすれば少しは温かいでしょう」

 冷え始めたヨナの体に、ハクの体温が布越しにじわりと広がっていく。確かに温かい。温かい、けれど。
 ハクに抱き締めて貰うのは初めてではない。それこそ今まで何度もあった。
 だけど、それは危機的状況だったり、そうでなくてもハクがすぐに離れてしまう事の方が多かった。こんな風に、ゆっくりとハクを感じる時は……そう、無い。
 とくん……鼓動が一つ、脈打った。
 それはどんどん速さを増していく。心臓の音が、耳に付く程に。
 きっと、今のヨナは、別の意味で頬が熱くなっているだろう。

「……あ、ありがと……」
「いーえ。……風邪、引かないで下さいよ」
「……うん……」

 ヨナの鼓動の速さを知ってか知らずか、ハクは回した腕でヨナの肩をぽん、ぽん、と叩く。それが子供をあやすかのようで、けれど、そのゆっくりとした速度にどことなく安堵して、ヨナはほう、と息をついた。
 そんなヨナを見ながら、ハクは若干抱き締めてしまった事を後悔していた。
 わざわざ外套を取りに戻るよりも、ハクがヨナを抱き締める方が早いと判断した、ただそれだけだったのだが。
 いつもなら、理性が勝つ内にヨナを離すのだけれど、今は暖を取る事を目的とした抱擁だから、離れるわけにも行かず。
 華奢ではあるけれど、柔らかな体は抵抗もせず、大人しく腕の中に抱かれている。妹でしかなかった彼女が、女にしか見えなくなったのはいつだっただろう。
 とりあえずは余計な事を考えずに、ただ温もりを分け与えるだけに専念しようと、ハクは自嘲する。

「……催涙雨にならなくて、良かったわ」

 ハクに抱き締められている現実から瞳を逸らすかのように、ヨナはまた雲の晴れた空を見上げた。

 そう、今日は七夕。牽牛と織女が一年に一度、天の川に架かる鵲の橋を渡って会う事が出来るという伝説の日。もしも夕方の雨が降り続いていたならば、天の川が水で氾濫して、鵲の橋は架からずに、二人は会う事が叶わなくなる。会えない二人が流す涙――――それが催涙雨。
 そうならなくて良かった。そんなヨナの陶酔をぶち壊すように、ハクのからかい声が湿った風に混じって溶けた。

「せっかく晴れたんですし、願い事しといたらどーです?」
「……何が言いたいかは何となく解るけれど、一応聞いておくわ。何を?」

 顔だけを振り向かせて、にっこりと笑うヨナに負けずに、ハクも悪戯顔でニッと笑って。

「そりゃあ織女星に願う事と言ったら裁縫の上達でしょう。このままじゃ嫁のもらい手が、っと!」

 答えを聞いた瞬間に、ヨナは思い切り拳を振り上げたけれど、ハクは難なくその拳を受け止めてしまう。

「相変わらず失礼ねお前は!」
「ちょ、静かにして下さいユンが起きる!」
「むぐ」

 大きな手のひらで口を覆われ、うるさくさせるような事を言ったのは一体誰よ、と瞳で訴えても、ハクは苦笑するだけだ。

「静かにして下さいよ?」

 耳元でハクに囁かれ、その声に一瞬ぞくりとしながらも、こくんと素直に頷く。
 息苦しさから解放されて、ヨナがふう、と息を吐いたその時。思わぬ言葉がハクの口から零れ落ちた。

「……星合の空、ですね」
「……ハクがそんな言葉を知ってるなんて」
「散々人を勉強に付き合わせたのはどこの誰ですか」
「だって、覚えているとは思わなかったのよ」

 二つの星が出会えますようにと祈りながら見上げる空の事を、星合の空という。今頃、牽牛と織女は、天の川の真ん中で、愛を囁いているのだろうか。

「……でも、一年に一度しか会えないなんて、淋しいわよね」

 儚げな声音を感じ取ったのか、ヨナを抱き締めるハクの腕がきゅっと力を込めた。

「一生会えないよりは、良いけれど」

 空を見上げるヨナの瞳の先には、誰もいない。既に亡い父の姿も、城にいるかつての想い人の姿も、見えない。何故なら、ヨナが傍にいて欲しい人は、『前』にはいない。

「私は、いつでも傍にいて欲しい……。だから」

 ヨナを抱き締めるハクの腕に、そっと華奢な手を触れさせて。

「ずっと傍にいてね、ハク」

 ハクが、そっと息を呑む音が、聞こえた。

 表情は解らない。解らなくてもいい。声音に込めた色だけで伝われば、それで良い。
 答えを待つヨナを抱き締める腕が、痛い程に力を加えて。

「……御意」

 低い声が、願いを届けるように夜空に溶けた。


ここからおまけ。反転してご覧下さい。

「? 姫さん?」

 ハクの温もりが心地よかったのか、ヨナの小さな頭がかくん、と揺れた。
 どうやら再び眠くなってしまったようだと苦笑して、ハクは片手でヨナを抱き上げ、部屋に戻った。
 寝台に横にさせ、離れようとした瞬間。眠そうなヨナの瞳がうっすらと開き、告げた。

「一緒に、いて……?」
「……いや、それは」

 さすがにまずいだろうと言う前に、ヨナの瞼は閉じられて、あっという間に寝入ってしまい。その上いつの間にかハクの服を小さな手でぎゅっと握り込んでいた。

(……後で怒らないで下さいよ?)

 服を脱ぐわけにも行かず、ヨナの手を力強く引き離すわけにも行かず。ハクはそっとヨナの隣に横になった。

(人の気も知らないで、言ってくれるよな……)

 ずっと傍にいて、などと。結局ハクは、従者としてしか答えられなかった。
 男として答えてしまっては、この距離を保てなくなることが解っていたから。

(ほんっと、俺を振り回すのが得意だよ、この姫さんは……)

 ふ、とハクの吐息に気がついたのか、温もりを求めるようにヨナの体が横を向き、そして――――すり寄ってきた。
 すう、と丸い穏やかな寝息が、ハクの服越しに胸に届く。
 起こさぬように、その華奢な体を抱き締めて。赤い髪にそっと触れるだけの口づけを落とし、ハクも再びの眠りについた。

*****

「……何でこーなってんの」

 朝、目を覚ましたユンが見たのは、露台側の寝台で、幸せそうに眠るハクとヨナの姿だった。毛布で隠れているから良く解らないけれど、恐らくはハクがヨナを抱き締めている状態だろうと思う。
 昨日の夜、三人は別々の寝台で眠っていたはずだ。ユンの知らぬ間に、一体何があったのか……などと考える前に、いつもよりあどけないハクの寝顔と、微かに微笑みながらハクにすり寄っているヨナの表情が、とても微笑ましくて。

(ま、もー少し寝かせておこうか)

 きっとまた離ればなれになってしまった牽牛と織女の代わりに。
 俺達の牽牛と織女は、いつまでも共にいられるように。

暁のヨナ 目次
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