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暁のヨナ Never ever 【7】

暁のヨナ 目次へ 二次創作Index

Pixivに載せていたものと同じです。タイトル違いますが……。

『私が! 私がスウォンしか見てなかったと思ってるの!?』


 僕は先に戻るね、と、ジェハは何事もなかったかのように二つの桶に水を汲み、すぐに姿を消した。その場に取り残されたヨナは、近付いて来るハクから逃げようとして、背後が沢な事を思い出す。

「ハ、ハク……」

 目の前で立ち止まられて、ヨナはハクを見上げる事しか出来ない。
 右手が持ち上げられて、頬を叩かれるのかとヨナは思わず身を竦めたけれど、ハクの無骨な指先が触れたのは、彼女の頬だった。
 涙の伝った跡を撫でるようなその仕草は、とても優しい。

「泣くような事が、あったのか」

 反射的に、ヨナは首を横に振った。悲しくなるようなことは、何もない。
 ただ、幸せを……かつてあった幸せを、思い出しただけ。

「……姫さん。本当の事、話せよ」
「……嫌」
「姫さん!」
「嫌なのよ! 私が……っ!」

 いつかは解ることなのは認識している。このまま旅を続けても、何故城に帰らないのかとハクは不思議がるだろう。だけど。

「忘れたままでもいい! もう、二度とハクに、あんな想いして欲しくな――――!」

 最後まで告げる前に、ハクの両腕が、ヨナを抱きしめた。強く、強く……まるでそれ以上言葉を紡ぐ事を許さぬかのように、後頭部にある大きな手が、ハクの胸へと引き寄せる。

「……俺だって姫さんのそんな顔、見ていたくねぇよ」

 スウォンの名を出す度に、僅かに翳るヨナの表情。消えてしまいそうな儚げな、淡い微笑み。
 そんなヨナが気にかかって仕方がなくて、山菜採りに行く直前、ゼノがふはっと笑ってハクに告げた。

「今から追いかけたら、多分娘さんの本音が聞けるから」

 と。だからハクは、言われるままに沢へと足を運び、そして、聞いたのだ。
 スウォンの裏切り、という言葉を。

「俺の気持ちを、勝手に見積もるな」
「それは今のお前だから言える事よ! 18歳のハクだったら」
「姫さんが俺の何を知ってんだよ」

 ヨナを突き放すような言葉が、ハクの唇から紡がれる。

「どういう、意味……?」
「姫さんが見てんのは、ずっと、スウォンだけだろーが」

 その言葉に、ヨナは思わずカッとなった。

「私が! 私がスウォンしか見てなかったと思ってるの!?」
「事実そうだろ」
「そうだけど! ……そう、だったけど……っ!」

 ハクの腕の中で、ヨナは激しく首を振る。

 確かに、スウォンの事はずっと見ていた。異性として、恋愛対象として。
 だけど、だからこそ……本当のスウォンを、見ていなかったのかも知れないと、今なら思う。
 あの笑顔が見られるだけで嬉しくて、その裏に隠されたものなど見ようともしなかったから。
 でも、ハクは。

「ハクの事だって、ずっと……!」

 ずっと、見てきた。幼馴染みのハクも、専属護衛としてのハクも。そして、人としても。
 曇り硝子の向こうにいたスウォンとは違う。ヨナの傍にはいつもハクがいて、ハクの傍にはヨナがいた。ありのままのハクと、いつだって一緒だった。

「全部を知っているとは言わない。言えないわ。だけどお前の事を、私が『何も』知らないとは言わせない」
「姫さ……」
「……ハクこそ、解ってないわよ」

 ぎゅっ、とヨナの細い両腕が、ハクの背中を抱き締める。

「……私が、どれだけお前を大事に想っているか……全然、解ってない!」

 こんなのはただの八つ当たりだ。ハクに真実を告げないと決めたのはヨナ自身で、それはハクの心を守りたいが為で。
 だから、こんな言葉は筋違いなのに、唇から零れ落ちる言葉は止まらない。――――止められない。

「ハクだけは、そばにいなきゃダメなのよ……! お前を守る為なら、私は」

 その言葉が、引き金だった。

 大きな紫紺の瞳から流れる、真珠のような涙。目の前に在るヨナの姿に、今よりも髪の短い彼女の姿が重なる。
 あの時も、泣いていた。初めて武器を手にして、その恐ろしさを肌で感じても尚、武器を手放す意志はないと告げた、愛しき少女。
 ハクにとって、たった一人の――――。

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