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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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暁のヨナ Never ever 【6】

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Pixivに載せていたものと同じです。タイトル違いますが……。

『私は、いいの。私よりも、……私は、ハクを守りたい』


「え?」

 だからこうして、外に出てきたのではなかったのかと思ってジェハを見上げると。彼は片目をつぶって悪戯をするかのように笑った。

「空中散歩♪」
「……うん!」

 決まり、とジェハがしゃがみ、ヨナは二つの桶を両手に持って、ジェハの背中に身を預けた。
 とん、と軽く地面を蹴っただけで、ジェハの体は一気に空中へと跳び、ヨナは眼下に広がる森の緑をその目に映した。

「素敵……」

 若竹色、常磐色、青緑。若葉色、萌葱色、深緑。緑と一口に言っても、その色は様々だ。濃いものから薄いものまで、色彩はいくつもある。

「上から見ないと、解らないものね」
「あ、ほら。あそこに赤い実が生ってるよ。帰りにもいで行こうか」
「そうね、コウのご家族へのお土産にしましょ」

 大振りな木の枝を踏み台にして、何度かジェハが跳躍すると、あっという間に沢へと辿り着いた。歩いてもそれ程距離はないのだが、やはり跳ぶと早い。

「わ、冷たい……」

 さらさらと流れる水の中に、そっとヨナは手を伸ばす。両手で水をすくい、喉を潤せば、食道を通る冷たい感覚に一瞬身震いする。けれどそれが生きている事を実感させるかのようで、ヨナはふわりと微笑んだ。
 空は快晴。流れる水は透明なれど、遠くに見える水面には周囲の木々と空の色が微かに映っているのが見て取れる。

「……やっとちゃんと笑ったね」
「え?」
「ずっと、落ち込んでいただろう? ハクの事で」

 正確に言うならば、ハクが無邪気にスウォンの名を告げる度に、だ。

「ジェハ……」
「辛いなら辛いって、言っていいのに。ハクには言えなくても、ユン君だって、僕達にだって」

 彼は、これが言いたくて、ヨナを散歩に誘ったのだろうか。
 水面に映る自分の顔を見ながら、ヨナは苦笑して言葉を発した。

「……心配、かけてしまっていた?」
「僕らが勝手に心配していただけだけどね。……もう、隠すのも、誤魔化すのも限界なんじゃないのかな」

 ハクに対しても、ヨナ自身も。そうジェハが告げるも、ヨナはふるふると首を横に振った。

「もう少しだけ、わがままを通させて」
「ヨナちゃん……」
「ハクに、……辛い思いをさせたくないの……」

 真実を知って、辛い思いをするのは、きっとハクだ。
 たった数ヶ月前までは、当たり前だった関係性。とてもとても遠い昔を懐かしむかのように、ヨナは微笑みを浮かべる。

「……本当に、仲が良かったのよ。兄弟みたいに」

 誰よりも大切な親友で、好敵手で。互いに互いが目標で。けれど多分、互いになら負けても悔しくないと思えるくらいに認め合っていた二人。
 端から見ていたヨナにだって、解る。どれ程ハクが、彼を信頼していたか。スウォンも、ハクと共にある時は楽しそうに笑っていた。あのすべてが偽りの上にあったなど、ヨナとて信じたくはない。

「いつも、一緒だった。ハクが私の専属護衛になる頃には、スウォンにもなかなか会えなかったけれど……でも、会えた時は本当に、……嬉しそうで。楽し、そうで……っ」

 我知らず零れた涙が、頬を伝う。脳裏に蘇る、二人一緒にグルファンを育てる姿。

『さすがお二人の鷹ですな。利口です』
『ですって、ハク』
『スウォンの育て方が良いんだろ。いてっ』
『あはは、グルファンが怒ってます』
『こらグルファン!』

 大きくなってからは、技を競い合うようになって。

『俺の勝ちですね、スウォン様』
『総合点では私の勝ちですよ、ハク』

 ずっとそんな姿を見ていられると、思っていた――――。けれど、今はもう全てが、遠い過去(ゆめ)。

「でも、事実を伝えなければ、ヨナちゃんが辛いだけだよ?」
「私は、いいの。私よりも、……私は、ハクを守りたい」

 ハクの心を。城を出た時はヨナも己の事で精一杯で、ハクの気持ちを考える余裕などなかったけれど。今は、ヨナにも周りを見る余裕が出来たから。

「……父上を守れなかった後悔よりも、スウォンの裏切りの方が、……ハクには辛いわ、きっと……」
「……そうなのかい? ハク」
「え!?」

 慌てて振り向くと、木の陰から現れた、黒髪の青年の姿。

「い、いつから……!」
「……姫さん」

 低い声が、ヨナを呼ぶ。偽りも、嘘も、逃げる事さえも許さぬ強い声。

「……どういう事だ」

 真剣な瞳は真っ直ぐにヨナを見据え。途端に重くなったその空気を壊すかのように、爽やかな風が二人の間を駆け抜けていった。

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