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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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暁のヨナ Never ever 【5】

暁のヨナ 目次へ 二次創作Index

Pixivに載せていたものと同じです。タイトル違いますが……。

『一体、何を隠してるんだ……?』


 ハクがここ数年の記憶を失って、数日が経った。けれど、彼の記憶は一向に戻る気配もなく……ただ、怪我が治るのを待つ事しか出来ない。
 ハクをここに運び込んだ時、包帯と水を持ってくると告げて出て行ったコウは、戻って来た時に、四龍達とヨナの話を立ち聞きしてしまったらしく、ごめんなさい、ごめんなさいと謝り続けた。それが、ヨナがなかなか戻って来なかった理由でもある。
 そしてコウと、コウの両親が申し出てくれた、「せめて傷が治るまでは、ここにお泊まり下さい」の言葉に甘え。お礼と称して四龍達は、村を襲うという賊達を返り討ちにしていた。

「腹ぺこ一家の本領発揮してるよねぇ」

 もぐもぐと焼き菓子を食べながら、ユン。

「腹ぺこ? 何だそれ?」

 記憶のないハクが、饅頭を食べながら訊くと、「腹へり……」とシンアが呟き、キジャが搾った果汁を一口飲んで告げる。

「暗黒龍と愉快な腹へり達の略称だ」
「いやだから、どっからそんな名前が出てきたんだ?」
「ちなみに暗黒龍は君の事だよ、ハク」

 杯を傾けながら、ジェハ。

「俺? ……ちょっといいかも」
「はははっ、兄ちゃん前と同じ事言ってるなぁ」

 明るく笑うゼノにつられて、ハクは本当に屈託無く笑う。18歳のハクの姿で、昔のままに。

(ハクのあんな笑顔は、……本当に久しぶり)

 それが当たり前だった日々は、遙か遠い。思い出すと切なくて、ヨナの胸はぎゅっと締め付けられる。
 その痛みを押し隠すように、無理矢理笑顔を浮かべて、ヨナは楽しそうなハクに視線を移す。
 記憶を失っていても、ハクは四龍達とすぐに打ち解けた。
 四龍達が年上だということも勿論あるだろうが、意識の底で仲間だと認めているのかも知れない。
 後からユンに聞いた話だと、ハクはヨナが席を外した間に、四龍達にも真剣な瞳で「スウォンを知っているか?」と訊いたらしい。
 だが実際、四龍達はスウォンを殆ど知らない。知っているのは彼の水の地の出来事だけだから、彼らがハクに白を切ることは簡単だった。

「スウォンが聞いたら盛大に笑われそーだな。な、姫さん」
「……どうかしら? ハクだけずるいです、なんて言いそうよ?」

 有り得るな、とハクは喉の奥で笑う。

「そうしたら名付け親のキジャに突撃するわね、多分」
「わ、私ですか!?」
「邪の暗黒龍って言ったのはキジャだからねぇ」
「スウォンが龍か……。似合わねぇな、あいつには。どーせなら王様の方が合ってるよ、――――姫さんと結婚してさ」

 きっと、そうなる。ヨナがスウォンに好意を抱いているのは丸解りだし、スウォンならば血筋的にも問題はない。
 そしてハクは、そんな二人の傍らにいるのだ、ずっと。三人で、命が潰えるその時まで。
 それは、13歳のハクにとって、必ずやってくるであろう未来。
 だから、本当に何気なく口にした言葉だったのだが、ユンとキジャが少し慌てたようにハクを呼んだ。

「ちょ、雷獣!」
「ハク、そなたっ」
「ん?」
「……そうね。向いてるわね、きっと」

 何故、ヨナはそんな淋しげな、淡い微笑みを浮かべるのだろう。
 ヨナの答えはいつも、一拍おいてから告げられる。年を重ねたが故なのか、それとも他に原因があるのか。
 思い当たることはたった一つ。スウォンの名を、ハクが出した時だけ――――。

(一体、何を隠してるんだ……?)

 訊いても、ヨナは「何も隠していない」の一点張りだ。仲間だという四龍達も、スウォンの事は知らないという。
 だが、スウォンに関して、何かがあった事だけは、確かだとハクは思う。
 今のヨナは、ハクが知るヨナではない。甘えたで、わがままで、城の外の事は何も知らないはずだった姫君は今、穏やかな眼差しを、儚げな表情を覚え、そしてその度に、ハクの胸を騒がせる。
 ずっと、妹のような少女だったヨナが、年上として目の前にいるから胸が騒ぐのかと思っていたけれど、それも、正確なものではないような気がする。
 失われた5年分の記憶の中にきっと答えがあるはずなのに、思い出そうにも思い出せない事がもどかしい。
 解る事は、ヨナのそんな表情は出来ればあまり見たくないと、ハクが思っている事だけだった。

「ん? コウ、どこ行くんだ?」

 その巨体にはあまりに小さく見える水桶を二つ、手に持ったコウを見つけたハクが、問いかける。見た目はともかく、今のハクと同い年であるコウとは、ハクも良く喋るようになっていた。

「沢に水を汲みに」
「なら、僕が行ってくるよ。そうだ、ヨナちゃん」
「え?」
「散歩がてら一緒に行かない?」

 ジェハがカタンと椅子から立ち、ヨナに手を差し伸べる。
 その顔が、とても優しげに見えて。ヨナはその手を取った。

「だったら俺が」
「ハクはまだ駄目よ」

 桶一杯の水を運ぶ事ぐらい、ハクには何てことないのは解っている。打ち身だとてほぼ治っているのだし。
 けれど、ジェハの目的は散歩だけではないような気がしたから、ヨナはその提案に乗ったのだ。

「じゃ、ちょっと行ってくるわね」
「ありがとうございます、お願いします。……外に出たいのであればハクさん、一緒に山菜採りに行って下さいますか?」
「あ? ああ、解った」
「山菜採りなら俺も行くよ」
「あ、ゼノもゼノも~」

 と、ユンとゼノが名乗りを上げる。キジャとシンアは、万一また賊が来た時の為の保険として居残りだ。

 空っぽの水桶をそれぞれ一つずつ持ちながら、ヨナとジェハは肩を並べて歩き出す。
 けれど、いつもなら饒舌なジェハは何も言わない。

「……ジェハ?」
「ヨナちゃん、お散歩しようか」

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