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暁のヨナ Never ever 【2】

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Pixivに載せていたものと同じです。タイトル違いますが……。

『姫さん、スウォンは?』


 ヨナがハクを置いて駆け出してから、どれ程の時間が経ったのだろう。戻って来た時には、ハクはぐったりと幹にもたれかかり、俯く顔には黒ずんだ血の跡が見えた。

「ハク!」
「待って、ヨナちゃん!」

 思わず駆け出そうとしたヨナを、ジェハの腕が止めた。
 何故止めるのかと振り返った時、ヨナの足裏に、僅かに響いてくる振動に気付いた。
 土を踏む重い音が、まるで火の部族の土地で聞いた威嚇の足音のようで、怖い。
 身を固めたまま、四龍達の警戒は解けない。ジェハに腕を掴まれたまま動く事も出来ずに、固唾を呑んでいると、ぬっ、と木々の隙間から現れた男の姿に、思わずヨナは悲鳴を上げた。

「きゃ……っ」
「そなた、何者だ!?」

 勇敢にもキジャが、龍の爪を翳しながら男に問いかける。シンアも黙って剣に手を伸ばしたけれど、何故かその手は何も掴むことなく下ろされた。

「シンア?」
「違う……」
「え」
「殺気、ない」

 呟かれた言葉の通り、先程までの猛々しさはどこにもなかった。かといって、近付いていいのか解らずにいると、男は何と、ぺこりと頭を下げた。

「ごめん、なさい」

 声はとても太いのに、何故か言葉自体はとても辿々しく、幼い子供を思わせた。
 思わずまじまじとその男を見て、ヨナはその手に握られた布を見つけた。

「……もしかして、手当、しようとしてくれていたの……?」

 こくん、と小さく頷いて、男はハクのすぐ傍に座り、恐らくは水で濡らしたその布で、黒ずんだ血を拭い取る。その仕草が巨体に似合わずにとても優しいものだったから、ヨナ達もハクに駆け寄り、各々ハクの怪我を確かめた。

「あちこち打ち身は出来てるけど、とりあえずヒビは入ってなさそう」

 ホッとしたユンの言葉に、ヨナの胸に安堵が広がった。

「頭、たんこぶ」
「瞼に切り傷、でもあんまり怪我らしい怪我はしてないね」
「もしかして、手加減してたか? 大きいボウズ」

 ゼノの言葉に、男はまた、こくん、と頷く。体の大きさに似合わぬ幼い姿に、ヨナは思わず訊ねた。

「……あなた、いくつ?」
「……13」
「ええ!? ……何食ったらそんなにでかくなるの」
「解りません。気付いたら、こんなに大きくなっていて……あの、旅の人、ですか?」
「え? ええ、そうよ。ね、……どうして、私達を襲ったの?」
「ここ数日、賊がこのあたりに入り込んできて……村を襲うから。ごめんなさい、偵察の人かと思ったんだ」

 男――――年齢から言えば少年と言うべきか――――は、この大きな体でいつも村を守ってきたらしい。細い木ならば根ごと引き抜ける程の力があると告げる彼は、自らが傷つけたハクを、痛ましげに見ている。

(優しい子……なんだわ)

 本当ならきっと、誰も傷つけたくないのだろう。そうでなければ、こんな瞳でハクを見たりしない。

「あの、村に来て下さい。お詫びに、ちゃんと手当てさせてくれませんか?」

 ああ、本当に。この子は優しい子なのだ。そう思ったヨナは、その好意に甘える事にした。
 四龍達には天幕の片付けを頼み、少年がハクを背負い、治療の出来るユンとヨナが、先に村へと行くことになった。
 少年・コウの両親は、息子が賊と誤ってハクとヨナを襲った事を丁寧に詫び、かつては宿屋だったという家の、部屋のいくつかを貸してくれた。
 コウはハクを寝台に寝かせ、包帯と水を持ってくると部屋を出て行き、残されたユンとヨナは、四龍達が荷物を持ってくるまでは何も出来ない為に、ただ、意識を失ったハクを見ていた。

「……何だか、拍子抜け」
「そうね。……でも、人を見かけで判断してはいけないわね」

 あんなに強そうでも(実際ハクが振り解けぬ程に力は強かった)、心はとても優しいコウ。
 この村は、コウに守られているという認識が強いからか、誰も嫌な顔一つせずにコウに声をかけていた。

『普通なら、こんな大男、化け物って呼ばれるんですけどね』

 今までかち合った賊は、大抵そう言ったのだとコウは笑っていた。けれど、村の人達はコウを違う名で呼ぶ。「守護神」と。

『あんまり、戦うのは好きじゃないけど……僕で守れるなら、守りたいと思うから』

「コウって、優しくて、強い子ね」
「だね。俺、ちょっと外出て来るよ。みんなが場所解らなくなったら困るし。ヨナはハクの傍にいてあげて」
「ええ。ありがとう、ユン」

 ハクが起きたら、きっと驚くだろう。ハクの首を絞めた男が、まだ13歳の少年で、そして、あんなに心優しい事に。

「ん……」
「ハク?」

 身じろいだハクの瞳がうっすらと開いていた。

「……姫さん?」
「ハク、大丈夫?」
「何が? ……いてっ」
「あちこち打ち身だらけなんだから、動いちゃダメよ。片目は瞼も切ってるし」

 身を起こそうとするハクを押し止めようとヨナが立ち上がったその時、だった。

「打ち身? 何で……ああ、そっか。さっきまで稽古してたんだっけ」

 ハクの唇から、不思議な言葉が紡がれ。そして。

「姫さん、スウォンは?」

 彼の名が、悲しみも怒りもなく。ただ親しみを込めて、呼ばれた。

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