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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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暁のヨナ 君を忘れない

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初ゼノカヤです。
Pixivに載せてましたが、こっちで公開しても大丈夫、かな、と。

『カヤ。……俺が、覚えてるから』



 カヤと出会ってから、毎日が楽しい。
 長らく忘れていた、人と関わる事の意味を思い出したような気がしていた。
 人は一人じゃ生きられない。自己という存在は、他人という鏡を通さなければ映す事が出来ないのだから。
 だからゼノは、カヤに出会ってから本当に「生きている」事を実感していた。
 自身に流れる血が、年老いる事を許さずとも。『黄龍』ではない自分自身でいられる場所がある事が、これ程嬉しい事だとは思わなかった。

(飢えていたのかも、知れない)

 年老いる事のない体は、長期に渡れば人々に不信感を植え付ける。ゼノはもしかしたら、そんな好奇や哀れみの視線に負けて逃げていたのかも知れないと、今更ながらに感じていた。
 『黄龍』などとは知らない、『ゼノ』という個人を見てくれるカヤ。
 そんなカヤとずっと一緒にいたくて、ずっと話していたくて。
 例えそれが、どんなに短い間でも――――。

「俺と、結婚して下さい」

 そうゼノが告げた途端、カヤの瞳がどんどん潤んで、そして、子供のように泣き出した。
 それが嬉し涙だと解っていたけれど、あまりにもカヤが泣くものだから、ゼノは無意識の内に顔を寄せて、そっと唇の端に口付けた。
 ほんの数秒だけ触れて、顔を離したゼノが見たのは、きょとん、と両目を瞬かせるカヤの、どこかあどけない表情だった。

「あ。泣き止んだ」

 ははっ、とゼノが笑う間に、先程まで涙が伝っていたカヤの頬が、どんどん林檎のように赤くなっていく。

「え、あれ? カヤ?」
「~~~っ、もう、ゼノ!」
「わ、カヤ、どうした!?」
「どうした、じゃないよ! い、いきなり何す……」
「何って、……あ」

 泣き止んでくれた事の方にばかり気をとられていた上に、無意識下だった為、自分が彼女に何をしたかをすっかり忘れていた。唇にはまだ、彼女の肌の温もりが残っているというのに。

「……嫌、だった?」

 ごめん、と思わず謝った途端。勢いよくカヤの体がぶつかってきて、ゼノは受け止め切れずに倒れ込み、強かに後頭部を床に打ち付けた。

「いててて……カヤ、危ないって。……カヤ?」
「嫌なわけ、ないよ」

 だって、と、ゼノの肩に顔を埋めたままのカヤが呟く。

「私、……ゼノのこと……」
「待った」

 肩口にあるカヤの黒髪を撫でて、ゼノは彼女の言葉を止めた。

「先に、俺に言わせて」

 よいしょ、とカヤごと体を起こし、膝の上に彼女を座らせて、目線の高さがほぼ同じになったカヤの瞳に向かって笑いかける。

「あのね、カヤ」
「……うん」
「この先、どれだけ一緒にいられるか解らなくても。でも、ずっと一緒にいたいって言ったのは、嘘なんかじゃないよ」

 許されるなら。本当にカヤの時が止まってくれるなら、ずっと傍にいたいと思う。
 もしもこの命を分け与える事が出来るのなら、喜んで差しだそうと思えるくらいには。

「……カヤが、すきだよ」
「……私も、ゼノがすき」

 くすくす、笑う声が不意に途切れて、どちらからともなく瞳を伏せた。
 閉ざした視界の中で感じる、柔らかな感触と温もりは、今、確かにカヤが生きている証。ついばむように、瞼に、頬にと口付ければ、「くすぐったいよぉ」と軽やかに笑う彼女の声。
 ……失いたくない。そう思うのと同じぐらい、カヤを抱き締める腕に力を込めた。

 その後、どれだけゼノが龍神に願っても、カヤの命を長らえさせる事は出来なかった。
 やせ衰えていく彼女をただ、傍で見ている事しか出来なかったけれど、それでも。

(カヤ。……俺が、覚えてるから)

 これ程長い時間が経っても君は、忘れられない大切な存在ひと
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