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140字log 【暁のヨナ】 07

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・【見ていられない】
・【欲しい答え】
・【風に攫われ】
・【遣らずの雨】
・【今はもう遠い空 初期】
・【空が代わりに】
・【特訓】
・【笑顔】

【見ていられない】

「う……っ」
「ハク……っ!」
 荒い息を吐き、苦しげなハクの名を、ヨナは呼ぶ。
 腕の骨折から来る熱は、そうそう簡単には引いてくれない。
 すぐ傍に置いた台から、水差しを手に取り、ハクの口元に近づける。けれど。
 温くなってしまったその水はただ、唇を湿らせるだけだった。
(どうしよう……)
 水を飲まなければ、体の熱を下げられない。
 出来るだけ早く熱を下げて、体を楽にしなければ、いくらハクでも参ってしまう。
 ただでさえ、今の彼は意識が朦朧としているのだから。ユンはまだ戻らないし、ハクの荒い息が、静かな部屋にやけに響いて――――。
(躊躇ってる暇は、……ないのよね)
 脱水症状が起きる前に、少しでも水分を補給しなければならない。
 意識が朦朧としていて飲み込めないのなら、――――飲ませるしか、ない。
 水を少し口に含み、ハクの顔をそっと見下ろす。
 苦しげにひそめられた眉。きつく閉じられた瞳。汗ばむ頬。
(ハク……)
 少しでも、楽になるのなら……。願いながら、ハクの薄く開いた唇に口づけた。
 口内で温くなってしまった水を、流し込む。
 かすかに嚥下する音が聞こえて、ヨナはホッとする。
 何度かそれを繰り返し、ようやくハクの表情が和らいだ頃。思わずヨナは自分の行動に赤面した。
(わ、私……っ)
 水を飲ませるのが目的だった、それは紛れもない真実、なのだけど。
 柔らかな唇の感触が、ヨナの唇にまだ残っている。水を飲ませた後、少しだけホッとした熱い吐息も。手を添えていた、汗ばむ頬の感覚も。
 すべてが、近くて。こんなに近付いた事など、今まで無かったから。
「鼓動……早い……っ」
 ドクドクと脈を打つ左胸を思わず押さえた時、扉が開いた。
「ヨナ、何も変わった事無かった?」
「え、ええ大丈夫!」
「そっか」
「じゃ、じゃあユン、あとお願いねっ」
 このままここにいたら、余計な事を言ってしまいそうで。ヨナは慌てて部屋を後にしたのだった。

【欲しい答え】

「姫さんがいらないと言うまでは」
 傍にいます。そんな従者としての答えが、聞きたかったんじゃない。
「私が隣にいて欲しいのは、ハクだけよ……っ!」
「姫さ」
「……馬鹿っ!」
 それだけを告げて、ヨナは駆け出す。
(今の、……!)
 認識した途端、ハクは彼女の背中を追いかけた。
「姫さんっ」
 あっという間に追いついて、歩みを止めるように背後から抱き竦めた。
「……どうして、追いかけてくるの……」
「解らないのか?」
 赤い髪に見え隠れする小さな耳に囁きかける。
「俺が、傍にいたいからだ」
 そして、今まで決して呼び捨てにはしなかった名を、呼んだ。

【風に攫われ】

 呟きは、一瞬後には風に攫われる。だからこそ紡げる、胸に秘めた想いの言葉。
 透明な風は、言葉に含ませた色も想いも、何もかもを包んで流れていく。だから。
「好き、なんて言葉じゃきっと……足りない」
 紡いだ言葉も風に攫われるはずだったのに。
「俺も、ですよ」

【遣らずの雨】

「雨、止まないわね」
 互いに己の顔を見るのがやっとの暗闇の見えぬ中、囁きだけが耳に届く。
「ユン、心配してるかしら」
「とは言っても、この雨じゃな……」
 大分弱まっては来たが、天幕に戻るまでにずぶ濡れになるのは確実だった。
「……ね、ハク、こっち」
「はい?」
「ハクも寒いでしょ?」
 着せられていた上着を、座り込んだハクに被せて。ヨナは自らその腕の中に飛び込んだ。
「ふふ。ハク、温かい……」
 そう告げて幸せそうに笑うヨナとは裏腹に。
(この姫さんは……っ!)
 高華の雷獣と呼ばれた男は必死に自制心と戦っていた。

【今はもう遠い空 初期】

 天幕が燃え、使えなくなってしまった。
「ってわけで、今日はみんなで雑魚寝! なんだけど、毛布が足りないんだよね」
 炎に気付いたのが遅かった為に、半分以上焦げてしまった2枚の毛布。それを使う事は出来ない。
「それなら私、ハクと眠るわ」
「……また何か企んでんじゃないですよね?」

【空が代わりに】

 降りしきる雨が、まるで止まらぬ事を示すかのように時を刻んでいく。
 握り締めた拳を温かい手が包み、強張る指を一つずつ解して。
「……空が、泣いてるのよ」
 幾筋も瞳から頬を伝うこれは、涙であってはならないから――――。
「……そうですか」
 絡められた指先が、熱い。

【特訓】

「姫さん、そんなもんどっから!」
「ジェハが貸してくれたの」
「あのタレ目……!」
「これなら腕の力で投げられるからって。ダメ?」
「いや、ダメとかいう問題じゃなく」
「だからハク、避けてね」
「は!?」
「とりあえずハクを的にして投げるから」
「ちょっと待てっ!」

【笑顔】

「無理して笑わなくても、いいんですよ」
「無理なんかしてないわ」
 そう、無理なんかしていない。だって。
「……泣きたくなったら、ハクがいてくれるでしょう?」
 告げた言葉に、ハクが驚いたように目を瞠る。
「だから、大丈夫。みんなが、ハクがいてくれるから、私は笑えるの」
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