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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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140字log 【オリジナル・その他】 04

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・【進むために】
・【いっそ本当に】
・【まさかこいつが】

【進むために】
「どうして、忘れちゃったの……?」
「……忘れられる程度の記憶だったからじゃねぇの」
「……っ」
 そう告げれば、途端に彼女の顔がくしゃりと歪む。瞳が涙で濡れる。
 泣かせたい訳ではない。そもそも――覚えている、のだから。
 彼女と過ごした日々も、彼女を愛し、愛された事も、全て。
(けど)
 彼女が今でも愛しているのは、現在の自分ではない。今、目の前にいる自分を通して見ている、過去の自分だ。
(情けねぇとは思うけど)
 過去の自分に嫉妬して、現在の自分が好きな女を泣かせているなんて。
「酷い、とか思ってんの?」
 告げた言葉に、彼女の体がびくりと震える。
「酷いのはどっちだよ」
 強引に顔を上げさせて、濡れた黒瞳を見つめる。
「今の俺を、見てもいないくせに」
「そんな……そんな事、ない……。私は」
「違わない。だって」
 思い切り引き寄せて、指先で頤を捕まえて。薄く開いた唇を奪う。
「……昔の俺は、こんな事、しなかっただろ……?」
「どういう、事……? 昔の俺、って……覚えてるの!?」
 しまった、と思ってももう遅い。
「覚えてない」
「嘘! ちゃんと私の目を見て言って!」
 両頬を華奢な手で包まれて、真正面から向き合わされる。
「……お願い……。ちゃんと、覚えてるなら、言って」
 言いたい事が、あるの。
「言いたい事……?」
「その身を賭して、私を護ってくれたことに、……お礼が言いたかっただけなの」
 だから、覚えていないと言われる事が悲しかった。
「だって、そうじゃないと、私もあなたも、『今』を生きられないでしょう?」
 過去の時間から一歩も進めないまま。新たな関係は作れない。
「だから……ね? 私にちゃんと言わせて?」
 過去のお礼と、そして、今の気持ちを、あなたに。
「……解った」
 告げて、跪き。頭を垂れた。
「永き時を超えて再びお目にかかれましたこと、光栄に存じます」
「……大任、ご苦労様でした。そして」
 床に膝をついた彼女は、にこりと笑って。
「大好きよ。昔も、今も、変わらずにずっと……」
 あなたを、一人の男の人として。
「……俺も」
 言葉にするのが気恥ずかしくて、行動で示そうと顔を寄せたのに、押し止められる。
「ダメ。ちゃんと言葉で言って」
「……好きだ」
 ふわり、花が咲くように笑った彼女に、今度こそ口づけた。

【いっそ本当に】

「ねぇ」
「ん~?」
「何で私の事呼び捨てなの?」
 たまたま帰る時間が一緒になって、暗いから送ってくと言ってくれた彼に、唐突に質問をぶつけた。
「今年同じクラスになるまでお前の名字知らなかったし。あいつがいつも名前呼んでたし」
 あいつ……彼の、可愛い幼馴染みで、自分の友達だ。
「……そっか」
「嫌だったら今からでも名字呼びに変えるけど」
「すっごく違和感感じるから、別にいい、んだけどね」
「何かあるのか?」
「……付き合ってるのかって、質問攻めにあってます……」
「あいつに?」
 こくり、と頷くと、彼は。
「いっそ本当にする?」
 と、悪戯顔で笑った。

【まさかこいつが】

 目の前の友人が、徐に電話をかけ始めた。
「あ。くぅ? 悪い、起こした? いや、頼みがあって。俺の部屋の机の上にさ、レポート置きっぱじゃね? ……うん、ゆっくりでいいよ」
 何なんだ、この聞いた事のない甘い声は……っ!
 周りを見れば、みんなぽかんとした顔でこいつを見てる。
「あ、やっぱあった? いや、いーよ、サボって一旦帰……無理すんなって……解った、なら昼休みに合わせて来いよ、メシ奢ってやる。ん、じゃな」
「堤っ」
「うわっ、何だいきなり」
「今の誰! くぅって誰!?」
「彼女だけど?」
「彼女!? お前彼女いたの!?」
「うん」
「見たい! どんな子!?」
「昼休みに来るから」
 そして昼休み。
「くぅ!」
「あ、志弦。……っ」
「バカ!」
「あ、ありがと」
 怪我してるの忘れてた、と笑う少女と、呆れた顔で少女を支える志弦。見た事のない光景に、一緒に来た友人達、全員がぽかんと口を開けている。
「はい、これでしょ? レポート」
「ん、さんきゅ」
「……で、後ろの団体様は何?」
「くぅ見物?」
「……私、動物園に就職した覚えないんだけどな?」
「俺も手放した覚えはないな」
「堤が甘い……」
「志弦が笑ってる……」
「……普段どういう生活してるの、しづ?」
「至って普通のはずなんだけどな。くぅ?」
 支えていた腕から離れ、少女はきちんとこちらに向き直った。
「初めまして。唐津くるみです」
 にこり、と笑ったくるみを真正面から見て。思わず呟く。
「可愛い……」
「やんねーぞ」
「つーかお前が普段と違いすぎなんだよっ」
「あーはいはい、とにかく移動だ移動。メシ食いっぱぐれる。くぅ、歩ける?」
「ん、何とか……しづに掴まっててもいい?」
「何なら運ぶけど」
「ばかっ、注目浴びて恥ずかしいでしょ!」
「じゃ、掴まってろ」
 腕を差し延べる志弦に、くるみも自然にその手を取り、歩き始めた。
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