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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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暁のヨナ 今はもう遠い空

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『ずっと、同じ空を見ていられると思っていた』



 四龍を置いて買い物に出掛けた事が災いして、天幕が燃え、使えなくなってしまった。

「ってわけで、今日はみんなで雑魚寝! ……なんだけど、毛布が足りないんだよね……」

 炎に気付いたのが遅かった為に、半分以上焦げてしまった2枚の毛布。またどこかで買い足さなければならないが、とりあえず今晩を凌ぐ事が先決だ。

「それなら私、ハクと眠るわ」
「は?」

 何を言い出すのだとハクがヨナを振り向く。少し前にも、こんな会話をしなかっただろうか。あの時は、ヨナがハクの短剣を奪おうとして一緒に寝ると言い出したのだが……。

「……また何か企んでるんですか?」
「違うわよ。ただ、ハクが一緒が良いなと思っただけ」

 キジャは「姫様となど恐れ多い……っ」と言うに決まっているし、ジェハは色んな意味で危険だとユンが言うし、シンアかゼノにはユンと一緒に眠ってもらえばいい。となるとヨナはやはり、ハクと一緒がいいのではないかと思っただけだ。

「何か問題?」
「……いえ、別にいーですけどね」

 背を向けて答えられた言葉はどこかぶっきらぼうだっだけれど、「じゃあそれで」とのユンの一言で決定した。
 夜の帳が下りてくると、四龍達とユンは次々に寝入り始めた。

「……みんな、眠るの早いわね」
「疲れたんでしょう。……タレ目まで珍しく本気で眠っちまってますし」

 どうやら、熊と戦ったのはいくらジェハでも大変だったようだ。それとも、大したことないとは言っても一応は怪我をしたせいかもしれないが。
 静寂が満ちていく。虫の音が聞こえる。パチパチと焚き火が爆ぜる音の中、ヨナは毛布を手にハクの傍に座り込んだ。

「ハク、寝ましょ」
「……はいはい」

 大木の下に、二人。手にしていた毛布をハクにも半分かけようとした時に、その手をそっと止められた。

「毛布は姫さんが使って下さい。冷えますから」
「ダメよ、ハクに風邪引かれちゃったら困るもの」
「そんなヤワじゃな……」
「ダメ」

 強く言い返すと、はぁ、と小さな溜息が聞こえて、毛布の半分がハクの体を包んだ。

「……寒くない?」
「寒いっつったら暖めてくれるんですか?」

 に、と何かを企んでいそうな顔でハクが笑うものだから、ヨナは思わずふいっと横を向いた。

「からかうなら何もしないわ。でも」

 手を繋ぐくらいは、いい? と小さな声でハクに問いかけると、大きな手がヨナの華奢な手を毛布の中で握り込んだ。

「……どうしたんです?」
「ちょっと、思い出しただけ……。――――覚えている? 木漏れ日」
「……星空、ですか」
「ええ……」

 遠い昔、まだ何も知らずにいた、穏やかだったあの日の事を――――。

*****

「スウォン、ハク! 来て来て、ここ涼しいわ!」
「うわぁ、本当です……」
「生き返るなー」

 その日は、とても暑い日で。三人で外に出たはいいものの、遊んでいたらすぐにばててしまいそうだった。
 そんな時、ヨナが見つけたのは、四方に枝葉を伸ばした大樹。生い茂る葉の下は濃い影を作り出していて、眩しすぎる光を遮っていた。
 その根元に三人揃って座り込み、葉の隙間から漏れる光に眼を細める。

「もう削り氷の季節だね」
「姫さん、甘いの好きだもんな」
「うん! 二人も一緒に食べようね!」

 氷室で貯蔵してあるはずの天然氷を削って、甘い蜜をかけて食べる削り氷は、ヨナのお気に入りだった。

「きらきらしてキレイ……」

 風で葉が揺れる度に、きらきらと零れてくる小さな光。頬に当たるそれを楽しんでいると、左側にいるスウォンが木漏れ日に負けないくらい瞳を輝かせて笑った。

「そういえばヨナ、知ってます? 木漏れ日って丸いんですよ?」
「え?」
「そうそう、葉っぱのスキマの形がどんなでも、地面に映る光は丸いんだ。ほら」

 右側にいるハクに促され、視線を地面に向ける。

「うわあ……っ」

 重なっている箇所もあるけれど、その全てが綺麗な丸を描いて地面にいくつも落ちていた。

「えー? 何で? 何で?」
「さあ?」
「リクツはわかんねーけどさ、でも、キレイだろ?」
「うん!」

 上を見て、下を見て。零れ落ちてくる光と、地面に映る光を瞳に映して。

「夜のお空みたいね!」

 葉が作り出す影は夜の空。煌めく光は瞬く星。そう表現したヨナに、スウォンが笑う。

「そうですね、星空みたいですね」
「さすがに夜は出歩けないもんなー。もっとでかくなったら、夜に城を抜け出して、星空見に行くか」
「はい!」
「うん!」

 楽しみ、と笑っていたら、いつの間にか3人肩を寄せ合って眠ってしまっていた。

「……これはこれは」

 顎髭をしごきながら、三人の子供達を探しに来たムンドクが、楽しげに笑う。

「微笑ましい光景じゃな」
「こんな所で呑気に……仮にも王族なのですが」
「といいつつ、お主も顔が笑っとるぞ」

 一緒に探しに来たジュドまでもが思わず口角を上げる程に、その寝顔はとてもあどけなく、安らぎに満ちていて。木漏れ日が、煌めいて3人を包み込んでいたことを、当の本人達は知らない。

*****

「……あの約束も、叶えられなかった」

 ずっと、同じ空を見ていられると思っていた。けれど、もう……スウォンとは違う空を見ているのだろう。
 今、ヨナの瞳に映るのは、小さな無数の光が瞬く夜の空。月は、分厚い雲が隠してしまっているのか姿が見えない。

「……夜空、綺麗ね」
「ああ……」

 今はもう、遠い空。どれだけ手を伸ばしても届かぬ、漆黒の闇の中の光。
 それでも、届くかのように思えて伸ばしかけた手は、ハクの手に包み込まれたまま。
 指先を絡められて、ヨナはハクを見上げ。その瞳をまっすぐに見つめて、告げた。

「いつか、一緒に見てくれる?」

 あの木漏れ日のような、降るような星空を。
 三人ではないけれど。きっともう、一緒に見る事など出来るはずもないけれど。
 そう望むのはいけない事だろうか。
 言葉では答えてくれなかった。けれど、瞳が和やかに細められて、ほんの少しだけ口角が上がる。それが多分、ハクの答え。

「……もう、眠って下さい。明日に響きますよ」
「……おやすみ、なさい」

 手を繋いだまま、ヨナはそっと瞳を閉じる。ハクの肩に頭を寄せて、深く呼吸をして。
 ゆっくりとその意識を夢の中に沈めていった。

「……あんたが望むなら……」

 肩にもたれかかるヨナの赤い髪にそっと口づけを落として、ハクもそのまま瞳を閉じた。

 そして、朝が来た。一番最初に起き出したのは、陽だまりとヨナが例えた黄龍ゼノ。

「ふああ~……。……ん?」

 毛布から抜け出して、くるりと首を回した先にゼノが見たのは。

「ははっ」

 肩を寄せ合って、あどけない顔で眠るハクとヨナの姿だった。

「こーしてると、兄ちゃんもただの兄ちゃんだなぁ」

 仲良き事は美しきかな~、などと呟きながら、とりあえず食料の足しになりそうな木の実でも探してこようかとゼノは歩き始めた。
 ヨナとハクが起き出すのは、それから数刻後のことだった。

暁のヨナ 目次
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