Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

暁のヨナ 笑顔を見ていたい

暁のヨナ 目次へ 二次創作Index

Twitterの絵というか漫画? からです。 
元はこちらから。

※最新話のネタバレですのでご注意下さいませ。



「しっかし熊とは……腹減ってたんですか?」

 肩を並べて歩きながら、ハクがからかうように言葉を紡いだ。ヨナはその言葉に首を横に振り、ハクを見上げた。

「だって、大の男が5人よ? やっぱりお肉がないと物足りないんじゃないかなって」
「5人? ……姫さん、ユン数えるの忘れてないすか」
「え? あ」

 ユンは自分より年下で、体格もヨナとそれ程変わらない上に「お母さん」的な存在だからなのか、「大の男」の数には入っていなかったのだ。

「ユンが聞いたら怒りますね。成長期ですし」
「えっ、ダメ、ハク! ユンには言わないで!」

 ユン、怒らせたら怖いんだから! と焦って口にした途端、ははっ、とハクが笑った。
 淋しさも、不安も何もない、心からの楽しそうな笑顔。

(あ……)

 その笑顔を見ていると、胸が温かくなる。自然と笑みが零れて、幸せな気分になる。

(ハクの笑顔、すき)

 そう思った瞬間、カルガンの言葉が脳裏に蘇った。

『ヨナはあいつの事、好きなのか?』

 思い出した途端に、ヨナの頬に熱が集まった。

(た、確かにハクの事は好きよ!? でもそれは、仲間としてっていうか、幼馴染みだし、従者だし、護衛だし……っ!)

 自分で何を言っているのか解らなくなって、ヨナはぶんぶんと頭を振る。

「……姫さん? どうしたんですいきなり」
「な、何でもないわ」

 深く呼吸をして、速くなった鼓動を落ち着かせる。
 周囲に目を配りながら歩いていると、不意にハクが足を止めた。

「お、果実発見」
「え?」

 ほら、とハクが視線を向けた先には、背の高い木があり、そこには美味しそうに熟れた実が生っている。

「わ……たくさん」
「持って帰りますか」

 少し離れたその木の場所へ辿り着く……も、背の高いハクでさえ手を伸ばしても届かぬ場所に、その実はあった。

「……残念」

 言葉のままにしゅんとするヨナを見て、ハクは苦笑した。大刀を幹に立てかけて、「姫さん」と手招く。

「ちょっと、俺の前に立ってください」
「? 何する……きゃ!?」

 突然ハクの両手が腰に触れたと思ったら、目線の位置が高くなった。

「届きます?」

 ハクの声が下から聞こえる。どうやら抱き上げられているらしいと気付いたヨナは、空中に浮いた足をパタパタと動かした。

「ハ、ハク、いきなり何を……っ」
「こーすれば取れるかと思ったんで。手、届きません?」

 言われて見れば、熟れた果実はヨナの目線のちょっと上にある。手を目一杯伸ばさなくとも、容易にもぎ取れる。が。
 せめて予告してからにして欲しかった。
 そんな事を思いながらも果実をいくつかもぎ取って、ヨナの腕に持ち切れなくなった頃、ようやく地面に足を下ろすことが出来た。

「ハク、腕大丈夫?」
「……姫さんの重みで痺れました……」
「え! やだ、ごめんなさ」
「冗談です」

 べ、と僅かに赤い舌を覗かせながらハクが笑う。

「ハ……!」

 心配したのに、とハクの名を叫ぼうとした唇は、ごつごつした固い手で塞がれた。

「……いるとは思ってなかったんですが」

 ハクのもう片手が指差すのは、少し遠い。方角は正面よりも少し右。木々の隙間に、幹よりも濃い色が見え隠れしている。のそ、のそ、と動くそれは、間違いなく。

「小熊……?」
「どーします? ユンは鳥とかでいいって言ってましたけど」

 小熊に悟られぬ為にか、耳元近くで囁かれる吐息を含んだ言葉に、思わず身を竦ませそうになるけれど。ヨナは一度呼吸をして、ハクを見上げた。

「もちろん、狩るわ」

 告げた言葉に、ハクはふっと笑って、ヨナの肩を叩いた。

「足止めしろ、あとは俺がやる」

 小熊とはいえ、その力は華奢なヨナの体などあっという間に圧死させることが出来るだろう。弓矢では完璧に致命傷を与えることは難しい。
 それが解っているから、ヨナはハクの言葉に素直に頷き、抱えていた果物を地面にそっと置いて、矢を番えた。
 狙うは足。人間でいうなら太ももの部位。心臓を狙えれば一番いいのだけれど、ヨナはまだそこまでの技量はない。
 弦を引く。狙いを定めて、――――放つ。
 同時に、ヨナの横をハクが駆けていく。矢が小熊の足に突き刺さった数瞬後、ハクの大刀の柄が小熊の後頭部を強く打ち、その衝撃で小熊はどさりと地面に倒れた。

「……ごめんね」

 両手を合わせて、謝罪の言葉を口にする。そんなヨナの姿を、ハクがどれ程優しい瞳で見ているか、ヨナは知らない。
 しばしの沈黙の後、瞳を開いたヨナは、地面に置いた果実をせっせと拾い集めた。

「ホント、逞しくなったよなぁ。おかげで姫さんが重い重い」

 先程の続きかのように、ハクの軽口が背後で聞こえ、ヨナは振り向きながら怒る。

「ハークー! お前はまた! いつもそうやって私をからかうんだから!」
「はははっ。姫さん、アオになってますよー」

 膨れる頬を突かれて、それがアオの頬袋のようだと例えられては、ますます膨れる他ない。

「果物ぶつけるわよっ」
「両手塞がってますけど。っつーか、投げられても避けますし」
「じゃあ飛び蹴り」
「あのタレ目の真似はせんで下さい」
「もう、知らないっ」

 踵を返そうとしたその時、パキッ、と地面に落ちていた枝を踏み付けて、ヨナは体勢を崩した。

「え」
「……っと!」

 後ろに向かって倒れかけた体は、伸びてきた両腕に引き寄せられる。
 両肩に触れる、手の温もり。何度も、ヨナを助けてくれる――――。

「無事か?」
「……え、ええ」
「いや、果物が」
「そっちの心配!?」

 見上げれば、楽しげに笑うハクがいる。肩に触れていた温もりは、そっと髪を撫でて。

「戻りますか」

 優しい声が、耳に届く。

(ねぇ、ハク……)

 もっと笑顔を見せて。その笑顔は、ヨナを幸せな気持ちにしてくれるから。
 出来る事なら、ずっと傍で見ていたい。
 そう願いながら、ヨナは小熊を肩に担ぐハクの後を追いかけた。

暁のヨナ 目次へ 二次創作Index
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR