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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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頂き物 明るき陽の光を 「可愛い」の独占歌

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 飾るのが遅くなってしまいました……。
 相互リンクさせて頂いている「空想 i 」の朱音さまから、今年も誕生日のお祝いSSを頂いてしまいました!
 雨の弓……というよりは明るき陽の光を、ですね。明人と透子の生前の話です。明人の葛藤する胸の内の描写がとっても解りやすいです♪

 それでは、追記からどうぞ!
 ラストにSSS追加してます。


 窓に張り付いた結露の一部を指先で拭くと、灰色に包まれた空が見える。ひらひらと舞い降りてきている冬の白い証が、一層寒さを際立たせて。
 子供の頃は……いや、今でもかな。雪が降ればそれだけでテンションが上がって、積もれば必ずと言っていいほど、泪花と透子は小さな雪だるまや雪うさぎを作ったっけ。
 雪と戯れて楽しそうに笑う声と幸せそうな表情を見たいのは山々だよ。だけど、透子の受験が間近の今はそうはいかない。


「どうだ、問題は解けたか……って、何をサボってるんだよ」
「わっ! あ、明人くん。戻って来るのが早くない?」
 台所での用事を済ませて目的の部屋へと戻ると、机にぺたりと伏せて手持無沙汰にシャーペンを弄っているところを発見した。
「紅茶を淹れに行ってただけなんだから、こんなもんだろ」
 持っていたマグカップの一つを手渡すと、ありがとうと言いながら両手で受け取る。こちらを見上げた瞳は何かを言いたげで、どこか不安げな色を醸し出しているんだ。
「どうしたんだ、課題が難しいのか?」
「ううん、そうじゃないの。あのね……」
 酷く言い渋っているので、正面に向き合う。すると、徐々に俯いてしまった顔。
 何やら悩んでいる彼女を目の前にして、俯いたことによって長さが強調された睫毛に女性らしさを感じてしまう自分に呆れてしまうな。
 しかし、もうすぐ高校生になろうとしている透子に、今までは眠っていた魅力を感じているのは俺だけじゃないとの事実を知った。
「今日、学校でクラスメイトの男の子に告白されたの」
 口にし辛そうに伝えられた内容に、胸の奥に捻られるような感覚が生まれる。
 何かを言わなければいけない。どうにかして反応をしなければ会話にならない。
 じゃあ、どんな言葉を掛けるんだ? 一般的には『おめでとう』や『どんな人なんだ?』などが相応しいんだろうけど、そんなことは絶対に口にしたくない。
 歳の差があっても、今は家庭教師と言う名目で傍にいるとしても。俺は透子をずっと見守って来た。子供の頃から、今までずっと。
 そして――もう立派に、一つの想いは成長しきっているんだから。
「……で、付き合うことにしたのか?」
 どうにか絞り出した声の冒頭は掠れていて、とても格好悪い。それでも一番知りたくて気になる点を問うと、頭を勢い良く左右に振りながら否定する。
「付き合う訳がないじゃない! 告白してくれた理由を聞くと『可愛いから』なんて言うのよ。可愛いと言ってもらえると嬉しいけど、でもそんなの本当に好きな訳じゃないし。私の上辺しか見ていない証拠だし……」
 断ったとの返答を聞けて、緊張が一気に解けていく。
 とは言え、年々可愛さに加えて女性らしさを持ち備えていくから、変な男を近付けてしまうのが心配なんだ。

 俺は透子の恋人じゃない。そんなことは誰に言われなくても知っている。
 だけど、他の男に近付かれたくない。好きでもない奴に可愛いと言われて、少しでも頬を染めるなよと言いたい。
 お前のことを誰よりも一番近くで見守っているのは俺なんだって、思い切り抱き締めて分からせたい。この両腕の中に捕えてしまいたいと訴えかけてくる欲望を制するために、力一杯の拳を作ろう。
 なぁ、理解しているって自分で言ったよな? 透子は俺の彼女じゃないんだってこと。
 だったら抱き締めてはいけない。そんなことをしてしまうと、全ての感情を伝えてしまうから……。

 どっぷりと思考の底へと沈み込んでいたものの、
「男の人は、外見だけで女の子を好きになるのかなぁ」
 そんな俺をここへ引き戻したのは、どこか不満げに呟かれた一言だった。
 マグカップに唇を寄せながら、軽い溜め息を漏らすものだからほのかに移動する湯気。
「外見が好みだったから告白したなら、性格や考え方は考慮していないと言うことでしょ? パッと見で好きだなんて言われても、全然中身が無くて、むしろ寂しくなるわ」
「考え方は人それぞれだけど、俺は外見も内面も含めて好きになるよ」
 性格よりも外見重視な人もいるだろう。魅力溢れる笑顔よりも優しい心に惹かれる人もいるだろう。
 それらを踏まえた上で自分の意見を述べた途端、戸惑ったように少しだけ大きくさせた目と視線がぶつかった。どこか落ち着かなさそうな様子で、改めて姿勢を正してから、こんなことを聞いて来たんだ。
「あ、明人くんはどんな女の子が好みなの?」
「好みと言うか、好きなのは透子だけだよ」
 ……なんて一言が言えたなら、どれだけ楽だろう。言えない。今はまだ。
「そうだなぁ。年下で可愛くて、でも芯はしっかりしてて、一緒にいて落ち着ける子が好きかな」
 なぁ、分かってる? 俺が言っているのは全部、透子。お前のことなんだよ。
 もしもこの想いを伝えられる日が来たなら、いつもの可愛い笑顔を見せながら頷いて欲しい……。
 遠い未来へと抱いた、微かな希望。大人になった透子を想像しただけで優しい気持ちになれて、頬がほころぶのを自覚したのに。
「それって、泪ちゃんのこと?」
「……は?」
 想像していなかった名前が飛び出してきて、思い切り拍子抜けてしまった。
「明人くんと泪ちゃんは相性抜群じゃない。それに泪ちゃんは明人くんより年下で可愛いし、強いし。だから……」
「だから、じゃないだろ。あいつは恋愛対象外だ!」
「お似合いなのに、どうして? あ、尻に敷かれちゃうから?」
「お前なぁ……!」
 大人をからかうので、髪をわしゃわしゃと乱してやると「やめてー」と言いながらも笑う。
 ほら。その無防備で無邪気な笑顔を見る度に、成長していって頭打ちを知らない感情。
 窓の外では相変わらず雪が降り続いているけれど、好きな人といると心は温かくて。透子にとっても俺がそうであればいいのに。

「ねぇ、雪が桜に替わったら泪ちゃんと三人でお花見に行こうね」
「あぁ。ただ、それには透子が高校に合格しなきゃな。せっかくのお花見が涙の桜になったら悲しいもんな」
「どうしてそう言うことを言うのよ! そうならないために、明人くんに勉強を教えてもらっているんじゃない」
「だったらほら、さっさと問題を解きなさい。制限時間は五分です」
「もう。勉強のことになった途端、厳しくなるんだから……」
 ふてくされながら、紅茶を一口飲んだ後は素直に課題に取り向かう。
 なぁ、透子。いつか、願いが叶うなら。
 お前の耳元で『可愛い』を唱えていい男は俺だけでいたいんだよ……。



 あれから幾度の雪と桜が入れ替わって、どれだけの時が過ぎ去ったんだろう?

 歳を重ねることが無くなった今、日々の仕事に追われて過去を振り返る時間さえ惜しい。
 だからこそ、先ほど部屋を訪ねて来たコーリが、
「お手伝いをするね」
 と言って、書類の整理を始めてくれたのは助かるし感謝しよう。
 ただ、どことなく嬉しそうに口元を緩めながら、音符が飛び跳ねていそうなほどに楽しそうにしているのはどうしてなんだ?
「コーリ。ご機嫌だけど、何かあったのか?」
 俺の質問を受けて、くるりと振り返って見せたのは一段と嬉しそうな笑顔。
「レインとユミとね、下の世界の桜を見て来たの。一面が薄紅色で包まれていて、本当に綺麗だったわ」
「それだけか? すごく嬉しそうな顔をしてるからさ」
「あー、下の世界の友達に可愛いって言ってもらえたの。それで、かな?」
 さらりと言ってのけたのは、俺にやきもちを妬かせたいからか? そうですか。ならば盛大に妬かせてもらいましょう。
 かつては想うだけで終わってしまったけれど、死を迎えてから結ばれることが許された。
 あの時は本音を押し込めて何でも無いふりをしていられたけれど、今は違う。妬く資格があるんだから。

 がたん、と椅子を引いて、歩み寄ると明らかに戸惑っている。
「あ、明人くん。どうしたの?」
「可愛いって言われて喜んでるんだ? 昔は可愛いだけで告白されても嬉しくないって言ってたのになぁ」
 にっこりと笑いながら威圧すると、上目遣いで見上げる。そんな顔も、余裕がなくなった途端に生前の名前で呼ぶのも。苛めたくなるだろ。
「あ、あの、違うのよ! その子は女の子なの。私、ユミにしっかりしてるとかは言われたことがあるけど、泪ちゃん以外の同性に可愛いと言ってもらえたのはあんまりなくて。だから……!」
 透子を喜ばせていたのは女の子? ……そうか、なら許そう。
 でも、慌てる様子があまりに可愛過ぎるから、あの時は伸ばすのを諦めた両腕で強く抱き締める。するとおずおずとしながらも抱き返してくれたので、それが嬉しくて微笑みが零れる。
「明人くんともお花見をしたいから、少しでも早くお仕事が片付くようにと思ってお手伝いに来たのよ」
「ありがとな。でも、この調子だと夜になるかも知れないけどいいか?」
「うん、夜桜も綺麗だよ」
 身体を放して正面から覗くと、あの時と同じようにふっと浮かべる無防備な笑顔。
 俺だけが独占出来る可愛い人にそっと口づけると、頬が桜色に染まった。



~おまけ 下の世界でこんなことがありました~

 お花見をしに来たと言った死神三人。
 レインとユミは相変わらず仲が良くて、見ているこちらが照れてしまうくらい。
 そんな二人を間近で見ていて、コーリは寂しくないのかなと思ったのが伝わったのか、ユミが教えてくれたんだ。
「コーリさんの恋人は死神達を取りまとめるお偉い方なので、なかなか一緒にいられる時間が取れないんです」
「へぇ……。それは寂しいね」
「うん、まぁ。だけど彼の仕事はとても大切だから、仕方がないわ。本音を言えばレインとユミみたいに、もっと同じ時間を過ごしたいけれどね」
 大人としての意見で彼には仕事を優先してもらわなければ、と言っているのに、唇を尖らせて恋人としての意見をも述べる様子に口元が勝手に緩むんだ。
「コーリってば可愛いね」
「え……? 六耀、何て言ったの?」
「コーリは可愛いと言ったんだよ。君の恋人に、こんなにも可愛い人を手放しておいたら誰かに盗られてしまうよ、ってやんわり忠告してあげたいくらいだもん」
「やだ、やめてよ。か、可愛いなんて言われ慣れてないから恥ずかしい……!」
 真っ赤になった両頬を手で隠す仕草も、本当に可愛い。照れるコーリに見惚れて、こちらまで笑顔が零れた時だった。
 後ろからそっと抱き締められる感覚。何事かと思うよりも早く、視界を掠めた白髪のおかげで状況を把握する。
「と、時雨? レイン達が見ている前で何をするんだよ。放せよ!」
「いや、だって今の六耀の笑顔がめちゃくちゃ可愛かったからさ。そんなお前を手放してたら、誰かに盗られるかも知れないし?」
 解放を求めてもがけばもがくほど、込められる腕の力。その声音は何やら嬉しそうで、僕の背筋には冷や汗しか流れない。
 へたれな時雨がこう言うことをしてくる時は、大抵本気だから敵わないんだよ……!

「じゃあ、私達はそろそろお暇しようかしら」
「えっ、ちょ、待って! もうちょっとゆっくりお花見をしていったらどうかな。せめて時雨が僕を放すまで!」
 助けを求めて必死に伸ばした手を、優しく掴んでくれたコーリ。良かった、とほっと一息つこうとしたのに、
「ねぇ、六耀。あなたは確か大きな魔法を使えるんだったよね?」
「え? あぁ……、うん」
「時雨を振り払うためにその魔法を使っちゃ駄目よ。そんなことをすると爆風で桜が散っちゃうからね」
「……っ! どうしてそんなことを言うのさ。コーリの意地悪!」
 さっきまでの照れた笑顔はどこへやら。ほんのり悪戯っぽさを含ませた表情で「六耀ってば可愛い」なんて、僕が言った言葉をそのまま返されるんだ。
 あぁ、もう。死神として長い時間を生きているコーリには敵いそうにないなぁ……。



※感想とお礼
 今年も書いて頂けるとお聞きしてから、とっても楽しみにしていました♪ が、頂いた後は何故か私の予定が立て込んでしまい……おかげでこちらに飾るのが遅くなってしまいました、すみませんm(_ _)m
 では、感想行きます!

 時期は透子が中学三年の冬、受験直前ですね。勝手知ったる他人の家で、明人が透子の分の紅茶まで淹れてきてるのが何だか微笑ましいです(笑)
 透子の悩み事を聞いて、確か以前にそんな拍手SS書いたような……? と思って探したら、10/20 田村草 「あなただけ」でした。それはさておき。
 透子がクラスメイトに告白されたと知って、心中で葛藤する明人が楽しいです。ふふふ~、一応未成年の透子には手ぇ出せないものね~。弾みで気持ちを伝えてしまえば、そこからはもう止まらなくなるのが目に見えてるしね!(とはいえ今は、ヨウの尋常じゃない仕事量に邪魔されて、二人の時間なんて無きに等しいけれど)歯がゆかっただろうなぁ、この時の明人……。で、付き合うわけがない、と聞いてめちゃめちゃホッとしてるのが可愛いです♪ 抱き締めてはいけない、なんてそんな事を必死で考えて……どれだけ透子が大事なのかが良く解ります。
 透子の質問に、「好きなのは透子だけだよ」と答えられない明人が、切なくなりました。だって、この言葉を告げられるのは、ずっとずっと後のことですから。えーっと、少なくとも4年後?? ……自分で書いておきながら何だけど、長いなぁ。
 いつか受け入れられることを想像して幸せな明人に落とされる、透子の勘違いという名の爆弾に笑いました。うん、泪花はないから! 絶対に!
 でも、透子にとっては、泪花は大好きな「お姉ちゃん」で、自分よりも年上で、明人の隣に並んでも遜色なくて、そして透子自身にとって憧れの女の子だったから……それは死神となった今でも変わらなくて。
 だから光梨は咲花を「ショウカちゃん」とは呼ばないのかも知れません(……呼ばせ方に私が迷っていたのもありますが。無理矢理呼ばせるとしたら「サキちゃん」かな?)。ヨウはヨウで立場も、関係性も変わっているから悩まなかったんですけど(笑)
 勉強には厳しい明人くん。こらこらこらっ、仮にも受験生にそんな事言っちゃダメでしょー! と、心の中で突っ込みました。まったくもー。
 時は変わって、死神になった二人。「可愛い」と言われてご機嫌な光梨に陽が嫉妬(笑)うん、その権利はあるけれど。あるけど陽、威圧したら光梨、逃げ出しかねないかもよ? ……逃がさないとは思うけど。
 「可愛い」と言ったのが女の子だと知った後、陽が伸ばした腕の中に大人しく収まる光梨。私の文章ではなかなか感じられない「幸せ」を見たような気がして、私も温かい気持ちになりました。
 おまけには、虹霞の六耀さんと時雨さんが登場してくださいました。
 六耀さんの光梨に対する「可愛い」発言は、陽を嫉妬させましたけど、時雨さんまで焦らせちゃったんですね♪ 強気な時雨さんもかっこいいです! そこから抜け出そうと必死な六耀さんも可愛い(笑)ついでに六耀さんに意地悪する光梨の、にっこり笑顔が脳裏に浮かびました……。そうだよね、馬に蹴られたくないよね光梨! と、納得してみたり。
 さぁ、六耀さんは時雨さんの腕から逃れられたのでしょうか(笑)陽と光梨の夜桜見物よりも、そっちの方が気になった私です(笑)

 それでは朱音さん、素敵なSSをありがとうございました!
 以下、おまけSSです。以前頂いた「美しさは桜に預けて」のおまけSSともちょこっとリンクしてます。

 六耀や時雨と別れ、その後にヨウと桜が見たいからと、彼の仕事を手伝ったはいいものの。仕事が終わった後に、ヨウは他の死神に呼ばれてしまった。
『先に行ってろよ、後から行くから』
『でも』
 どこの桜を見に行くか、決めていないのに――――。そう告げようとしたコーリに、ヨウは笑った。
『中学校』
 ただ一言だけを呟いて、けれど、その一言だけで充分だった。明人も、泪花も、そして透子も卒業した中学校。そこには樹齢百年を超える大きな桜の木がある。
 言われたまま、コーリは先に桜の元へと訪れ、その幹にそっと手を触れさせた。
「……どれくらいぶり、かな」
 月明かりに照らされて、幻想的な姿で佇む桜。コツン、と額を寄せて、かつての想い出に瞳を閉じる。
 明人が制服を着ていた時は、透子はまだ幼児だった。泪花が制服を着た時は、いつか己が着ることになるであろうそれに憧れを抱いた。
 中学校の入学式が終わった後、泪花とここではしゃいでいたら明人が来て。高校に入った後、卒業アルバムを取りに訪れた時も、明人と会った。
(……そういえば)
 あの時、桜の方を向いててと言われた空白の時間に、結局明人は何をしたのだろう。あの時は勘違いをして、アルバムに悪戯書きでもしたのかと思っていたのだけれど、帰宅してから開いたアルバムには、どこもおかしいところなど無かったのだ。
(明人くんが来たら、聞いてみようかな)
 そう考えた時、コーリの亜麻色の髪を攫うように、まだ冷たさを含む風が強く吹いて――――少しだけ、髪先が引っ張られたような気がした。
「……あの時みたいだな」
「……ヨウくん……?」
 聞こえた穏やかな声にゆっくりと振り向くと、彼の指先に囚われた自分の髪に、ヨウがそっと口づけていた。
「な……っ!?」
 何をしているのかと問いかけようとしたけれど、頬が熱くて、うまく唇が動かない。ヨウはそんなコーリを見てにこりと笑い、はらりとコーリの髪を指先から解放した。
「覚えてるか? お前が高校入学した後。ここで、お前がお礼したいって言い出して」
「……え……。じゃ、じゃああの時も、同じ事……っ!?」
 うん、と事も無げに頷くヨウを見て、コーリはますます頬が熱くなるのを自覚した。思わず両手で顔を隠して俯こうとすれば、それさえも見透かしたヨウの胸に抱き締められていた。
「……何でお前が照れてるんだ?」
「だ、だって……っ!」
 くすくす、余裕綽々の声音で笑うヨウが、落ち着けと言わんばかりにを撫でてくるけれど、コーリはそれどころではなかった。
(そんな事されてて、何で気付かなかったの私……っ!)
 あの時には既に好きだった人に触れられて、よく平然としていられたものだと思ってしまう。早鐘を打つ鼓動を必死で宥めながら、ゆっくり呼吸をしようと頑張るコーリは、次の瞬間告げられた彼の言葉に身を固くした。
「……好きだよ」
「……っ!」
 抱き締めていた腕を解かれて――――月明かりの中ではあまりよく見えないけれど、きっと穏やかな表情をしているのだろう――――見つめられた。
「あの時にはもう、透子が好きだった」
 あの頃、ここでは決して告げられなかった想いが今、時を超えて紡がれる。
「……私、だって……」
 すき、とコーリが言葉にする前に、優しく唇が塞がれて。
「……それを聞くのは、俺だけで良いから」
「え?」
「出て来いよ、咲花」
 再びヨウの腕の中に包まれた後、彼はもう一人の幼なじみの名を呼んだ。
「あーあ、透子の告白聞きたかったのに」
「誰が聞かせるか」
 笑いながら頭上で交わされる二人の会話に、コーリは抱き締められているのが何だか恥ずかしくて、身を捩る。
「る、泪ちゃ……っ。明人くん、離して~っ」
「気にしなくていいわよ、透子?」
「そうそう」
「恥ずかしいんだってば……」
 コーリがそう呟けば、ヨウとショウカは二人で声を合わせて「何を今更」と笑う。こんな時だけ息が合う二人に、コーリはヨウの腕に抱かれたまま、小さく笑った。



 書いて下さった朱音さまのサイトはこちら → 「空想 i
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