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1/28 バラ<黄> 「薄れゆく愛」

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1/28 バラ<黄> 「薄れゆく愛」
LOVE SO LIFE 政二×詩春



 解っていた。意識させなければ、呆気ないほど簡単に、父親の存在が消えることは。

「ごめんな……」

 どんな人間であっても、父親であることは変わりがない。政二にとっても、父が父である事実は変わらないのだから。
 穏やかに眠る二人の頬を撫でながら悔いるように謝る政二の背中を見ていた詩春は、その空間を邪魔せぬように息を詰めたけれど。

「中村さん?」
「あ……すみません」

 気配で気づかれてしまったようだ。呼び掛けられて、詩春はおずおずと姿を現した。
 双子を眺める政二の隣にそっと座り、けれど何を言えばいいのか解らずに黙り込む。

「……薄れて行けばいいと、思ったんだ」

 ぽつり、と政二が呟いた。

「兄貴がいなくなってもう1年以上経つし、覚えてさえいなければ後で悲しむこともないんじゃないか、……って」

 政二は、父の存在を認識していたから。家族なんて血の繋がりだけだとどんなに自分に言い聞かせてもやはり、父に母以外の女性がいる事実は、子供心にも悲しかった。
 茜と葵にそんな思いをさせるくらいなら、最初からいなかった事になればいいと……。

「……勝手、だよな」

 この子達を正式に引き取り、父親になる覚悟もないのに、本当の父親の存在を消そうとするなんて。
 自嘲してうなだれる政二の姿に、詩春は「違う」と思った。
 彼は、覚悟がないわけではない。ただ────。

「……松永さんは、待ってるんじゃないですか?」
「待って、る?」
「お兄さんの事を、です」
「もう、諦めてるよ」
「そうしようと、してるんじゃないでしょうか……。だって私、ずっと見てきました。茜ちゃんと葵くんを大切にしてる松永さんを」

 きっと、茜と葵が誰にも引き取られる事がなかったとしたら、彼は僅かな躊躇いのあとに「父親」になる覚悟をしただろう。そう詩春に思わせるほど、彼は双子を大切にしている。

「どこかで、信じていて……。でも、今お兄さんがいらっしゃらない事も事実で、だから、あの……」

 紡いでいた言葉が不意に途切れたのは、彼の頭が詩春の肩に、とん、と重みを加えたからだ。

「ま、松永さん……?」
「……戻って、来るかな」

 兄貴、と囁くような小さな期待を込めた言葉。

「戻ってらっしゃる事を、願いましょう?」

 茜と葵の父親が戻って来る日を、彼の傍で待ち続けることは出来なくても。
 願うことは、出来るから。

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