Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

暁のヨナ 闇夜の二人

暁のヨナ 目次へ 二次創作Index

『……今度は、頭突きしないで下さいよ』  

→ おまけというか途中から別なVer。
どっちにしようか迷ったので両方公開してみました。

※携帯からだと飛べないようです。スクロールでご覧下さい。



 穏やかな水のせせらぎを耳にしながら、ヨナはそっと瞳を閉じる。
 つい昨日の事なのに、どこか遠い過去のように思えてしまう。スウォンを目の前にしたハクの、あの姿はまだ瞳に焼き付いているというのに。
 スウォンに向かって伸ばされた手。あいつだけは、という言葉の中に、どんな想いがあったのだろうか。

「……本当に、殺すつもりだった……? 彼を……」

 囁きは、思ったよりもその場に響き、静寂の中に溶ける。この問いに答える者は、いないはずだったのに。

「そうですよ」
「ハク?」

 天幕の中で休んでいたはずのハクが、夜闇の中から姿を現した。僅かな月明かりに照らされたその表情は、酷薄に笑っている。でもそれは、ヨナにはどこか歪に見えた。

「殺すつもりでしたよ、俺は」
「うそ」

 隣に座り込んだハクの言葉に、ヨナは反射的に言葉を返す。そう、反射的に彼の言葉を否定したのだ。考えて出た言葉ではない。けれど、……それが正解のように思えた。
 だから、何も言わずに見つめて来るハクから、瞳を決して逸らさなかった。
 見つめ合って、数秒後。先に息を吐いたのは、ハクの方だった。

「俺にも、解りません」
「え……」

 スウォンを前にした時、ハクはただ、抑えきれぬ様々な感情が溢れるままに行動に移した。その時、己の中にどんな感情が渦巻いていたのか、自分でさえ把握しきれない。怒り、悲しみ、空しさ、淋しさ、後悔……どれもが正解で、どれもが違うように思える。言葉に出来ない感情の渦に流されるまま、手を伸ばし。
 伸ばした手が、もしも彼の体を捕らえていたなら。ハクはその手を、どうしようとしたのだろう。
 その喉を絞めようとした? それとも拳で殴りかかった? それとも……。
 黙り込んでしまったハクに、それ以上問いかけることが出来ずに、ヨナは、右手を握りしめるハクの姿を黙って見ていた。

「あんたは、何故だ?」
「何故?」
「俺を止めたのは……あいつを、殺されたくなかったからか」

 殺されたくなかった? スウォンを。父の敵である彼を。だから、ハクを止めた?

「……違うわ」

 そう、違う。確かにそれもあると思う、けれど。

「ハクに、スウォンを殺させたくなかったのよ」
「同じ事じゃないですか」
「違うわよ。……上手く言葉に出来ないけれど、違う」

 互いに認め合い、とても仲が良かったハクとスウォン。スウォンの心がいつから離れてしまったのかは解らないけれど、あの時間がすべて偽りだったとは思えない。
 友達同士で、殺し合わねばならないなんて……甘い戯れ言と解っていても、綺麗事だと解っていても。そんな事は、させたくなかった。

「……いつか……ハク、言ってたわよね。迷う、って」
『あんただけじゃない。俺だって、……今、あいつを殺せといわれたら、多分、……迷う』

 夢が怖いと告げたあの日、簪を捨てられるかと聞かれ、言葉に詰まったヨナに、ハクはそう言ってくれたのだ。

「……今も、そうでしょう?」
「それは」
「だったら、……どんな形であっても、後悔すると思ったの」

 生半な覚悟で、衝動のままにスウォンを殺しても。
 迷いに囚われて、目の前のスウォンを殺せなくても。

「どっちの後悔が重いのか、私には解らない。でも……」

 あんなに血を流して、それでも目の前のスウォンに辿り着く為に、ジェハやキジャを振り払っていったハクを。

「ハクを、守りたかった……っ!」

 抱えた膝に瞼を押しつけて、知らず溢れた涙をハクから隠す。
 スウォンの命じゃない。ヨナが守りたかったのは、ハクの心だ。
 守れたかは解らない。本当は自分自身が迷っていたから、ハクを止めるのが遅くなったのかも知れない。でも、その想いだけは、真実ほんとうだから。

「そういう事、……言うな……っ」
「……っ、ハク?」

 切なげな声が聞こえたと思った瞬間、膝を抱えていたはずの腕を取られて、怪我をしているはずなのに力強い腕に引かれ、その胸に抱かれていた。
 息が出来なくなる。鼓動が速くなる。……ハクしか、感じられなくなる。
 そっと、ハクを包み込むように、細い腕を彼の背中に回せば、彼の鼓動がより大きく聞こえて。
 うなじに彼の手が触れて、わずかに体が引き離される。暗闇に慣れた瞳は、ハクの顔をおぼろげに映し出す。

(優しい表情かお……)

 その優しい顔を見つめていたせいか、それとも夜の帳のせいか、彼の顔がものすごく近くにあると気付いたのは、

「……今度は、頭突きしないで下さいよ」

 苦笑を含んだ声の、その吐息が、ヨナの唇に触れた時だった。

「ハ、ク……?」

 音もなく、ハクの唇が触れていったのは、夜の静けさに冷え切った頬。柔らかな温もりが離れていく。

「……迷いは、断ち切ります」
「……え……」

 再びその腕の中に引き戻され、耳元でハクの力強い声が告げる。

「どんな形であっても……姫様が、自分の道を決めるまでには」

 ヨナが例えどんな道を選んだとしても。もしも、城に還る事を望まないとしても。スウォンに対しての、自分の心を決める。ヨナの傍にいる為に。
 そんなハクの想いを知らず、ヨナも答えを返す。

「そうね……。私も、そうするわ」

 幾千もの未来から、自らの歩む道を決める。決めればきっと、ハクに自由を返す事が出来るから。
 互いの口に出さぬ想いがすれ違っている事に気付かぬまま、二人は互いの存在だけを感じていた。


暁のヨナ 目次


おまけ~ 途中からの別Ver。お手数ですが反転してどうぞ。

(優しい表情かお……)

 その優しい顔を見つめていたせいか、それとも夜の帳のせいか、彼の顔がものすごく近くにあると気付いたのは、

「……今度は、頭突きしないで下さいよ」

 苦笑を含んだ声の、その吐息が、ヨナの唇に触れた時だった。

「ハ、ク……っ!」

 唇に触れる、柔らかな温もり。突然の口づけに身を引こうとするけれど、いつの間にか後頭部に回った手が、それを許してくれなかった。
 ただ、触れているだけ。それなのに、顔は沸騰しそうに熱いのが解る。抱き締められた時とは比にならないくらいに、鼓動が速い。
 ほぼ条件反射で、閉じてしまった瞳を開けた瞬間に離れた唇は、角度を変えて重ねられる。
 どうやって息をすればいいのか解らない。だんだんと苦しくなってきて、回した細腕で彼の背中を叩く。

「……こういう時は、鼻で息をすればいいんですよ」
「そ、んな事、急に、言われても……っ」

 余裕綽々のいつもの表情で楽しそうに告げられて、ヨナは何だか悔しくなる。

「……そうよね、ハクはこういうの、慣れてるわよね」
「……はい?」
「ジェハと会った時だって、女の子に囲まれてたし」
「あれはタレ目が勝手に連れて行っただけで俺は何も」
「水麗でだって」
「ありゃ調査でしょうが」
「でも楽しそうだったってジェハが言っ……」

 言葉は途中で遮られ、触れた唇は音も立てずに離れていく。

「……妬いてるのか?」
「違うわよっ」

 はははっ、と本当に楽しそうに笑うハクの声が嬉しくて、ヨナの瞳からまた涙が零れた。

「姫さん……?」
「……嬉しいのに、涙が出るなんて、変ね」
「いいんですよ。悲しい涙よりは」

 指先で涙を拭われて、今度はそっと、真綿を扱うかのように抱き締められる。

「……迷いは、断ち切ります」
「……え……」
「どんな形であっても……俺が、姫様の傍にいる為に」
「……ありがとう、ハク」

 二人で、共にいる為に。生き延びる為に。今はただ、互いの温もりを手放さぬように……。


暁のヨナ 目次
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。