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暁のヨナ 見えない本音

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4周年のアンケートで、「四龍×ヨナ」というのがあって。
ジェハかシンアでというご希望だったので、書きやすいジェハの方で書いてみました。
が、単なるジェハ+ヨナで、最後は結局ハクヨナになってしまったような(笑)

※コミック未収録のネタバレがあります。ご注意下さい。

『ハクを止められるとすれば、君だけだ』



 水の部族の一件が終わって、ふと思った事がある。
 ヨナにはハクがいてくれる。けれど――――。

(スウォン……あなたの傍に、誰か心を許せる人はいるの……?)

 何故そんな事を思ったのかは自分でも解らない。慌てて振り払おうとしても、一度浮かんでしまった考えは沈んでくれなかった。

「……ハクにはとてもこんな事、言えないわね……」
「なら、僕が聞こうか?」

 ぽつり、呟いた声に答えが返ってきて、ヨナは驚いて背後を振り返った。

「ジェハ……お帰りなさい」

 ユンを背に乗せて、近くの市場へ行っていたジェハが、いつもの笑顔を浮かべてそこに佇んでいた。

「散歩に行ったきり戻らないって、ハクが心配していたよ。ハクも探しに来ようとしてたけど、跳ぶ僕の方が早く見つけられるからね」
「そう……でも、もう少しだけ」
「いいよ。帰りは跳べばすぐだからね」

 そう笑ったジェハが、ヨナの隣に音も立てずに座り込んだ。

「それで? ハクには言えないような事って?」
「……ジェハ、いたずら顔になってない?」
「やだな、気のせいだよ」

 もしハクの弱みでもぽろっとヨナの口から出たのならば、からかうネタにはなるだろうと思ったのは確かだけれど、ヨナの様子からはそんな単純な話ではない事が伺えた。それでもジェハがいたずら顔のように笑って見せたのは、彼女の躊躇いが少しでも払拭出来るならばと思ったからだ。
 ヨナは膝を両腕で抱えて、呟くように言葉を紡いだ。

「……あの人に、会ったでしょう……?」
「……現国王サマかい?」
「うん。……会ったら、ね」

 憎しみも、怒りも、不信感もある中で。仮面を貼り付けたような彼の表情と、……触れた手の温もりが……ヨナを戦わせまいとしている事が解ってしまったから。だからこそヨナは意固地になって、後からゼノに宥められてしまったのだけれど。

「あの人の本音は、どこにあるのかなと思ったの。……もしかしたら、私やハクにさえ言わなかったように、心の奥底に一人で抱え込んでるのかも知れないって」

 ジュドも、グンテ将軍もスウォンの傍にはいるけれど、彼らはあくまでも臣下だ。王が臣下に対して弱音を吐く事は許されない。もちろんスウォンは、そんな事は覚悟の上で王になったのだと思う。

「……私には、ハクがいてくれるわ。あなた達も、ユンも……でも」
「……心を許せる人が、彼にはいないかも知れないって?」
「…………うん」

 ジェハの問いかけに、ヨナは少しの沈黙を置いて頷いた膝を抱えていた腕に口元を沈めて、そっと目を閉じる。

「……それで、ヨナちゃんはどうしたいと思ったんだい?」
「……どうにも出来ない」

 だって、彼の考えている事なんて全然知らなかった。スウォンがこの国の行く末を案じている事も、ユホンを殺したのが父王だという事実も、ヨナどころかハクだって知らなかったのだ。
 彼に頼られる事がなかった自分達に、出来る事なんて何もない。

「……だから、……っ」
「悔しい?」

 ジェハの言葉に、ハッと瞳を開く。そして……痛みを堪えるように、強くまた瞳を閉じた。

(そう、悔しい――――)

 解ってる、頼れるはずがなかった事は。解って、いるのだけれど。父に仕えていたハクに、何も言えなかったのも解るけれど。

「……ハクが、あの人に対峙した時にね、思ったの。もしかしたらハクも……悔しかったのかも知れない……」

 あの激しい怒りの中で感じた、確かな怒りと、深い深い悲しみと。己の不甲斐なさと、後悔……。様々な感情が入り乱れるハクの空気に、彼をどう止めて良いか解らなくなってしまった。

「キジャくんが、言っていたよ。次はもう、止めないと」
「え……」
「僕たちには、君たちの想いは推し量れない。だから……ハクを止められるとすれば、君だけだよ」

 スウォンも、ハクも、傷つけたくないと思うのならば。恐らくその二人を止める事が出来るのはヨナの存在だけだ。

「そして、その思いを分かち合えるのも、ハクだけだ。……そうだろう?」

 ジェハがそう、優しい声音で問いかければ、ヨナの小さな頭はこくんと頷く。素直なその反応に、ジェハはそっと心の中で苦笑すると、おもむろに立ち上がった。

「さて、じゃあ僕は先に帰るかな」
「え? 一緒に帰るのではないの?」
「うん、さすがにハクまで抱えて跳べないから」
「え」

 ジェハの言葉に促されて振り向くと、小さくハクの姿が見えた。

「ハクと一緒に帰っておいで」

 ぽん、と肩を叩いたジェハはいつも通りに笑って、そのまま地面を蹴って跳び去った。その後ろ姿を追うように空を見上げているうちに、いつの間にかハクがそばに来ていた。

「……タレ目と何してたんですか?」
「少し、話をしていただけよ。あ……お礼、言い忘れちゃった」

 聞いてくれたおかげで、少し心が軽くなった。確かに、この想いを分け合えるとしたらハク以外にはいないだろう。でも今の彼にこんな事を話して、せっかく落ち着いた心を乱させたくない。
 ……話せない。話したく、ない。

 そんな事を考えていると、ハクがどこかふてくされたような声を出した。

「あいつに礼なんか必要ないですよ」
「もう、どうしてそういうこと言うの?」

 立ち上がり、それでも尚高い位置にあるハクを見上げながら、叱りつける母親のような口調で窘めるヨナの姿に、ハクは深い深い溜息をついた。

「……ったく、この姫さんは……」
「え、なに?」
「いえ、とっとと帰りましょうって言っただけです。ゼノが盛大に腹を鳴らして待ってますよ」
「ふふ、それは大変だわ」

 ヨナの笑いにつられるように、ハクの口元も上がる。こんな小さな言葉の掛け合いでも、今は、ハクが笑ってくれる事が嬉しい。

(……一つだけ、ジェハに言えなかった言葉があるの)

 どうしたい、と訊かれた時。もしも彼が孤独(ひとり)でいるのなら――――傍に、いたかった。
 けれど、それはきっと、……捨て切れない彼を想う気持ちが引き起こした感傷だと思う。
 そして、そのすぐ後に思い浮かんだのは、楽しそうに笑うハクの姿だった。
 ハクも、ヨナも。どうしても互いに心を全部許してはいない。それでも時々、ハクにはヨナの心など筒抜けかのように、言い当てられる時がある。
 どれだけハクの傍に入れば、ハクのように気持ちを解ることが出来るようになるだろう。

「あのね、ハク」
「何です?」
「私は、いつも傍にいるからね」
「……はい?」
「ハクが頼れるほどには強くないけど……傍にいる事は、忘れないでね」
「……それは、こっちの台詞です」

 穏やかな声音と共に、大きな手のひらがそっとヨナの赤い髪を撫でた。


暁のヨナ 目次
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