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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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虹霞~僕らの命の音~ Coming of ・・・

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 今日はいつもお世話になっている「空想 i 」 の朱音さんのお誕生日です。
 今年もまたまた虹霞を書かせて頂きました。が、今回はちょっと(いやかなり)キャラが壊れてるというか何というか……すみませんっ。
 とりあえずあまり期待せずに(ある意味での覚悟は必要ですが 笑)、続きからどうぞっ(言い逃げ)!


 城の一室で、六耀と時雨、部屋の主である桜と春雷の4人で、のんびりとお茶を飲んでいたはず、だったのに。
 瞬きをした瞬間に、周囲の景色は一変していた。
「……え」
 紅茶のカップを手にしたまま、六耀は呆けた声を出し。
「あら?」
 桜は片手をのんびりと頬に触れさせ。
「あれぇ?」
 こてん、と小首を傾げた春雷の髪が揺れ。
「何だこれ!」
 少し離れた場所から、何故か檻の中に閉じ込められた時雨の叫び声が聞こえ。
 白かったはずの天井は、白い雲がぷかぷかと浮かぶ青空に。
 ふかふかの絨毯は、一面の花畑へ。
(あ、有り得ない……)
 地平線の彼方までが花畑だなんて、現実には絶対に有り得ない。かといって夢かと問われても、夢だとは断言出来ない。感覚はしっかりあるし、足元に咲く花の質感も手触りも本物に思える。ついでにいえば、眠った覚えもないのだから。
「さっきまでは、私のお部屋、でしたよね?」
「うん、そのはず……なんだけど」
(一体何が……)
 思考に沈む前に、ふと違和感を感じて春雷と桜を見る。
「って、二人とも慌ててないね?」
「今のところ、実害はないようですし」
「魔法関係なら、リクかトキが何とかしてくれるかな~って。あれ? こんな紙あったっけ?」
 テーブルの上には、先程まではなかった一枚の紙が置かれていた。
「サクちゃん、読んで?」
「えぇと……『脱出への一番の近道。檻の中にいる者へ、その者が想う者の口づけを贈れ(場所問わず)。創造主より』……だ、そうですわ六耀さま」
「って事はこの空間は誰かの仕業ってことだよね」
「そのようですわね」
 桜の言葉が途切れると、不自然な沈黙が流れた。思考に沈んでいた六耀が顔を上げると、二人の視線はジッと六耀を見ていた。
「……何で僕を見てるのさ」
「えー、だってトキの好きな人はリクでしょ?」
「く、口づけ……って事は六耀が俺にキ」
 最後まで言わせずに、六耀が檻にいる時雨に向けて風の魔法を放った。が、それでめげる時雨ではない。
「りーくーよーうーっ!!」
 ガシャガシャと、鉄の柱が軋む音。しかし六耀は、全く反応を返さない。
「あの……六耀さま? 時雨さまが……」
「気のせいだよ、桜」
 どうやらカップに注がれた液体は、この空間に来ても変わらなかったようだ。最近の好物である、ミルクたっぷりのココアを飲みながら、にっこりと笑って告げる。すると桜は、その笑顔に気圧されたのか黙り込む。
「出ーしーてーくーれーっ!」
「……リク、トキが喚いてる、よ……?」
「気にしない気にしない」
「おいっ、六耀! 別に手とかだっていいんだぞ!? ……多分」
「嫌だ」
「額とか、髪とかでも大丈夫! ……多分」
「ウルサイ」
「げ」
 火系の初級魔法を時雨に向けて放つ。またもやまともに攻撃をくらったらしい彼は、僅かに焦げた服の臭いで咳込んでいる。
「げほっ、げほっ。り、六耀~」
「あーもう、情けない声出さないでよ」
 ココアを飲み干し、ごちそうさまと告げて席を立つ。
「六耀さま? どちらへ行かれるのです?」
「とりあえず、探検して来るよ。どこかに出口があるかもしれないし」
「ダメだっ、行くなら俺も」
「そこで喚いてるどっかの誰かさんを、檻から出す方法もあるかも知れないしね」
「だからお前が俺に……っ」
「桜、ハル。見張りよろしくね」
 時雨の言葉ははっきりきっぱり無視をして、桜と春雷に笑いかける。
「解った~、行ってらっしゃいっ」
「お気をつけ下さいませ」
 そして六耀は、目の前に広がる有り得ない光景の中を歩き始めた。
 一人になって、ずんずんと道なき道を進みながら、心の中で強く呟く。
(絶対、キ……なんてしない!)
 どうして自分がそんな事をしなければならないのだ。時雨が自分を好きなんて言うからこんな目に遭うのだと、理不尽な思いが心を掻き乱す。
 いや、今はそんなことよりも。
(それが一番の近道、だっていうなら、遠回りでも出る方法はあるって事だよね?)
 とはいえ、見るからに花だらけで何があるわけでもない。ぐるり、と視点を一周させ、試しに空を仰いでみる。と。
「きゃあああああああっ!」
「は!? え!? な、月花っ!?」
 いつものごとく奇怪な恰好をしている道化師が、ものすごい形相で空から降ってきている。
「あっ! 六耀ちゃん!? ここであったが百年目っ! ア・タ・シ・を・受け止めて~っ!」
 先程までは落下に怯えていた顔が、六耀を見つけた途端に満面の笑みに変わり、しかも両腕を差し出して来る。
「嫌だっ!!」
 断固たる拒否を示し、六耀は思い切り駆け出した。
(僕だって潰されたくないよ!)
 身長だって体重だって、彼の方があるのだ。華奢な六耀が受け止められる訳はないし、例え受け止めたとしても潰れて気絶するのがオチだ。
 数秒後、ドッゴーン! という落下音が聞こえたけれど、後ろを振り向く勇気はなかった。
(な、何なのホントにこの空間……)
 本気で夢ならばとっとと覚めて欲しい。心臓に悪すぎる。と思いながら歩き出すと、これまた突然に現れた人物が。
「……不知火?」
「おや? 六耀」
 花畑の中で一人ぽつんと、何故かおままごとセットを前にした城の主を目にして、六耀は胡乱な瞳で見つめ返した。
「……何、してるの?」
「ん? 何故かここに来た時から手元にあったのだよ。可愛いだろう?」
 おままごとセットの丸いテーブルを囲んで座っているのは、桜と六耀、そして春雷と不知火にそっくり(服までが緻密に再現されている)の人形達だった。
「……まさかと思うけど、桜の人形で『お兄様♪』とかやってないよね?」
「ハハハハハ、マサカ」
「……」
 渇いた笑いにげんなりした六耀は、徐に背後を指さした。
「まっすぐ行けば、本物の桜がいるから」
「む? そうか、ならば行くとしよう」
 すたすたすた、と歩き始めた不知火が、人形達をしっかり抱えて歩いて行ったことに気づいた六耀は、深い深いため息をついてまた歩き出す。
(何だかもう、疲れてきたなぁ……)
 この空間が誰の仕業かは解らないけれど、別に六耀だけが苦労しなければならない謂れはないはずなのだ。
 足どりが重くなり、前を見て歩くことすら億劫になってきた。
 少し休もうと、その場にころん、と横になる。青い空が、白い雲が、何故か心を穏やかにしてくれる気がする。
(いい匂い……)
 これだけの花があるのなら、普通はもっと強い匂いになるだろうに。寝転がった事で、甘くて爽やかな花の香りが身近に届いて、六耀は目を閉じた。
 しばしその匂いに包まれていると、かさり、と小さな足音が聞こえた。
「ほら六耀、口を開けて」
「え」
 優しい声にそのまま口を開けると、途端に甘酸っぱい味が口の中に広がった。
「……苺ジャム? ってことは」
 起き上がった六耀の目の前には、スプーンを口にくわえ、幸せそうな顔でにこにこと笑っている師匠がいた。のだが。
「うわっ、どんだけあるのジャム!」
「うん、みんな少しずつ味が違うんだよ」
 それもまた一興、と悦に入る妖華の背後にある大量の苺ジャムの瓶に、さすがの六耀も驚いてしまった。
「さ、六耀。一緒に食べよう」
「あ……僕、この空間から脱出する方法を……」
「ん? 脱出する必要などないだろう? こんなにたくさんの苺ジャムがある世界なのだから」
「いや、苺ジャムだけじゃ生きていけないって!」
「我は生きて行けるよ?」
「僕は無理――――って」
 せいぜい足元を隠すぐらいしかなかった背丈の花畑の中で、たった一つ、毅然とした姿勢で立つ花が、妖華の隣に忽然と現れた。
(……アガパンサス?)
 六耀の好きな花だ。小さな百合が集まるかのように咲く、青紫色の花。
 そっと手を伸ばし、触れようとした瞬間。
「触ってはダメだよ、六耀」
「どうして?」
「それが、もう一つの鍵だからね」
「じゃ、この空間を作ったのは妖華って事?」
「いや? この空間を作ったのは我でもないし月花でもないよ」
 じゃあ誰が? と首を傾げて問い掛けるよりも先に、妖華が言葉を発し――――否、それはもう妖華ではなかった。おぼろげになった輪郭は、徐々に別の形を取ろうとしている。
(僕……?)
 華奢な体、長い髪。それは自分が一番見慣れている己の姿。
「それを手折れば、この空間から現実に帰れる。でも、それを手折ったら……君は自覚しなくちゃいけないんだ」
「……自覚?」
「そう……君の、彼に対する本音をね」
 告げるもう一人の自分の声は、どこまでも優しくて、温かくて……。心の奥、頑ななまでに閉じている小さな塊に、そっと染み込んでいくようで。
「……それならもう、手遅れだよ」
(解ってる。だって何だかんだで、僕は時雨を檻から出そうとしてるんだから)
 彼が鬱陶しいのなら。傍にさえいて欲しくないのなら、そのまま檻の中でも構わないはずなのに。それは、……嫌なのだ。はっきり言葉にはしたくないけれど。
「だけど、キ……なんかしたくないし」
「え、問題そこなの?」
「そうだよ。行動になんかしたら、もうごまかせないじゃないか」
「あはは、そっか。……なら、手折ろうか」
 もう一人の自分に促され、たくさんの小さな青紫の花を支える太い茎の、一点だけ仄かに光る部分に、そっと手を伸ばすと、呆気ないほど簡単に手折れてしまった。
 そして――――……。

 ぱち、と瞬きをしたと同時に、一面の花畑は消え、見覚えのある部屋が視界に映った。
「あ。戻った」
「戻りましたわね」
「あれぇ? リク、トキにキスしてないよねぇ?」
「うう、せっかくのチャンスが……げ」
「あのまま、檻の中の方が良かったみたいだね。時雨」
 にっこりと笑って、左手にメイオンを待機させる六耀。時雨は慌てて首を左右に振る。
「しっかし、何だったんだあの空間?」
「さあ。妖華や月花が作った訳じゃなかったみたいだけど」
「それよりも、何でトキだけ檻の中だったのかなぁ。トキ、リクに何かいたずらした?」
「いやそもそも、いたずら程度で檻になんか入るかふつー!?」
「お兄様に法改正していただけば、すぐにでも入れますわよ?」
「誰が入るかっ」
 いつもの光景に、六耀は我知らず安堵した。
 自分の気持ちだけなら、まだごまかせると思ったから、あの花を手折った。行動に移したら……キスなんてしてしまったら、それが相手のどこに触れたとしてもきっと、唇から伝わってしまう。伝わってしまったらもうごまかせない。だから――――。
「だったらアタシが特製の檻を作って六耀ちゃんにプレゼントするわっ」
「どっから出て来た月花!」
「いやいや、月花。時雨くんには苺ジャムの洗礼を」
「桜、地下牢の鍵はどこにやったかな?」
 妖華に不知火までが現れて、桜の部屋はあっという間に賑やかになり。
「いい加減にしてくれーっ!」
 時雨の悲鳴が響き渡った。


~おまけ 一部始終を空から見ていた人達~

「ちょっと……六耀さんに悪い事しちゃいましたね」
「無事に戻って来られたんだし、大丈夫だろ」
「しっかし、傍迷惑なものもらったわね~」
 夢に入る魔法の粉、とやらを、食べ物を買ったオマケでもらったユミは、もうすぐ誕生日である六耀に贈ろうと言い出した。そこまでは良かったのだが、どうやら蓋が緩んでいたらしく、ぽろっと落とした弾みであっけなく蓋は外れ、六耀と時雨に降り注いだ、というわけだ。
 しかも、「夢に入る」という謳い文句はどこへやら。どうやらあの魔法の粉は、誰かの深層心理に入り込むものだったようである。
「……つーか、すっげ世界だったな。あれ、時雨の世界だろ?」
「え、六耀さんの世界じゃないの?」
「……二つがごちゃ混ぜになってる可能性もあるわよ」
「「「………………」」」
「とにかく、こんな危ないものはマスターに言って即刻販売中止にしてもらって。六耀の誕生日は後でちゃんとお祝いしましょ」
「「了解」」



※後書き(という名の言い訳)
 コンセプトはRPG。操作キャラクターは六耀さん! てってけてけてけと歩きながら数々の災難に見舞われていく主人公。そしてなるべく明るく明るく、と意識していたのですが……。ううう、やっぱり私にギャグの才能は無さそうです。
 というわけで、大元の原因はコーリ達でした。こんな傍迷惑なもの作ってるのは誰でしょうねぇ、まったく。
 最初は夢オチにするつもりだったんですが、どうにも私は「夢」を題材にするのが好きらしく。最近だと4周年記念SSもそうだし、過去のものを読み返すと他にも色々……と、書いていて気付いてしまったので、あえて夢オチから外したかった……のですけど、うまくいってるのかしら? 別空間も夢って言うのかな?
 それはさておき、「空想 i 」さまの4周年記念アンケートで、私がお聞きした質問に、「虹霞のメンバーが好きな花を教えて下さい」というのがあったのですが、その中で六耀さんの好きな花がアガパンサスだと知って、それで出来たお話です。アガパンサスは愛の花とも言われていて、花言葉は「恋の訪れ」。だからタイトルも「~の到来」という意味です。何の「到来」かは、六耀さん次第ですけどね(笑)

 ではでは、朱音さん、お誕生日おめでとうございます♪ こんなのでごめんなさい。
 あとは煮るなり焼くなりゴミ箱にぽいっと捨てるなり(笑)、お好きにどうぞです。
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