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暁のヨナ 熱に浮かされて

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 4周年記念SS第4弾・『暁のヨナ ハク×ヨナ』です。アンケートではLOVE SO LIFEを抜いて1位でした。
 甘々にしたかったけれど、無理でした(笑) 未来設定も考えたんですが、何かしっくり来なくて……。
 久しぶりに書いたので、キャラが違う可能性大です。
 では、続きからどうぞ。

 こちらはフリー配布と致しますので、お気に召した方はどうぞお持ち帰り下さい。
 ですが、著作権は放棄しておりませんので、転載される場合にはこのブログのSSである事を明記して頂ければと思います。特に報告の必要はありません。



 ハクが熱を出した。
 ついさっきまではぴんしゃんしていたというのに、宿屋の宛がった部屋に入った瞬間に崩れ落ちたのだとキジャから報告を受け、ユンが慌てて診たところ、先日受けた戦闘の傷から発熱したようだ。

「まぁ、本人も全然気付いてなかったみたいだけど……そこの緑龍、何してんの」
「え」

 ユンやヨナの視線から外れるように、そろりそろりと部屋の出口へ向かっていたジェハの手は、ドアノブにかけられている。

「ま・さ・か、病人をからかいに行くつもりじゃないよね?」

 くるり、と振り向いたユンは両手を腰に当てて、ジェハを威嚇する。

「ははははは、まさか。ほら、一応看病をね」

 と、口ではいうものの、その笑顔はどこか胡散臭い。弱っているハクなど滅多に見られないから、単なる好奇心で部屋を出て行こうとしたに違いない。
 そう確信したユンは、びしっ、と指先をジェハに向けた。

「ジェハは一日、この部屋から出るの禁止!」
「えー」
「向こうの部屋には俺とヨナが泊まるから、こっちは残り4人。3人とも、ジェハを見張っててよ! もしもジェハがこの部屋を一歩でも出た事が解ったら、全員飯抜きだからね!」

 一番年下なのに、一番強いユンの言葉に、ジェハは降参するように「解ったよ」と両手を上げ、シンアは黙然と頷き、キジャは任せろとばかりに右手を誇示し、ゼノは暢気に「りょうかーい」と告げた。

「全く……。ヨナ、俺下に行って調理場借りて、何か作ってくるから、雷獣の事見てて」
「あ、うん。解ったわ」

 そうヨナが答えた途端、ジェハが「ヨナちゃんの方が危ないような……」と呟いていた声が聞こえたけれど、何が危ないのか解らぬまま、ヨナは隣の部屋へと移動した。
 一応ノックはするけれど、眠っていたとしたら返事など出来るはずもない。キィ、となるべく音を立てないように静かに扉を開ける。

「ハク……?」

 そっと体を滑り込ませて、部屋の奥にある寝台へと近づく。ハクは仰向けのまま目を閉じていて、唇から零れる短い吐息が、体中の熱を逃がそうとしているかのようだった。
 ユンが置いたのであろう、傍にある椅子に腰掛けて、額にある白い布に手を伸ばすと、それはすっかり温くなってしまっていた。ヨナは盥に入った水の中で布を濯ぎ、ぎゅっと絞ってハクの額に乗せた。
 すると、苦しげに寄せられていた眉間のしわが、少しだけ無くなって安堵する。

「……ごめんなさい……気付かなくて」

 いつだって傍にいたのに。苦しそうな顔も、辛そうな顔も一度も見せなかったから、ヨナは何も気付かなかった。

「……言わないんだもの、ハク……」
「……言ったら、そういう顔になるでしょう」

 俯いて呟いた言葉に、不意に答えが返る。眠っているものだとばかり思っていたハクが、いつの間にかうっすらと瞳を開けていた。

「ハク……っ!」

 思わず身を乗り出して、ハクの顔を覗き込む。

「大丈夫ですよ、これくらい……」
「大丈夫だったら倒れてないでしょ!」
「……ま、そりゃそーですが。というか、こんなに熱があるとは俺も思ってなかったんで」

 がしがしと黒髪を掻き混ぜる仕草が、飄々とした表情が、あまりにもいつも通りで、ヨナは思わずホッとしてしまう。熱が下がったわけではないのに、普段通りのハクを見るだけで安心してしまうのだ。

(……だから、ハクは無理をしてしまうのよね……)

 ヨナに心配をかけないように、いつも通りであろうとして……。

「というか、姫さんは部屋から出てて下さい」
「どうして?」
「移ったら困ります」
「移らないわよ、風邪じゃなくて傷からの発熱だってユンが言ってたし」

 だから今日は一晩中看病するからね、と告げれば、盛大な溜息がハクの唇から吐き出された。

「……傍にいたら、何をするか解りませんよ」
「熱を出してる人に、何が出来るというの」

 口調はいつもと変わらないけれど、顔は赤いし、動くのだってきっと辛いはずだ。そんな状態で、一体何が出来るというのか。

「……姫さん」

 片腕で瞼を覆ったハクが、もう片方の腕を毛布から出した。

「……手、貸して下さい」
「手? いいけれど……きゃあっ!?」

 何が起きたのか、理解が遅れた。ただ、力強く腕を引かれ、肩を押されて。
 衝撃に思わず閉じた瞳を開けた時、目の前には……否、真上には、熱に浮かされたハクの瞳があった。

(……えぇと)

 背中には、敷布があるとはいえ固い寝台の感触。右手首は、強い力で握りこまれていて、下手をしたら痣になるのではなかろうか。

「あの、……ハク?」
「何ですか」
「何って、あの……。離して?」
「嫌です」

 戸惑うヨナの言葉に、ハクは間髪入れずに答えた。
 肩を押さえ付けていたハクの手が、ヨナの唇をなぞる。

「……あんたは、何も知らない」
「え……待っ、ハク……っ!」

 ハクの顔が落ちてきて、ヨナは瞬間的に瞳を閉じて体を強張らせた。唇に来るかと思っていた感触は、頬に触れ、首筋に降り。いつの間にか僅かにはだけられた鎖骨付近に、ちくりと小さな痛みが走る。

「ちょ、ハク何してるの……っ」

 やめて、と告げようとした時、ハクの黒髪が頬に触れた。背中を抱かれ、熱ったハクの体温を、重みを、全身で感じる。

「……ヨナ姫」

 熱で吐息が含まれた声が、ヨナの耳元で囁くように名を呼んで。
 ヨナの鼓動が、どくん、と跳ねた。

「……寒い」
「え」

 押さえ付ける手も、ヨナの背中を抱く腕も力強いままなのに、ハクの背中は、小さく震えていた。

「~~~もうっ、変な事したりするから! ほらっ、ちゃんと横になって」

 ヨナの体に覆い被さるハクの大きな体を、少女の力で押し返せるわけはないのだけれど、彼はすんなりとヨナから体を離して横になった。
 体は熱いのに、感覚は寒がっている。ということは、まだまだ熱は上がるということだ。
 ヨナは体を横向きにして、未だ捕われたままの右手首を掴む手に、自らの左手をそっと乗せた。

「……姫、さん?」
「……寒いなら、こうしててあげるから。だから、眠って?」

 穏やかな声で告げると、程なくしてハクの呼吸が格段に少なくなった。深い眠りに入れた証拠だ。

(早く、治ってね……)

 繋がっている互いの手に顔を寄せ、祈るように瞼を閉じて、彼の呼吸に合わせて息をしている内に、ヨナも夢の中へと誘われて行った。


 暑さを感じて、ハクはふと目を覚ました。うっすらと開けた瞼の向こうに見えるのは、瞳を閉じた、赤い髪の少女。

(……は!? 姫さん!?)

 何故ヨナが隣で眠っているのだろうかと考えて、ハクは自らの行動を思い出した。
 人の気配を感じて一度目覚めた時、寝台の横に、椅子に座ったヨナがいた。熱に冒された思考では、ヨナを前にして何を仕出かすか解らないと、彼女を別部屋に行かせようとしたのに。

『熱を出してる人に、何が出来るというの』

 あの言葉に、頭の中にある何かが、ぷつりと音を立てて切れた。
 差し出させた手首を強く握り、寝台へと引き倒し、彼女の戸惑いながらも無垢な瞳を見下ろして。……それを、自分の色に染めたくなったから――――。

(……何やってんだ、俺は)

 僅かに開けられた服の、ヨナの鎖骨に残る小さな赤い痣。数日もすれば消えてしまうであろうそれを、そっと指先でなぞる。
 本当なら、ヨナを起こすべきなのだろうけれど、目の前で健やかな寝息をたてている彼女を起こすのは忍びない。
 赤い痣を隠すようにヨナの服を直して、ハクは両腕で華奢な体を抱きしめ、再度眠りについた。


暁のヨナ 目次
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