Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

LOVE SO LIFE 高鳴る

LOVE SO LIFE 目次へ 二次創作Index

 4周年記念SS第2弾・『LOVE SO LIFE 政二×詩春』です。
 一応未来設定なので、Pass付きにしました。『かけがえのない存在ひと』で付き合い始め、直後に兄の帰還、双子は静岡に行かずに現在松永家には4人で住んでいて、詩春のバイトも継続中、という設定です。
 久しぶりに書いたので、キャラが違う可能性大です。
 では、続きからどうぞ。

 こちらはフリー配布と致しますので、お気に召した方はどうぞお持ち帰り下さい。
 ですが、著作権は放棄しておりませんので、転載される場合にはこのブログのSSである事を明記して頂ければと思います。特に報告の必要はありません。



 耕一が帰ってきた松永家は、随分と賑やかになった。

「あ! 兄貴また中村さんに作ってもらっただろ!」
「お、政二お帰り。美味しいよなー、詩春ちゃんの料理」
「兄貴に言われなくても、美味しい事ぐらい知ってる!」

 寝室に布団を敷いていて出迎えが出来なかった詩春は、政二の言葉に思わず足を止め、そして顔に熱が上るのを自覚した。

(だって、何か今の言葉……)

 褒められているのもあるけれど、それだけではなくて。詩春の事は耕一よりも政二が知っていて当然と言わんばかりの言葉が、何だかとてもくすぐったい。
 過ごした時間が時間だから、当然は当然なのだけれど。

「政二、後ろ後ろ」
「後ろ? あ」
「お、お帰りなさい……」
「た、ただいま」

 自分よりも高い位置にあるその頬が、少し赤くなっている。……詩春の自惚れでなければ、そう見える。

「えっと、松永さんもすぐ食べられますか?」
「あ、自分でやるよ」
「いえ、どうぞ先に着替えてきて下さい。温めるのに時間かかりますし」
「……ん、ありがとう」

 リビングに食事中の耕一と、テレビに夢中な双子を残し、詩春がパタパタと台所へ移動すると、政二も一緒についてきた。

「中村さんはちゃんと食べた?」
「はい、私は茜ちゃん達と一緒に先に頂きました」

 ガスコンロに火をつけて、みそ汁を温め直す詩春の耳に、呆れたような、不甲斐ないとでも言うような政二の声が届いた。

「……何か、ベビーシッターどころか家政婦状態になってるような気がする……」

 耕一が一緒に暮らすことを決めた時、政二は耕一にはっきりと告げたのだ。詩春はあくまで茜と葵の為のベビーシッターなのだから、必要以上に頼るなと。
 詩春自身にも、耕一や政二の分の食事は作らなくていいと言われたのだけれど、二人とも疲れて夜に帰ってくるのだし、それに作る手間は2人分も5人分も変わらないのだ。もちろん、味付けなどは子供達とは別にしなければならないけれど。

「私は、やれる事しかやってませんよ?」
「俺達には充分過ぎるくらいだよ。兄貴まで中村さんに甘えてるし」
「お兄さん、随分お疲れのようだったので、私が作らせてくださいって言ったんです」

 それでも最初は、耕一がやると言うので任せてみたのだけれど、疲労から来る眠気には勝てず、包丁を持つ手がものすごく危なっかしくて、詩春は耕一をリビングに追い立てたのだ。ご飯が出来るまで、仮眠していてくださいと告げて。

「そうしたら、茜ちゃんと葵くんが手伝ってくれて……だからお兄さんの事、あまり怒らないでくださいね」
「そっか。でも」
「え……」

 思いがけず近いところから政二の声が聞こえて、振り向こうとした詩春の体は、巻き付いてきた政二の腕に行動を止められた。

「ま、松永さ……」
「あんまり兄貴を甘やかしちゃダメだよ? それに……」

 その後、彼の言葉は続かなかった。一度だけ抱きしめる力が強くなったけれど、それはすぐに離れてしまう。

「着替えて来るね」
「は、はい……」

 ぽん、と頭を撫でられても、詩春は後ろを見ることが出来なかった。
 想いを伝えて付き合い始めたとは言え、二人きりになって抱きしめられたりすると未だに緊張する。
 付き合う事自体が初めてだから、どういう反応をすればいいのか解らないのもあるけれど、まず、政二の態度が前とは少し違う。
 詩春に対して優しいのは変わらない。でもその優しさがどこか甘くて、気恥ずかしくなる。
 何も意識していなければ――――例えば双子が側にいたりすれば詩春もいつも通りでいられるのだけれど……。
 今更ながらに速くなった心拍数を落ち着かせるように、詩春はその場で深呼吸を繰り返した。

「二人とも眠ったので、私そろそろお暇しますね」

 茜と葵を寝かしつけて、リビングに戻った詩春は荷物を手にし、二人で何やら話している兄弟に声をかけた。

「もうそんな時間か。ありがとう、詩春ちゃん」
「じゃ、送ってくよ」
「え、でも何かお話されてたんじゃ……?」

 耕一が帰ってきてから、夜は必ず政二が施設へと送ってくれるようになった。けれど、詩春が中断してしまった話の方は大丈夫なのだろうかと思ったが、政二は「大丈夫」と何故か憮然としている。

「行こう、中村さん」
「あ、はい」
「また明日ね。詩春ちゃん」

 詩春ちゃん、と強調して呼ばれたのは気のせいだろうか。先に玄関に向かってしまった政二を慌てて追いかける前に、詩春は「失礼します」と耕一に頭を下げた。
 玄関を出て、門のところで政二は待っていてくれた。その姿にホッとしたのも束の間、何故か政二の雰囲気がいつもと違う。

「……松永さん? どうかしました?」
「え。いや、何もないよ。行こうか」

 そっと顔を覗き込んだ詩春の言葉に、政二がハッとして表情を変えた。途端に纏う空気がいつもの穏やかな、優しいものに変わって、詩春は胸をなで下ろす。
 けれど、歩き出しても、いつもならある会話がない。会話の糸口を探そうにも、何だか言葉を口にするのが躊躇われて、しばらく無言のまま歩き続ける。

「……あのさ」
「はい?」
「兄貴、いつから中村さんを名前で呼んでるの?」

(あれ? そういえば……いつからだろ)

 言われて、初めて気付いた。最初の内こそ『中村さん』だったはずだけれど、いつの間にか『詩春ちゃん』呼びに変わっていたのだ。
 詩春自身、何の違和感も持たずに返事をしていたし、はっきり言って気にもしていなかった。

「……詩春」
「っ、え!?」

 突然、本当に何の前触れもなく名前を呼ばれ、詩春はその場で飛び上がった。

「って呼んじゃ、ダメかな」
「え、えと、あの……っ」

 一気に鼓動が速くなって、詩春はその場で立ち止まってしまった。

 どうして? 名前を呼ばれただけなのに。耕一が呼ぶ「詩春ちゃん」とも、梨生達が呼ぶ「詩春」とも違う。
 言葉は一緒。音も一緒。だけど声が、含まれる感情の色が、全然違う。
 呼ばれて嫌だったかと問われればそれはないと断言出来る。のだが……。

 どう答えればいいのか解らなくて、頭の中でぐるぐると考えていると、頬にそっと政二の指先が触れた。

「……俺だけ、『中村さん』?」

 指先に導かれるように顔を上げると、どこか淋しそうな政二の瞳とぶつかった。

「……い、嫌じゃ、ないんです……。でも」
「うん」
「す、すごい心臓ドキドキしてて……っ!」

 心臓の音が耳につく。落ち着かせようにも心臓を宥める事など出来ようはずもなくて、必死に胸に手を当ててみる。

「……ホントだ」

 体ごと引き寄せられて、いつの間にか政二の腕の中にいた。

「……すごい速い」

 背中に当てられている手から、心臓の音が伝わってしまっているらしい。もうそれだけで精一杯の詩春に気付いたのか、政二は小さく笑った。

「……じゃ、もう少しだけ『中村さん』にするよ」
「お、お願いします……」

 その結論に安堵して、鼓動が徐々に落ち着いていくのを感じていると。
 僅かに離された体の代わりに、今度は触れるだけのキスを落とされて、詩春の顔には再び熱が上り、心臓の鼓動は施設に辿り着いても消えなかった。

(し、心臓いくつあっても足りないかも……)



~おまけ・詩春が双子を寝かしつけている間の兄弟の会話~

「何で兄貴が中村さんを名前で呼んでんだよ」
「あー、茜たちが呼んでるのが移ったっぽい。……お前も呼びたいなら呼べば?」
「そういう問題じゃ……っ」
「お前、そういう固いとこ変わんないなー。付き合ってんだったら別に名前呼んだって良いだろーに」
「~~~ほっとけ」

LOVE SO LIFE 目次
スポンサーサイト

Comment

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
  • posted by
  • 2014.10/12 23:24分
  • [Edit]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。