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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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雨の弓 【祈りを込めて】

雨の弓 目次へ 一次創作Index

 4周年記念SS第1弾・『雨の弓 総メンバー』です。
 カップリングが難しかったので、とりあえず一番人気がある(らしい)コーリ視点で書いてみました。
 では、続きからどうぞ。

 こちらはフリー配布と致しますので、お気に召した方はどうぞお持ち帰り下さい。
 ですが、著作権は放棄しておりませんので、転載される場合にはこのブログのSSである事を明記して頂ければと思います。特に報告の必要はありません。



「ごめんね、お待たせー。って、何してるのレイン?」

 焼き上がったシフォンケーキを片手に乗せたまま、ひょこっとレインの部屋に顔を出すと、丸いテーブルに座るアクアとショウカがこちらを向いて、レインは何故か慌てたような表情で、ユミの口を手のひらで塞いでいた。

「な、何でもねぇよっ。それよかケーキ! 待ってたんだぞ」
「もうレイン、酷い~……。それに、コーリさんよりケーキを待ってたの?」
「だってコーリのケーキ美味しいじゃん」

 飾らないパートナーの言葉にくすくすと笑いながら、コーリはレインの部屋に足を踏み入れた。と、片手に持っていたケーキの重みが不意にかき消える。

「え」
「間に合った」

 いつの間にか目線よりも高くなってしまったケーキの皿を辿っていくと、優しい瞳が穏やかにコーリを見下ろしていた。

「ヨウくん……?」

 死神を統べる者マスターである彼は、最近いつにもまして忙しかったはずだ。コーリ達死神に割り振られていた仕事が、いつもより増えていた事からもそれは解る。

「……やっと会えた」

 ケーキを持つ手とは反対の片腕が、背後からコーリの体に回される。僅かに後ろに引き寄せられて、コーリはヨウの胸に後頭部を寄せた。

(……声が、疲れてる……)

 巻き付いた彼の腕に、労るように両手をそっと触れさせて、小さく呟いた。

「……お疲れ様」
「……ん」

 応えるようにこつん、と彼の額がコーリの頭のてっぺんに落ちてきて、一瞬だけ力を込めて抱き締められる。

「こーらっ、ヨウくん! 私達の前でイチャつかないの」

 とは言うものの、ショウカの口調はヨウやコーリを責めるものではなく、声音は少しばかりの安堵が含まれている。
 ショウカだって、仕事ばかりのヨウを心配していなかったわけではないのだ。それが解っているから、ヨウも苦笑して言い返す。

「レインとユミに比べたら可愛いもんだろ」
「ああ、確かに」
「アクアさんっ!」
「マスター、俺達を引き合いに出すのはやめてくださいよ」
「無理。お前からかうの楽しいし」
「からかうの前提ですかっ!」

 引き合いに出されたユミが顔を真っ赤にして、レインは苦虫を噛み潰した顔でヨウに進言するも、あっけらかんと拒否される。
 そんな仲間達を眺めながら近づき、空いている二つの椅子を引いて腰掛ける。すかさずショウカが伏せていたカップを返し始め、コーリはレインの手にケーキを切る為のナイフを握らせた。

「ほらレイン、好きなだけ食べていいから」
「……何か子供扱いされてる気分なんだけど」
「あら、じゃあ要らない?」
「要る」

 即答したレインに、コーリは心の中でそっと苦笑した。

「ヨウくんはコーヒーの方がいい?」
「いや、眠気覚ましに散々飲んでたから紅茶の方がいい。さんきゅ」

 レモンの輪切りを一つ乗せた紅茶がヨウの前に、ミルクポットを添えた紅茶がコーリの前に置かれ、一口飲んだ後、コーリは先程の会話を思い出した。

「そういえばさっき、何だったの? レインが慌ててたけど」
「コーリっ、話を戻すなっ」
「ああ、何でレインは『雨』を選んだかって話。コーリ知ってる?」
「え? 虹を形作る半分が雨だから、じゃなかった?」

 コーリがそう答えた途端、アクアとショウカ、そしてヨウの瞳がキラリと光った。

「ほー、虹かぁ」
「そういえば、ユミの最期の願いは虹だったよな」
「結局、惚気話なのね」

 ヨウのみならず、アクアとショウカにまでからかうように告げられ、レインは諦めたように机に突っ伏した。

「~~~いーだろ別にっ」

 本当は、ユミと交わした最期の言葉が、「虹が見たい」だったからなのだけれど、原点としてユミの存在があった事には変わりがないのだ。

「じゃさ、コーリは?」
「え」

 アクアに訊ねられて、コーリは思わず両隣に座る幼なじみを交互に見た。

「あ、俺聞いたことある」
「ちょ、レイン!」

 話題が自分から逸れた瞬間に体を起こしたレインを止める間もなく、彼は話し始めてしまった。

 それはまだ、レインとコーリがパートナーとなったばかりの頃の事。
 一仕事を終えた後は、コーリの部屋でお茶をするのがいつの間にか定番になっていた。パートナーとなった最初の日に、コーリがレインをお茶休憩に誘い、その時いれた紅茶がレインのお気に召したらしい。

「なぁ。コーリって、何で『光』を選んだんだ?」
「え……」
「ほら、能力的には色々あるだろ。コーリは何で『光』なのかなって思ってさ」

 同じ質問を、今は死神を統べる者マスターとなった幼なじみ・明人に訊かれた事がある。その時は、明人の名前から連想したのだと答えたけれど、本当はもう一つ、理由がある。

「……あの人達みたいに、なりたかったの」
「ん?」
「生きていた時、私にはお兄ちゃんとお姉ちゃんみたいな幼なじみがいたの。その二人はいつも明るくて、温かくて……私にとっての『光』だった」

 どんなに辛いことがあっても、明人と泪花の傍にいれば安らいだ。たくさん楽しいことがあって、それはまるで透子を、光へと導くかのようで。

「私は、それを二人に返せなかったから……死神になるなら、そんな存在になりたかった」

 安らぎを、温かさを、明るさを与えられる。そんな存在になりたくて、『光』を選んだのだ。
 勿論、明人の名前から連想したのも嘘ではないけれど。それは単にきっかけで、本当の理由はきっと憧れだったのだろうと、今なら思う。

 話を終えた瞬間に、左隣に座るショウカがガバッとコーリに抱きついてきた。

「もーっ、透子ったら可愛いっ」
「る、泪ちゃん……!?」
「ずいぶんと買い被られてたんだな、俺達」

 喉の奥で苦笑するヨウは、コーリの髪を撫でながら、ショウカと瞳を合わせた。

「買い被り……?」
「あの頃のお前にとっては、俺と泪花は大人に見えたんだろうけど」
「透子がいたからこそ、大人でいられたのよ?」
「……うん、今なら、解る……」

 死神としてそれなりに長い時間を過ごしてきたから、解る。親が子供を育てるように、子供という存在があるからこそ親として成長出来る。
 つまりは、どちらがより重要か、なのではなくて、どちらの存在が欠けても駄目だということだ。
 光があれば、影があるように……。

「でも、今でも目標は変わらないよ?」

 ショウカの腕の中で笑うコーリに、幼なじみ二人は口を開いた。

「ふふ、解ってないわね~」
「え?」
「お前は元から、俺達にとっては『光』だったよ」

 歳の離れた幼なじみ。泪花と明人にとっては、透子こそが光。だから。

「先代もうまく名付けたよな、『光梨』って」
「……語呂が良かったから、『梨』の字を付けたんじゃないの?」
「違うよ」

 梨、という字は「木」と「利」で出来ている。「木」は「成長」に通じ、「利」は「利益」に通じるといわれている。

「成長するにつれて、自他ともに利益を提供出来る。……物だけじゃなく、プラスになる感情とかもな。そういう意味や願いを込めて、お前の名前を『光梨』にしたんだってさ」
「そうだったんだ……」

 今初めて知る、自らが望んだ『光』以外の文字の意味。今はもう転生したであろう先代の死神を統べる者マスターの姿を思い浮かべて、コーリは淡い微笑みを浮かべた。
 この名に恥じぬ死神であれる事を、心の中で祈りながら。

雨の弓 目次
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