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1/08 ハハコグサ 「温かい気持ち」

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拍手SSの再掲です。

1/08 ハハコグサ 「温かい気持ち」
桜涙 仁科家


「ただいまー。……あら?」

 家には娘達がいるはずなのに、やっと聞けるようになった朱里の「お帰りなさい」の声がない。訝しんだ知佳が廊下を歩き、リビングを覗き込む。と……。
 テーブルに突っ伏すようにすやすやと眠る朱里の姿を見つけた。
 その寝顔はとても幸せそうで、それなのに、知佳の胸に不安が迫った。

「知佳? どうした……」

 一緒に買い物に行き、駐車場に車を止めて家に入ってきた友暁も、ソファの上の朱里を見て、不安そうな顔になる。
 朱里が目覚めなかった、あの日々を思い出してしまったから。

「……あかり……」

 生きていることは解っている。目覚めることも解ってる。触れれば起こしてしまうだろう事も。
 けれど不安は去らなくて、知佳は指先をそっと朱里に向けて伸ばす。友暁は、それを遮ることもなく。

「お母さん」

 知佳の行動を止めたのは、無声音に近い小さな囁き。

「藍里……」
「大丈夫だよ、お母さん。朱里ちゃんは、ちゃんと起きるから」

 片腕にかけていたブランケットを朱里の体にかけて、頬にかかる髪を藍里は指先でそっと避けた。

「ちょっとだけ、って自分で目覚ましかけてたから。だから、大丈夫だよ」

 起きる意志があるんだから。
 その言葉に安堵して、知佳は朱里を起こさぬように身を離した。

「……身勝手ね」
「そうだな……」

 ずっとずっと触れることさえ怖がっていたのは自分なのに、いざ朱里が目覚めないかもと考えるだけで不安になって。
 ただ一言の呟きから、藍里は知佳の心を正確に読み取った。

「朱里ちゃんはそんな事、気にしてないと思うよ?」
「……解ってるわ。私が気にしてると解れば、朱里が気にしてしまうもの」
「朱里に嘘は通用しないしな」

 だから、不安は顔に出さない。そのつもりでいても、穏やかに眠る娘を、幸せな気持ちで見続けることは難しい。
 もっと時間が経てば、たくさんの幸せを積み重ねて行けば、いつかはそんな不安もなくなるだろうか。
 そんな事を思いながら、夫婦揃って小さく微笑む。
 そして、買い物の荷物を抱えた知佳と、その手伝いに向かった藍里。手洗いに向かった友暁も、最後まで気づく事はなかった。
 朱里の閉じた瞳から、一筋の涙が流れていたことを。

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