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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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虹霞~僕らの命の音~ 占い師の予言

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 今日、8/28は、いつもお世話になっております「空想 i 」さまの開設記念日です♪ 4周年のお祝いとして、またもや勝手に「虹霞~僕らの命の音~」の二次創作を書かせて頂きました!

 それでは、追記からどうぞ。



 ドンッ、と壁に体を押さえ付けられた。ぶつけた背中も、肩も痛みを訴えたけれど、それに気を取られているわけには行かない。
 間近にある二つの瞳を、逸らさずに睨み返す。
「……何があった?」
「別に、何も」
「嘘だ! ……お前はっ……」
 その先は、声にならずに。華奢な肩口に、ことりと落ちた額は震えていて。
 それが怒りによるものなのか、悲しみによるものなのか、六耀には解らない。けれど。
「……何を言われても、僕は」
 君から離れるよ。と、決意を滲ませた言葉を紡ぐ。すると、両手を押さえていた力は緩み、肩にあった額は離れ、……時雨は六耀に背を向けた。
「────認めない」
 押し殺した、低い声音が部屋の静寂を壊したけれど、それ以上に温度の感じられない程の冷たい声で六耀は言い返す。
「別に、君の許可は要らないから」
「なら、この部屋に閉じ込める」
「出来るのならどうぞ」
「……っ!」
 鍵は中からでも開けられる。例え時雨が何らかの魔法を使ってこの部屋に六耀を閉じ込めたとしても、妖華や月花が六耀を解放してくれるだろう。
 どうあっても六耀は容易くこの部屋から出て行ける。時雨もそれは解っているはずだ。
 何も言葉を返さずに、荒々しく踵を返して部屋を出て行った時雨の後ろ姿を、六耀はただジッと見つめて、扉が閉まるのを待っていた。
(ごめん……)
 相対していた時は必死で平静を装い、告げる言葉も出来るだけ冷たくしていたけれど。
 両手を押さえつけた力の強さに、六耀の瞳から真実を読み取ろうと真剣だった彼の瞳に、身動きなど出来なかった。
「はは……っ。今更、震えてる……」
 自分でも知らぬうちに、体が小刻みに震えていた。足の力が徐々に抜けていって、かくん、と膝が折れ、ぺたりと床に座り込む。
「ごめん……時雨」
 でももう、決めたことだから。みんなを、彼を死なせるわけにはいかないから。
 呟いた声は、言葉にならずに口の中に消えていった。

 少し、時間を遡る。いつものように、妖華に苺ジャムを頼まれて街に出掛けた六耀は、どこかへ本の配達に行く途中らしい、両手いっぱいに荷物を抱えた風美に会った。
「重そうだね、手伝おうか?」
「ありがとうございます。でも、すぐそこなので大丈夫です! 今日は、時雨さんは一緒じゃないんですか?」
 一度止めた足を動かして歩き出す。どうやら風美も同じ方向に向かうらしい。
「そんな、いつもいつも一緒にいるわけじゃないよ」
 苦笑しながら告げると、風美は「時雨さんは一緒が良いと……」とか何とか、もごもごと呟く。そんな姿に苦笑していたその時、低い、しゃがれた声が二人の足を止めさせた。
「……もし、そこのお二方」
「……僕たちのこと?」
「左様。我は占い師……人を導き、救う者」
 紺色のフードを深く被っているおかげで、顔は全く見えない。体もローブでしっかり隠れてしまっていて、体型から性別を類推することは無理だった。
 先程聞こえた声だけで判断するならば、老人の域に近いとは思うけれど。
「……ふむ。そなたは近いうち、大切な物を失うであろう」
 本を抱えたままの風美をそっと指差し、告げられた言葉に、風美はびくりと体を震わせる。それを横目で見た六耀は、風美を庇うように彼女の前に立った。
「一体何を言ってるの?」
 突然呼び止められて、突然、訳の解らないことを言われて。六耀は厳しい瞳で老人を見据える。
「……そなたは……。ほう、そなたは不幸を呼ぶ者。そなたの傍におる者は、皆すべて死に近くなる運命じゃよ」
「……っ!!」
 にぃ、と微かに覗いた、笑う口元。それがとても不気味に見えて、そして、告げられた言葉が六耀の思考を停止させた。
 が、次の瞬間、風美の威勢のいい声が、途端に沈んだ空気を切り裂いた。
「そんな事ありませんっ!!」
「……っえ、風美?」
「六耀さんの傍にいて、不幸だなんてそんな事、絶対に有り得ませんっ! 行きましょう、六耀さん! こんな戯れ言、聞く価値もないです!」
「う、うん……」
 本で両手が塞がっている為か、積んだ本で背中をぐいぐいと押されて、押されるがままに方向転換をする。
「もーっ、何なんですかあの人っ! いきなり呼び止めて、変なこと言って!」
 風美は、配達先の家に着くまでずっとぶちぶちと憤っていた。そして、六耀と別れる際にも、力強く念を押してきた。
「あんなの気にしちゃ駄目ですからね、六耀さん! 六耀さんは、みんなに幸せを運んでくれるんです! 不幸なんか絶対に呼びませんから!」
「……うん」
 そうだ、あんなのはただの戯れ言。時雨や妖華に言われたわけじゃない、そんなのは解っている。だから、気にしなければ良いだけなのに────。
 自室に一人、寝台に横になっていると、脳裏にしゃがれた声が蘇る。
『そなたの傍におる者は、皆すべて死に近くなる運命じゃよ』
 信じない。信じていない。……だけど、もし。
(本当、だとしたら────?)
 一度、ぎゅっ、と瞼をきつく閉じて。再び開いた六耀の瞳には、小さな決意が宿っていた。
 起き上がり、おもむろに荷造りを始める。
(離れなくちゃ……)
 とりあえず、城を離れよう。あの予言が嘘でも、……本当だとしても。六耀さえいなければ、彼らに害が及ぶことはない。
 夜の内に城下街を抜けて、時雨や妖華に追いつかれない所まで────。
「おーい、六耀ー」
 コン、とドアをノックする音と共に聞こえた、間延びした声。
「な、何?」
「いや、桜と春雷が……って。何してんだ?」
 しまった、と六耀は臍を噬んだ。どうして荷物を隠してから返事をしなかったのか。
「? どっか行くのか?」
「……あ、うん、えっと。妖華に頼まれ事して」
「ふーん? じゃ、俺も行こうかな」
「え、やだよ。君と旅なんかしたら災難ばかりじゃないか」
 どうにかいつも通りに言葉を返せた。それに安堵したのも束の間。
「お前なぁ……。まぁいいや、すぐ帰ってくるんだろ?」
「……っ」
 何故、その時。「うん」と即答出来なかったのだろう。すぐに答えを返せなかった事実は、彼の言葉に「否」を告げているのと同じだというのに。
「……六耀? 帰って来ない気か!?」
「……そ、そんなわけ」
「六耀!」
 力強い声に名を呼ばれ、両手を掴まれて。そして、冒頭に戻るのだ。
 震えが止まり、荷作りを再開し、六耀は静かに夜を待った。
 夕闇が濃くなり、月が空高く昇る頃、六耀はそっと城を抜け出した。城から離れ、一度だけ振り返り……未練を断ち切るかのように頭を振って、また歩き出す。
(静か、だな……)
 夜の闇。一番、己にふさわしい色。
 そう、闇は負。光には決して転じない。幸福が光なら、闇を背負う自分は────。
「六耀」
「……何で、ここにいるのさ……」
「納得出来ないからな」
 風美の店の軒先で、腕を組んで佇んでいるのは間違いなく時雨だった。
「何で……っ」
 どうして、ここにいるのだろう。城を振り返ったあの時、未練はすべて断ち切るつもりだったのに、彼が現れたことで心は見事に引きずり戻される。
「……納得出来る理由があるなら、言えよ」
「────どんな言葉を尽くしても、納得なんてしないくせに」
「正当な理由なら納得するさ」
 畳みかけてくるような時雨の言葉に、六耀は何も言えなくなる。ただ、時雨の鋭い瞳からは目を反らさずに、受け止めるだけ。
 ふと、時雨の視線が六耀から空に移った。
「……雨?」
「え……」
 時雨が呟いた瞬間、六耀の頬にもぽつりと雫が落ちてきた。冷たい、と感じた直後、バラバラ、とも、バチバチ、ともつかぬ激しい雨音が、六耀の鼓膜を打ち、瞬く間に服を濡らしていく。
「ちょ、何突っ立ってんだ六耀!」
「え……わわっ!」
 腕を引かれ、不本意ながら、書店の前の軒先を借りて雨宿りをする羽目になってしまった。
「とりあえず拭け、ほらっ」
 懐から出された布は、ほんの少し時雨の温もりを帯びていて、濡れた顔に触れさせると彼の纏う香りが鼻に届いた。
「……なぁ、何があったんだ?」
「それ、は────……」
 答えても、きっと笑い飛ばされてしまう。でも、あの予言が本当だったなら、傍に居続けることは……。
「え、六耀さん、時雨さん!?」
 答えを躊躇っていると、何の前触れもなく店の扉が開いて、風美が顔を覗かせた。
「お。悪いな風美、ちょっと雨宿りさせてもらってるぞ」
「そんなのはいいんですけど、って六耀さんずぶ濡れじゃないですかっ! 中に入って下さい、着替えと何か温かい物をお持ちしますから!」
 有無を言わさずに六耀の腕は風美に引かれて、中へと通される。さすがに濡れ鼠の姿では並べてある本を濡らしてしまうと思ったのか、風美は一度店の奥に引っ込んで、戻ってきたと思ったら、手にしていた大きな布を頭から六耀に被せた。
「奥に椅子がありますから、そこに座ってて下さい。すぐに着替えを……」
「あ、平気だよ」
「駄目ですっ! 六耀さんが風邪なんか引いたら、お城中大騒ぎになるんですからね!」
 まるでそれは確定事項であるかのように、きっぱりと告げる風美。その姿に、不意に時雨が喉の奥で笑った。
「くっ、くくっ、あははははっ!」
「と、ときさめ……?」
「時雨さん?」
「いやー、風美の方が良く解ってるなと思ってさ。確かに、六耀が風邪引いたりなんかしたら、それこそ大騒ぎだ」
「……そんなわけ、ないじゃないか」
「解ってないのは六耀だけだよ。お前が眠り薬で目ぇ覚まさなかった時だって、どんだけ大騒ぎしたか解ってないだろ?」
 玲音から送られてきた手紙に、香りづけされていた香の効果で、六耀は眠り姫状態だったことがある。とはいっても、本人は眠っていた自覚などなかったのだけれど。
「ま、とりあえず。風美、服は魔法で乾かせるから大丈夫だよ」
「なら私、温かい物を入れてきますね」
「頼む。ほら六耀、ちょっと立て。……熱を纏いし風、乾きをもたらせ」
 時雨が呟いた瞬間に、彼の手から放たれた熱風。それは六耀の全身を包み、けれど六耀自身には熱さを全く感じさせずに、彼女の服も、髪も、あっという間に乾かしてしまった。
「……あ、ありが、とう」
「ん。どういたしまして」
 くしゃり、と髪を撫でられて、六耀は慌てて俯いた。
(だって、時雨の顔が……)
 優しいのだ。先刻まではとても鋭い瞳で六耀を見ていたのに。それが、何故か今はとても和らいでいて。
 風美が紅茶を入れて戻ってくるまで、二人は何も言葉を交わさなかった。
「……で、どうなさったんです、こんな夜中に」
「理由は六耀に聞いてくれ」
「……もしかして、昼間の予言が原因ですか?」
「予言?」
 言葉を紡ぐのを躊躇う六耀よりも、風美に聞いた方が早いと判断したのか、時雨の視線が風美へと移る。そして風美は、昼間の予言のことをすべて話してしまった。
「……だからか……」
「でもですね、これには続きがあるんです」
「続き……?」
 風美曰く、どうにもあの予言がむかついて、あの老人のところにもう一度向かったらしい。が、ちょうどその老人から予言を受けた少女と出会い、その少女がとても明るい顔をしていたので、思い切って聞いてみたのだそうだ。すると……。
「どうやら、あの人の言葉は正反対なのだそうです」
「……正」
「反対……?」
「はい。例えば、『好きな人に告白をしたいんだけどうまくいくか』と問いかけた場合。『うまくいく』ではなく『失敗する』と答えられるんだそうです。他にも、『北へ行け』が『南へ行け』だったり、『仲直りは不可能』って言われたら、あっさり仲直り出来ちゃったり」
「って事は、僕が言われた言葉は……」
「むしろ六耀さんは幸せを呼び込む人。傍にいなければ、皆さん六耀さんを心配して、寿命が縮むって事じゃないですか?」
 ものすごく、とんでもない解釈をされて、六耀は思わずがっくりと肩を落とした。
「……何、その傍迷惑な予言……」
「何でも昔、道化師と呼ばれた魔術師に戦いを挑んで、負けた代償に呪いをかけられたとか……」
「道化師……って」
 もしかしなくても月花の事……? と、隣に座る時雨と視線を合わせる。と、時雨が口をつけていたカップを荒々しくソーサーに戻した。
「……諸悪の根源があいつかよ……っ。それ飲んだら、とっとと帰るぞ六耀!」
「え!? 何だよ急に」
「決まってんだろーが、月花を叩き起こして制裁してやるんだよ! そんな傍迷惑な呪いで、六耀を遠ざけられてたまるかっ!」
「……返り討ちがオチだと思うけど……」
 かくして、時雨に引きずられるように、六耀は城に戻り。
 そのまま叩き起こされた月花と時雨の対決は、健やかな眠りを邪魔された妖華の怒りの鉄槌によって引き分けとなったという。



※後書き 兼 言い訳
 某インスタント食品のCMを見て、そこから浮かんだSSです。いきなり少女漫画が出てきて、何のCM? と思いましたよ(笑)
 そしてその、「壁ドン」? なるものを見て真っ先に思い浮かんだのが、六耀さんと時雨さんだったのでした。何故か自キャラじゃ浮かばなかったんですよねー。
 今回は何だかちょっと、描写が足りないというか、だらだら長いだけというか……私的には何か物足りない気持ちでいっぱいなんですが、読み返してもこれ以上手を加えられなかったので、ごめんなさい、そのまま上げちゃいました。
 こんなんで宜しければ、お受け取り下さいませ(>_<)

 というわけで、朱音さん、4周年おめでとうございます♪
 これからもどうぞよろしくお願い致しますm(_ _)m
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