Mirage

オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

拍手SS 執事様のお気に入り 「立場と自己」

拍手SS Index
月別一覧(12月)へ 作品別一覧(12月)

拍手SSの再掲です。

2012年 11月 携帯用SS
執事様のお気に入り 征貴×真琴



「……潮風はお体を冷やしますよ、真琴様」
「ええ、でも……少しだけ」

 その答えを予測していたのか、真琴の肩にふわりとかけられたのは、船に乗る時に受付に預けた薄手のショールだった。

「……ありがとう」
「何か、ございましたか?」

 会場から離れたのには何か理由があるのかを聞かれて、真琴は小さく首を横に振る。

「いいえ、何も。……ただ、少しだけ、外に出たくなって」

 今日は、楠と懇意にしている財閥の、一人娘の誕生日パーティーに招かれていた。ここに真琴と征貴しかいないのは、両親は重なってしまった別のパーティーに参加しているからだ。

「……少し、息苦しくなってしまったの」

 こんなパーティーに参加すると、最近切に感じることがある。楠の名の大きさを。そしてその名に守られているだけの、己の小ささを。
 挨拶をするのは、真琴が昔から知っている人々ばかりだというのに。言葉の端々に感じられる、『楠』の後継者としての真琴を値踏みされているような、そんな感覚。
 どうしてだろう? 今まではそんなこと、感じたこともなかったのに。

「会場も広いとはいえ、船上ですから……少し窮屈に感じられたのでしょう」

 船の中。水の上。逃げ場のない閉鎖された空間。それに怯えたから会場を出た?

(────違う)

 船の中だから、水の上だから、ではない。真琴が、外の広さを知ってしまったから感じるのだ。楠家の為だと言われ、良と伯王を引き離そうとしたあの時の計画を、自らの意思で拒んだその日から、真琴は守られていた世界から飛び出した。
 そんな真琴を、良も、伯王も助けてくれた。……征貴も、自分を気にかけてくれる。
 己の双肩にかけられた「楠家の娘」という立場を、……忘れかけていたのかも知れない。「楠真琴」という、一人の人間たる自分を優先するが故に。

「……戻らないと」

 パーティー会場に、ではない。忘れかけた立場を取り戻さなければ。楠の名に恥じぬ人間であらねばならないと自分を戒める。ただ出来れば、一人の人間としての「楠真琴」を手にしたままで。

「まだ時間はございます。無理にお戻りになることはありません」
「……そうね……」

 征貴が考えていることは、きっとパーティー会場のことで、真琴が考えていることとは違うだろうけれど。
 その言葉は、そっと真琴の中の気持ちを包み込んだ。


執事様のお気に入り 目次

拍手SS Index
月別一覧(12月)へ 作品別一覧(12月)
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

琳架

Author:琳架

web拍手 by FC2

 ↑ 9/1変更 (全6種)
 桜涙・雨弓・明陽
 図書戦・LOVE SO LIFE・ヨナ
  ※携帯版が確認出来ないので、こちらに統合しました。

Twitter・SS専用アカウント→ @sakuraironoyoru

FC2カウンター

現在の閲覧者数:

カレンダー

10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

最新記事

検索フォーム

月別アーカイブ

西暦をクリックして下さい。

カウンター

FC2ブログランキング

ランキングに参加しています。

FC2Blog Ranking

右サイドメニュー

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。