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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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頂き物 明るき陽の光を 「美しさは桜に預けて」

突然、「空想 i 」の朱音さまが、桜にまつわるお話を書いて下さいました!

『明るき陽の光を』より幼馴染み三人組(生前)です。
では、追記からどうぞ♪



 柔らかい紅色が咲き誇って、見る者の心を穏やかにする春のひと時。
 俺は今、とうの昔に卒業した中学校の校庭にいる。少しばかり遠目に眺めていた桜の優しさから視線を下に向けると、そこできゃっきゃと声をあげて戯れているのは二人の幼馴染。
「泪花、透子。何をやってるんだ?」
「あっ、明人くん! 今ね、泪ちゃんと桜吹雪を作ってたの」
 そんな風に言って透子は地面にしゃがみ込み、落ちた花弁を手の平に掬うんだ。そして、両手を勢い良く上げると三人の周りにだけ桜の舞が起こる。
「ね、ね、綺麗でしょ?」
「綺麗だけど……、こんなことをしてたら新しい制服が砂で汚れるぞ? これから三年間、この制服を着なきゃいけないんだろうが」
「大丈夫よー。地面に触れていない部分の花弁の山を掬っているんだから。もう、明人くんってば透子のお父さんみたいなことを言うんだから」
「誰がお父さんなんだ! せめて兄にしておけっての」
 人の肩をパシンッと叩きながら、明るい表情で笑う泪花をわざと怒っている風な表情で睨んでやろう。
 確かに年齢の差で見れば俺は透子の兄にしか見えないだろうけれど、心の中ではもうすでに――
 前に一度、化粧をした透子を見た時に思った。いつまでも可愛らしく、幼い印象しかなかった彼女も着実に大人になっていっていて、……綺麗だったんだ。

「制服は汚れても洗えるわ。だけど、桜が咲いている中での中学校入学式は今日しかないんだから、目一杯堪能したいじゃない」
「お前の方こそ、一人娘を育てる母親みたいな台詞じゃねーか」
「この子は私の妹であり、娘みたいなものよ! 明人くんには渡さないもん」
「何だと?」
「二人とも喧嘩しないでよぉ」
 泪花と俺が冗談で喧嘩腰になると、それを止めに入ってくる透子。だけど顔は笑っていて。いつまでこの関係が続けられるだろうか。
 ふと、そんなことを思った時、少し強めに吹いた風によって本物の桜吹雪が一瞬を彩った。
「わっ……、綺麗……!」
 だけどどうしてか視線は花弁の群れを通り過ぎて、真新しい制服に身を包み、髪を押さえる透子を見つめている。
 なぁ、早過ぎるだろ? 綺麗になってしまうのは。お前は『可愛い』が似合う表情をしていて。
 だから今はまだ『綺麗』の雰囲気は、桜に任せておいてくれな。



 朱音さんからサプライズで頂いたお話です!
 透子が中学入学時の話だから……泪花は18歳、明人は20歳ですね。
 もう、絶対明人の心情はまんまですっ! 透子が化粧をしたお話は、「12/01 シャコバサボテン ひとときの美」で書いたのですが、あの時から明人は透子を「妹」ではなく「女の子」として見るようになりました。泪花はそれを知っていて、(きっとわざと)明人を「お父さん」なんて言うんですから、そりゃ怒りたくもなりますって。泪花が母親なのは……うん、否定しませんけど。きっと泪花は、自分の娘の透菜に、透子を重ねて見てた部分もあるんだろうな、なんて。
 自分でそうしておきながら何ですが、透子は「綺麗」になる時期を迎えずに命を落としてしまったので、最後の一文がとても切なかったです。
 なーんて考えていたら、透子が高校入学時のVer.を思いついちゃったので以下小話。

「……透子?」
 仕事が終わって、のんびりと家路を辿ると、明人も泪花も、そして透子が卒業した中学校が見えて来て、立派に咲いている淡い色の桜が目に入り。
 その下にそっと佇む、幼馴染みの少女を見つけた。色素の薄いふわふわの髪が風に攫われていく。
「どうしたんだ? 透子」
「あ……。明人くん」
 3年前、この桜の木の下ではしゃいでいたとは思えぬ程、穏やかな表情と声で振り返る透子。
(……やべ)
 高校の制服を着た透子は、やけに大人びて見えて……触れたくなった。それを隠すように、明るく笑ってみせる。
「今頃、卒業した感傷か?」
「ううん。卒業アルバムを取りに来たの」
 ほら、と小脇に抱えていた一冊の本を明人に見せる。卒業式の写真をアルバムに入れるとなると、どうしても発行は卒業式後になってしまう。明人もそうだったから、別段驚きはしない。
 見ていい? と明人が訊ねると、透子はこともなげに頷く。パラパラとめくっていくと、緊張した面持ちだったり、友達と楽しそうに笑っている透子の姿をすぐに見つけられた。
「……あ、そうだ」
「ん?」
「明人くんにお礼しなきゃって思ってたの。勉強、ずっと見ててくれたから……」
「そんな大した事してないぞ?」
「でも……」
 何か、私に出来ることがあれば、と透子が呟く。
「じゃ、ちょっと桜の方向いてて」
「え? うん……」
 透子にして欲しいこと。……願いはたくさんあれど、未成年の透子に手を出すわけにはいかない。だから、ちょっとだけ────。
 ざあっ、と風が吹く。ふわりと波打つ髪の一房を、風に紛れるように捕まえて。
 透子に気付かれぬように、そっと唇を落とした。
「明人くん……?」
「ん、ちゃんと貰った」
「えー? 何かした? あっ、もしかして卒業アルバムになんか変なこと書いてないよね!?」
「バレたか」
「ちょ、明人くん!?」
 見せてっ! と卒業アルバムを奪おうとする透子と、絶対に彼女が飛び上がっても届かない場所へと腕を伸ばす明人。
 そんな二人を大学帰りの泪花が見つけ、呆れ返ったのは言うまでもない。


 今月の携帯拍手SSも、雨弓のお花見ですけど、あっちの透子達はもっと幼い頃を想定していたので、少し大きい三人組の様子が目に浮かんで、嬉しかったです。
 朱音さん、綺麗なお話をどうもありがとうございました!
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