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オリジナル・二次創作小説や、好きな本の感想を綴るブログです。

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震災SS 温度差

TOPへ 東日本大震災と福島第一原発事故 目次

【注意!!】
 今日で、震災から3年が経ちました。
 ここ数日、テレビを見る度に流れていた震災特集の宣伝が見られなくて、実際その特集も見られなくて、どうして見られないのかと思ったことを書いてみました。日記にすると、上手く書けないような気がしたので……。
 ご不快になられる方もいらっしゃると思います。お嫌な方はこのままトップページにお戻りください。
 苦情は受け付けませんのであしからず。









「今日もまた、震災特集か……」

 テレビのチャンネルは、ニュースをかければ必ずといっていいほど震災当時の映像が流れる。宮城や岩手の復興の足跡は辿れても、福島だけはそれがない。流れるのは、原発避難者の苦労ばかりだ。

「って言うけど、全然見てないじゃない?」
「見なくてもCMの内容とタイトルで大体解るし。……それに、────怖くなった」

 何故だか震災の映像が、震災を題材にしたドラマが、見られなくなった。去年までは平気だったのに。「ああ、そうだった」と記憶を反芻して少しずつ思い出に変える事が出来ていたのに、今年は。

「あの時を思い出すのが、あの思いを省みることが、……怖くなったんだ」
「……それは、消化して来てるって事じゃなくて?」
「……多分、違う」

 消化ではない。涙でもない、もっと別のものが胸に込み上げてくるから、見られない。

「でも、こういうのはやっぱり、必要なことだと思うよ? 被災地の人には辛いかもしれないけど、それ以外の人には。……このままじゃ、無かったことになりそうだもの」

 地震も、津波も、原発事故も。何もかもが、過去という残酷な時の流れの中に消えて行く。

「……もう、無かったことでもいいのかもな」
「え……?」

 ぽつり、呟く彼の言葉が信じられなくて、彼女は僅かに目を瞠った。

「政府の方針では、原発再稼動に動いてる。それに……福島出身者だって、あの震災当時に福島にいなかったり、今でも他県に住んでる人間には、もう原発も他人事なんだ」

 つい先日、それを思い知らされた。福島という同じ故郷を持つ人間ならば、同じ思いを共有して当たり前だと思い込んでいた。

「……温度差、すげぇんだよ」
「温度差……?」
「いつまで言ってんだ、って言われたんだ」
「いつまで、って……だってそれは、ちっとも収束しない原発事故が有る限り、────何?」

 彼女の言葉に、彼は目を瞠り……そして、そっと目を伏せた。

「……ごめん」
「どうして謝るの……?」
「……本当なら、お前も他人事で良かったはずなのに、……俺が、福島の事話すから」

 関東圏で生まれ育った彼女にとってこそ他人事だったはずなのに、彼と付き合う事で、要らぬものまで背負わせてしまったような気がして謝れば、ぺち、と両頬を叩かれた。

「一度でも私、それが嫌だって言った?」
「……言ってない……」
「でしょ?」

 にこり、と笑う彼女につられて僅かに口角を上げるけれど……先日、とある人に言われた言葉が、頭から離れない。

「でも、俺と同じように福島から出てきた先輩には、もう過去だったんだ」

 そう、既に過去だった。先輩だって、家族を福島に残している身だというのに。

『別にいーじゃん、俺達が今、福島にいるわけじゃないんだし~。つーかぶっちゃけウザいんだよね、帰る度に原発がどーの、放射能がどーのって言われんの。だから俺、帰りたくないからこっちで職見つけたし』

 豪快に笑うその姿が、彼には信じられなかった。

「俺は。俺は……そんな風には割り切れない。俺にとっては家族も大事だし、無かったことになんて絶対ならない。だけど……あ」

 そこまで言葉にして、ようやく解った。震災特集や、震災を題材にしたドラマが見られなくなった理由。

(……何も、変わってないからだ……)

 宮城や岩手のように、目に見えて変わったものがないから。
 原発の汚染水は毎日増えていくばかり、人為的なミスで冷却は止まり、再びの原発事故と紙一重の中で家族が生活している、その事実が重くて。
 震災当時と違うのは、ライフラインが復旧していて、普通の生活が送れている事。……それでも、思い出したようにモニタリングポストの数値を見て、放射能の影響が身近にある事に気付く。彼が帰省した時、家族の間では、放射線量の会話は既に当たり前になっていた。
 福島第一原発の現場がどれだけ大変なのか、自分達には解らない。だからこうやって、「何も変わらない」と言えているのは解っている。解っていても。

「俺が、囚われすぎ、なんだろうな……。自分勝手で、……弱くて、嫌になるよ」

 苦笑して、彼はカーペットに仰向けになった。沢山の感情が渦巻く瞳を見られたくなくて、右腕で瞼を覆い隠す。

「そうかもしれない。でも、私は違うと思う」
「違う……?」
「だって、実際に体験しないと解らないよ。どれだけのものを見て、聞いて、どんな思いをしたかなんて、キミ以外解らない。だから、心が強いとか弱いとか、……そういう問題でもないんじゃないのかな」

 彼が言ったように、既に過去のものとして割り切る人も多いだろう。割り切った人は、「いい加減未来へ進め」と言い。未だ割り切れぬ人は「まだ終わっていない!」と言い。互いの意見を互いに押し付け合ってしまうから平行線を辿り、傷つけ合うしか出来なくなるのではと思う。

「どれだけ強くても、絶望に負けてしまった人もいる。どれだけ弱くても、一生懸命前を向いて生きてる人もいる。……って、私に言ったのは、キミの方だよ?」
「……そうだった」

 考え方は人それぞれで、だから正解なんて何処にもない。出来る事はただ、自分自身を、自分が見ている事実と導き出された答えを、信じるだけ。
 無理に、他人の考えに合わせなくてもいい。その考えを受け入れる努力は必要だとは思うけれど。言葉にすれば単純な事でも、難しいな……と、そんな風に考えた時、彼が投げ出した左手に、彼女がそっと手のひらを重ねた。

「考えすぎて……あんまり自分を追い詰めないでね……?」
「……努力は、する」

 約束をするかのように細い指先を絡めて、仄かな温もりを握り込み、彼は笑った。



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